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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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間話 アッジスノードの迷宮.4



 クルゥッポゥッと鳴く、魔物の臭いを辿り、少し広い空間へと、到着した。


「行き止まり? 臭いはするのに、姿が見えないのっ。あの魔物……どこ行った?」


「ふむ……隠し部屋でもあるのかのぅ。どれミルン、下ろしても良いかや?」


「そっとお願いしますっ。落し穴があったら、また埋まっちゃうっ」


「分かっておるのぢゃ」


 地面に落し穴が無いかどうか、爪先でつついて確認してから、ゆっくり足を付ける。


「……問題無しっ」


「ふひぃっ、地味に疲れたのぢゃぁ」


「ミルンは軽いでしょっ」


「軽いぢゃと? そんな訳……ミルンは軽いっ、羽根の様に軽いのぢゃぁ」


 重たいって言ったら、即座に埋めようと思ったのに、上手く誤魔化したの。

 ミルンは重く無い。

 お父さんだって、普通に肩車してくれるし、丸い黒姫よりかは、軽い筈っ。


「ほれミルンっ、あの魔物を探さねばのぅ」


「そうだったっ!」


「ほっ……」


 あの魔物は、一体何処に消えたのか。ここの空間は、縦横五メートル程の広さで、隠れる場所なんて、見当たらないの。


「それに、ここには落し穴が無いの。なんで?」


「なんでぢゃろうの……上かや?」


「上?」


「ほれっ、あそこの小さい穴。あの大きさなら、先程の魔物であれば、通れるぢゃろうて」


 確かに天井には、ミルンの頭程の大きさの、穴がある。あの大きさだと、ミルンや黒姫だと、通れない。


『ポホッ、クルゥッポウッ』


「聞こえたっ! 上から煽ってるっ!?」


「余程、知能が高い魔物ぢゃの。この様子ぢゃと、ここに誘導されたのやも、知れぬのぢゃ」


『クルゥッ、クルゥッ、ポホッ』


 ミルン達が通れないと知って、安全圏から、煽りまくってくるのおおおおおおっ。

 どうにかして捕まえないと、走り回ってスッキリする為に、わざわざ迷宮まで来たのに、苛々のまま帰る羽目になっちゃうっ。

 

「上に向かう為の、道を探すのっ!」


「待つのぢゃミルン」


「なあにっ!」


「上に向かったとて、また逃げられるのが、オチぢゃと思うかや。少し落ち着かぬか」


「上からずっと、『クルゥッポホッ』喧嘩を売られてるのにっ、落ち着け無いよっ!」


 いっその事、魔法を天井に連発して、おっきな穴を……天井が崩れて、埋まっちゃうのっ。


「ミルンや、耳を貸すのぢゃ」


「なあにっ」


「ボソッ(ミルンはここで、待ち伏せておれ。我が行って、ここに追い込むのぢゃっ)」


「ボソッ(二手に分かれるっ。かしこまっ。通路に潜んで、あの魔物が出で来るのを待つのっ)」


 そうなの。こっちは二人居るんだし、片方が追い込んで、もう片方が隙を見て、魔物に突撃すれば良いだけの、話だった。

 冷静に、冷静になるの。


「ボソッ(ではミルンや、少し待っておれ)」


「ボソッ(アイアイサーっ)」


 黒姫が行った……けど、ここで静かにしてたら、あの魔物に気取られちゃう。


「ここはっ、変身して注意を引くのっ!」


 懐から、布で作られたマスクを取り出して、スポンっと被り、変身完了っ。シュバっとポーズを取り、名乗りを上げる。



「鶏鍋食べたい、ミルンレッドっ!」



 シ──ンと静まり返る、迷宮内。

 天井の小さな穴からも、残念なモノを見るかの様な雰囲気が、漂って来る。


「グリーンが居ないとっ、調子が出ないのおおおおおおおおおおおおっ!!」


 爆発も無いから、面白味に欠けるし、コレをお父さんに見られたら、減点されちゃうっ。


『ポッ……ポーゥ』


「哀れみの声っ!?」


『ポホッ』


「また笑ったっ!?」


 ぬぎぎぎっ、精々ミルンに、気を取られるが良いのっ。黒姫の声が聞こえたら、直ぐに姿を隠して、あの魔物が出て来たところをっ、確実に仕留めるっ。


「それまでっ、頑張るのおおおおおおっ!」


『クルゥッ……ポッ』


「馬鹿にされてる気がするうっ!」


 その場でパンチやキック、宙返りや側転を繰り返し、魔物の視線を釘付けにする。

 正直言うと、姿が見えないから、こっちを見ているのかが、分からないんだけど、止める訳にはいかないのっ。


「しゅっしゅっ、えいっ! たあっ!」


『クルゥクルゥ、ポホッ、ポホッ』


「むきいいいいいいっ! 馬鹿にしないでっ!」

 

 ミルンの真似っ子してくるっ!

 黒姫早くっ、早くするのおおおおおおっ!


『見付けたのぢゃあっ! 大人しくせいっ!』


『クルゥッ!?』


「今っ!」


 黒姫の声が聞こえた瞬間、通路へと走り、いつでも飛び出せる様、身を低くして待ち伏せる。気配を消せる、獣族の狩り方なの。


『逃がさないのぢゃっ!』


『ポホッ』


『くっ、待つのぢゃああああああっ!』


 ジッと、天井の穴を見詰める。

 あの魔物が顔を出せば、魔法で天井まで突撃して、一発で仕留めるのっ。


「ボソッ(……静かになった?)」


「ポッポックルゥッポッ」


「っ……」


「ポーゥッ」


 何で、ミルンの頭の上から、あの魔物の鳴き声が、聞こえるのだろうか……。


『ミルンやーっ! しくじったのぢゃーっ!』


「なんでっ!?」


「ポホッ」


 捕まえようと、腕を振り上げたが、『ポーゥッポホッ』と、余裕で避けられ、そのまま天井の穴へと、逃げられてしまった。


「ぬぎぎぎっ、また頭にうんちしてえっ!?」


 ミルンの頭はっ、おトイレじゃ無いのっ!



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