12話 報告対策実行しましょう.3
四月九日、午後六時。
アッジスノードの北側の門を出て、直ぐの場所で、恒例の点呼を行う。
「揃ったな。良し、番号っ!」
「いちっ」
「になのぢゃっ」
「さん」
「……」
「……」
「おいおい、最後の二人が番号を言ってないぞっ! 連帯責任っ! 腕立て伏せの用意っ!」
「何でよっ!?」
「何のおふざけですの?」
円堂とペペルーノは、どうやら従う気が無いようだ。ここは、仕方が無い。
「ミルン小隊長っ!」
「なあにっ!」
「あの二人をっ、迅号の座席に括り付けっ、動けない様にしなさいっ!」
「かしこまっ! 黒姫隊員は手伝うのっ!」
「わっ、分かったのぢゃっ」
空間収納から、迅号を取り出すと、円堂とペペルーノは目を見開き、口をあんぐりと開けて、何とも隙だらけの状態です。
「ちょっ、何よコレっ!?」
「あの時の魔物っ、どこに隠してたのかしら」
そんな状態だから、ミルンと黒姫に簀巻きにされて、迅号内部へご案内。
勿論、口枷もバッチリだ。
あーだこーだと、煩いからな。
俺は勿論、操縦席に座り、前方確認良しっ。
「どっこいせっと。ドール、燃料はどうだ?」
「了。五十三パーセント。問題無しです」
「うしっ。ミルン、黒姫。席に着いたか?」
『大丈夫なのぢゃーっ』
『むーっ! もががむーっ!』
『……ももむ』
後部座席は四つだから、丁度埋まるな。
「お父さんっ、ミルンが運転するっ」
操縦席に、ミルンが来ちゃったよ。
「今回は、後ろで座ってなさい」
「むぅぅぅ、操縦したいっ!」
ミルンに操縦させると、間違い無く音速かましちゃうから、今回は遠慮したい。
「帰りに交代するから、我慢しなさいな。じゃないと、もう操縦させないぞ?」
「帰りはミルン? 嘘じゃ無い?」
「ああ、嘘じゃ無い。ちゃんとミルンに任せるから、行きは我慢しような?」
「約束ねっ。むふふっ、帰りはミルンっ」
んっ? これって、ミルンにしてやられた?
ミルンは落ち込むどころか、尻尾をフリフリさせて、後部座席へと歩いて行ったが、俺は何か、間違ってしまったのだろうか。
「なあ、ドール。帰りは、ミルンの操縦の補助を、ガチで頼んだぞ」
「……了」
「何その間っ。マジで頼んだからな」
『お父さーんっ、座ったのーっ』
「はいよーっ。帰りが怖いなぁ……」
右の推進レバーをゆっくりと押し、左手でしっかりと、操縦桿を握り締める。
安全装置が稼働している迅号は、ものの数秒で、時速六百キロを叩き出し、ノブストンに向けて、進み始めた。
「ドール。地図の情報を参考に、予定到着時刻って、分かったりするか?」
「肯定。しばしお待ちを……推定距離、五百キロ前後。五十分から一時間程で、到着するものと、思われます」
「……因みに、鎧を着た兵士が行軍するのなら、どれ程時間かかるもんなんだ?」
「了。装備の重量、魔物との交戦を考慮しなければ、一日五十キロ前後の、行軍となります」
「考慮した場合は?」
「五分の一かと」
となるとだ。三日前に追い払ったノブストンの奴等は、マッスルホースのゴーレムを、全壊させたから、三十から百五十キロ圏内を、歩いている可能性がある訳だ。
「知覚は半径十キロだから、反応を確認して、三十秒以内に避けないと、ミンチを量産かぁ」
無傷で帰した敵兵を、後追いでミンチに変えるとか、グロは勘弁したいんです。
ミルンに運転を任せなくて、正解だわ。
「流。前方に生態反応有り」
「やっぱ迅号速いわっ!?」
知覚で多数の反応を確認。直ぐ様進路を変えて、その反応を迂回する様に進む。
「あっぶねぇ……」
「自動操縦に切り替えますか?」
「いや、今は良い。迅号の操縦は、地味に楽しいからな。仕事前の息抜きには、最適だ」
知覚の反応を、逃さなきゃ良いだけだし、向こうに着いたら忙しいからな。
「っとそうだ。ミルン、黒姫。今の内に、後ろの荷物から、好きなご飯を食べといてくれ」
『ご飯っ! かしこまっ!』
『干物はあるかや?』
『黒姫はこの干物?』
『それで良いのぢゃぁ』
円堂とペペルーノには悪いが、お前らの晩御飯は、今回だけ抜きにさせて貰う。
迅号に積んでいる干物は、高級品だからな。
「んっ? 前に石垣が見えるな。あそこが、突破された国境なのか?」
「解析……肯定。その先に、生態反応有り」
「て事は、敵さんの本陣か。それなら、ギリギリを狙って通り、少し驚かせようかねっ!」
「肯定。進路そのまま、衝撃波で天幕を、破壊可能。衝突まで五秒、四、三、二、一、通過」
「今さ……人も空に舞ってなかった?」
しかも、天幕を破壊しただけだから、迅号内部には、何の衝撃も伝わって来ないのよ。
「肯定。衝撃波ですので、死にはしません」
「そりゃ良かった……のか?」
そうして、時折り見かける兵士っぽい者達を、吹き飛ばしながら、あっと言う間に、ノブストン首都が見える、川の手前まで到着。
「うしっ、黒姫。迅号から降りて、でぶドラの姿になってくれ。なる早で済ませるぞ」
「なにするの?」
「そうぢゃ。何をするのぢゃ?」
「そんなもん、簡単な事さ。この場所に、そこそこの砦を、サクッと作るんだよ」
こっちには、黒姫重機があるからね。
直ぐに終わる仕事だよっと。




