間話 アッジスノードの迷宮.3
じっくりと地面を観察しながら、落し穴が無いかどうかを確認して、一歩一歩進んでます。
「むうううっ、走り回れないっ」
「我慢せよミルン。走った瞬間落し穴ぢゃと、最早笑うしか無いかや」
「落し穴嫌いっ」
時間がかかり過ぎるのっ。このままだと直ぐに、タイムオーバーで帰る羽目になる。
「この洞窟、妙に明るいの。なんで?」
「ふむぅ、これはアレぢゃ。セーフアースの遺跡と同じく、光鉱石ぢゃのぅ」
「光る壁っ。ここは遺跡?」
「この感じぢゃと、迷宮で間違い無いのぅ。魔物の気配も感じるし、気を付けるのぢゃ」
「かしこまっ」
ここの魔物は、強いのかな? 感じる気配からすると、妙に小さい気もするけど。それにしても……焦ったいのっ。
「苛々が積もる迷宮っ」
「迷宮ぢゃと、忍耐も必要なのぢゃ。ミルンの得意とする斥候職ならば、尚の事、冷静に行動せねばならぬかや」
「分かってるのっ。冷静に、冷静に……右に曲がって、魔物を発見したのおおおおおおっ!!」
「これミルンっ!?」
完璧に捉えた。筈だった。
魔物は『クルッポゥ』と一鳴きする程の余裕を見せ、ミルンの飛び掛かりを回避。そしてまた、落し穴にズポンっと嵌りました。
「……」
「ポッ、クルゥッポッ、ポッ」
「馬鹿にされてる気分なのおっ!?」
「ミルンっ! 動くで無いのぢゃっ!」
「何でっ!?」
今現在、ミルンの頭の上に、鳥型の魔物が座っていて、苛々が止まらないのにっ。
「見た事の無い魔物なのぢゃ。爪も小さくて、毒も無さそうぢゃのぅ……ふむふむ」
「分析してないでっ、助けて下さいなっ!」
「待っておれ、今助け────」
この状況で、黒姫までもが、また落し穴に、ズポンっと嵌ったの。
「クルゥポッポッ、ポッポッ……ポホッ」
「なっ、こやつ今笑いおったのぢゃっ!?」
「鍋にしてやるのっ! 絶対に捕まえてっ、鶏鍋にしてやるのおおおおおおっ!!」
「ポーッ、ポホッ」
魔法を使って、落し穴から脱出し、魔物に向かって飛び掛かるが、何故か避けられる。
「ぬぅぅぅ、当たらないっ」
「よいしょっ、ふぅ。その魔物、動きは遅い癖に、良く避けておるのぢゃ」
「魔物のスキル?」
「可能性はあるのぢゃ。攻撃する力が無い変わりに、避ける事に、特化しとるのぢゃろう」
お父さんに似てるの。しかも、体が小さい分、下手をしたら、お父さんよりも厄介。
「ポホッ────」
「あっ、飛んで逃げたのっ!?」
「追いかけんで良いのぢゃっ! 不用意に動けば、また落し穴に嵌るかやっ!」
「ぬぎぎぎっ、屈辱っ」
今まで、色んな魔物に会って来たけど、馬鹿にされたのは、初めてです。必ず捕まえて、その場で鶏鍋にしてやるのっ。
「一旦落ち着くのぢゃ」
「うんっ。すぅぅぅ、はぁぁぁ」
「のぢゃ? のうミルン。頭に何か付いて……」
「何が付いてるの?」
頭を触ると、何やらベチャッとしたものが、手に付いたので、確認してみた。
「……うっ、うんちっ!?」
「ミルンやっ、これで洗い流すのぢゃっ」
「あの魔物……ミルンの頭に……うんちした?」
黒姫から水袋を受取り、しっかりと洗い流して、手拭いでちゃんと、拭き拭きします。
「ねえ黒姫?」
「なっ、何ぢゃ?」
「この迷宮って、広い?」
「どっ、どどどうぢゃろうの……」
その場で屈伸をして、息を整える。
さっきの魔物の臭いは、しっかりと覚えたから、今からでも、追いかけれるの。
「うふふふふふふふっ」
「みっ、ミルンや。この迷宮で、我を忘れるのは、あまりにも、きっ、危険なのぢゃっ」
「大丈夫だよ?」
「目が怖いのぢゃっ!」
懐に仕舞っている、斬撃効果付きのナイフを、二本取り出し、両手に構える。
「あっ、駄目ぢゃ……本気で怒っておるっ!?」
「黒姫。今日のお昼は、鶏鍋にするの」
「その目をこちらに、向けるで無いのぢゃっ!」
あの魔物を追うにあたって、落し穴に嵌まらない様にする為には、どうすれば良いのか。
そんなの、簡単な事なの。
地面を歩かなければ、良いだけの話。
「ねえ黒姫……飛んで?」
「ぬぐっ、この姿で、ミルンを乗せろと?」
「飛んで」
「分かったからっ、その目を止めるのぢゃっ!」
ミルンを抱っこする様に、黒姫が背中に引っ付いて、小さな翼でパタパタと、地面からほんの少し、浮いた状態で移動する。
「最初から、これで進めば良かったの」
「いやっ、我が普通に疲れるかやっ。今も結構っ、ギリギリなのぢゃぞっ」
「すんすんっ。あの魔物に近付いてるっ」
大人の姿になれば良いのに、黒姫は何で、小さい姿のままなんだろう。そんな事を思いながらも、迷宮の奥へと進むんだけど、あの鳥の魔物以外、全然姿が見えない。
「変な迷宮なの。落し穴ばっかりで、魔物が襲って来ない。なんで?」
「人を襲わぬ魔物も、そこそこ居るのぢゃ。ゴブリンイーターなどが、良い例ぢゃのう」
「なにその魔物? 聞いた事無いの」
「そうかや? 兎族と同じ耳を生やした、温厚な魔物なのぢゃ。地域によっては、守り神扱いされておるのぅ」
「兎耳……お父さんなら、喜びそうっ」
「ぬっ、奥に広い空間があるのぢゃ」
広い空間っ! 臭い的にも、あの鳥の魔物が居る事は、間違い無いの。捕まえて魔石を取ったら、鶏鍋にして食べるっ。絶対に……逃さない。




