12話 報告対策実行しましょう.4
「時間との勝負だ。黒姫の存在に気付いて、軍隊がこっちに来るまでに、サクッと砦を作ってから、防衛するぞっ」
「かしこまっ」
「我、またこの扱いかのぅ」
円堂とペペルーノは、迅号の中で、ドールに見張らせてるから、安心して作業が出来る。
「文句を言うなっての。地面を整地して、これを並べてくれ」
空間収納から、石材の素となる岩を取り出し、黒姫に頼んで、コの字に並べて貰う。
加工はしない。そんな時間は無いからな。
「結構重たいのぅ」
岩の高さは五メートル。横幅は三メートルの巨岩だから、重たいに決まってるだろ。
「その横に、松明をセットしてっと、灯りを確保だな。ミルンは、隙間を埋める係を頼む」
「埋め埋めしますっ」
「黒姫。並べた岩の上部を、平らに出来るか?」
「簡単な事じゃて。ほれっ」
でぶドラ黒姫の、爪の一閃で、コの字に並べた岩の上部が、綺麗に平らになった。
「凄いな……それじゃあ次は、その平らになった岩の上の一部を、丸太が嵌る大きさに、くり抜いてくれ」
「ふむ、こんな感じかのぅ」
「そうそう。反対側の同じ位置にも頼む」
「注文が多いわ。コレで良いかや?」
でぶドラの黒姫は、やっぱり役に立つ。
「バッチリだ。あとはコレを、そのまま嵌めてくれ。二カ所も嵌めれば、問題無い」
コの字の岩の上に、丸太を二本横に嵌め込んで、その上に板を打ち付け、簡易小屋を設置すれば、五メートル程の高さの、ミニ砦完成っ。
「流や。なぜこの一カ所だけ、岩を置かぬのぢゃ? 物置きにでも、する気かのぅ」
「んな訳無いっての。梯子用の空間だよ」
「後ろから丸見えぢゃぞ?」
「今は良いんだ。このミニ砦は、あくまでも目印。ここを中心にして、砦を拡大する」
目標は、五十メートル四方の砦。なんだけど、それをするには、マンパワーが足りない。
「そこは追々、アッジスノード王国の人達にでも、任せるとしますか」
「お父さんっ! 分隊規模の敵接近っ!」
「案外遅かったな。全員簡易小屋まで上がれ。ドールっ! 二人を連れてお前も来いっ!」
『了。そちらへ向かいます』
円堂とペペルーノを迅号から下ろして、空間収納に仕舞い、簡易小屋へと上がって、接近する部隊を確認する。
「あれは、守備隊っぽいな」
「何で人数少ないの?」
「黒姫の姿を、確認に来たんじゃないか?」
「遅い奴等なのぢゃ。ファンガーデンの部隊ならば、とっくにここまで来ておろうに」
遅いのは当たり前だろう。首都の目と鼻の先に、巨大生物が現れ、いつの間にか砦が建てられて、巨大生物が消えたのだから。
そんなの、信じられないっての。
「むーっ! むむめもっ!」
「むもも……」
「二人共煩い。ひと段落したら、口枷外してやるから、大人しくしてろ」
「それで、これからどうする気かや?」
「そりゃ勿論、こうすんのさ」
簡易小屋の上で、ミルン印のファンガーデンの旗を掲げ、迫る兵士達に向かって、ここは俺達の領地であると、知らしめる。
「おっ、アイツら走って来るぞ」
「そりゃそうじゃろ。自らの王都の目の前で、見知らぬ旗が見えたのじゃしの」
「来たら玉潰す?」
「一人だけは、無事に帰って貰う。それ以外は捕虜にして、交渉の材料だな」
目の前の川に架けられた、小さな橋を渡った時点で、国境侵犯と断定する。
今この場所は、俺の支配域だからね。っと、越境を確認、行動開始だな。
「ミルン、黒姫。羽飾り付けた奴は、捕まえて捕虜にするから、宜しくっ!」
「かしこまっ。暗がりから襲うのっ」
「簡単な事じゃ」
「貴様らあっ! この様な所で何をしているっ! 何処の領地の者かあっ!」
羽飾り付きのおっさんが、良い感じに捕まりに来たぞ? 不用心な事ですなぁ。
「えっと、アッジスノード王国の同盟者、魔神流ですが? なに勝手に、国境侵犯してんの」
「はあっ!? アッジスノーどぶっ!?」
簡易小屋から下りた黒姫に、即座に腹パンされて、最後まで言えないとか。
「隊長っ!?」
「貴様何者だっ! 名を名乗れっ!」
「嫌ああああああっ!」
「あひゅっ!?」
暗闇に紛れて、ミルンが回り込み、後方から接近してる事に気付かないなんて、夜戦の訓練してないのか?
「玉潰すっ! 玉……玉が無いのっ!」
ミルンさんや、それは女兵士だからだろ。
「あっと言う間に、制圧完了。乙女にされたのは四人で、無事なのが一人か」
それなら、女兵士さんに、伝達係になって貰おう。手紙をしたためて、しっかり持たせ、そのまま首都へとさようなら。
「んじゃ、こいつら縛って、岩の隙間に放置しておくか。次は、大量に来るぞぉ」
「どれくらい?」
「んーっと、王都全軍じゃないか?」
「全軍っ! 玉潰し放題?」
「間違っちゃあいないけど……そうなるかどうかは、ノブストンの出方を、見てからかな」
俺、ミルン、黒姫、ドールと、こっちの戦力は、僅か四名しか居ない。と言っても、最大戦力の黒姫が居る時点で、勝ち確ですが。
「万の軍勢なんのそのってな。犬耳ミルンに、魔龍と古代の兵器とか、過剰戦力気味か?」
「此奴、楽しんでおるのぅ」
「肯定。顔が変態です」
「いつものお父さんっ」
そうして待つ事二時間弱。ノブストン王都側から、鐘の音が鳴り響き、巨大な門が開かれて直ぐ、大量の兵達が、姿を現した。




