間話 アッジスノードの迷宮.2
「くーろーひーめええええええっ!」
「のぢゃっ?」
「とう──っ!」
黒姫を発見したので、走った勢いそのままに、ドゥシャ直伝"首狩り落とし"をお見舞いして、『ごふうっ!?』黒姫を縦回転させてみた。
ヒュンヒュンとその場で回転して、床にビタンっと叩き付けられる、必殺技なの。
「これミルンっ! 何をするのぢゃっ!」
何事も無かったかの様に、無傷……。
「ぬぅ……やっぱり、黒姫には通じ無い」
「我で実験するで無いわっ!?」
「普通の人にやったら、危ないでしょ?」
「流にすれば良いのぢゃっ!」
お父さんにしようとすると、背丈が合わないから、威力が出ないの。そのまま捕まって、肩車されちゃいます。
「黒姫やゴブリンなら、丁度良い大きさっ」
「ゴブリンと同じ扱いぢゃとっ!?」
「黒姫はお暇?」
「スルーされたのぢゃっ!?」
時間が勿体無いから、話を進めるの。
「近くに迷宮があるから、付いて来てっ」
「……唐突ぢゃのぅ」
「付いて来てくれないと、黒姫のお酒を全部、アルテラに呑ませるの」
「やめぬかっ!? まったくっ、流の悪い所ばかり真似しおって……」
そんな事は無いの。むしろこう言った事は、ドゥシャから学びました。敵以上仲間未満の相手と、黒姫だけには、手加減不要。
「と言う事で、迷宮へゴーっ!」
「強制かやっ!?」
「強制って、なあに?」
「無理矢理言う事をっ、聞かせる事ぢゃっ!」
それならコレは、強制じゃ無いよね?
「ボソッ(お酒、教会に寄付……)」
「っ……行くのぢゃっ! 行けば良かろうっ!」
「むふふっ、流石黒姫なの」
アッジスノード王国の首都から、東に徒歩五分の距離にある、小さな迷宮。
目録によると、もっと先に行けば、未踏破の迷宮もあるらしいけど、今日の目的は、動き回りたいだけだから、放置します。
「ここが、迷宮?」
「この形状から見て、超初心者向けぢゃのう。冒険者の色無しでも、問題無かろうて」
「遊び場に、最適な場所っ」
パッと見ただの、小さな洞窟の入口。
踏破済みなのに、入口があるって事は、核となる何かは、そのままにされているっぽい。
「迷宮の核って、見た事無いの。黒姫なら、どんな物なのか知ってる?」
「核のぅ……迷宮によって、変わるのぢゃ。大型の魔石や、意思を持つ武具などかや。この様な迷宮ぢゃと、魔石であろうて」
「意思を持つ武具? この迷宮には無い?」
「無かろうの。若過ぎるのぢゃ」
迷宮が若過ぎる? それなら、ミユンが潜ったって言ってた迷宮なら、可能性がある?
「ぬぅ……意思を持つ剣か、斧が欲しい」
「欲しいと思っても、手に入らぬ物の、代表格ぢゃろうの。この我でも、数える程しか、見た事が無いのぢゃ」
「それは、レア過ぎるっ」
生きた化石の黒姫でさえ、数える程しか見た事が無いなら、ミルンには難しいの。
「ふんっ! 気を取り直してっ、行くのっ!」
「油断はせぬようにの。超初心者迷宮と言っても、死ぬ時は死ぬのぢゃ」
「油断はしないっ。全力で……遊ぶのっ!!」
そう意気込んで、迷宮へと入った。
一歩を踏み出した。筈だった。
「……ねえ黒姫?」
「何ぢゃミルン?」
「出して?」
「油断せぬようにと、言ったぢゃろうに」
迷宮に入って一歩目で、落し穴にズポンっと嵌り、顔だけ出た状態になりました。
「一歩目で落し穴はっ、分かる訳無いのっ!!」
「うむぅ……確かに、我でも察知出来なんだ」
「早く出して下さいなっ!」
「ちょっとま────」
ミルンを助けようとして、近付いた黒姫も、ズポンっと落し穴に嵌り、頭まで埋まって、角だけが見えてる。
「何この迷宮っ!?」
「むぐぐぐっ、のぢゃぷっ……顔を出せたのぢゃぁっ。ミルンや、大丈夫かや?」
「ふんぬっ! 大丈夫だけど、中々抜け出せないっ! 綺麗に嵌ってるのっ!」
罠を見破る斥候部隊のリーダーが、こんな醜態を晒すなんてっ、恥ずかしいっ。
「許すまじ迷宮っ……踏破して、核を壊してやるのおおおおおお──っ!!」
魔法を使用して、周りの土をごっそりと削り取り、何とか脱出に成功。イコール、魔法が無ければ、長時間放置プレイだったの。
「黒姫も早く出るのっ」
「……手伝ってはくれぬかや」
「魔法を使えば、ささっと出れるよ?」
「我、こう見えて、大技以外は苦手なのぢゃ」
確かに、この黒姫。お父さんが集中して使うような魔法を、ポンポンと撃てるのに、他の魔法を使っている姿を、見た事が無い。
「仕方無いっ。んしょっ、んぐぐぐぐっ!」
「首が伸びるのぢゃああああああっ!?」
「えいやっ!」
ズボっと、ミユンの畑で時々採れる、大きな大根を抜いた様な、達成感を得ました。
「……首が痛いのぢゃぁ」
「直ぐ治るでしょっ。行くの黒姫っ!」
「分かってるのぢゃっ」
気を取り直して、再出発。の、筈だった。
「黒姫……」
「なんぢゃ……」
「この迷宮嫌いっ」
「同感ぢゃのう」
本日二度目の落し穴。
入口から、五歩目の位置だろうか。
油断せずに進んだのに、罠が感知出来ないなんて、意味不明な迷宮です。
「むきいいいいいいいいいっ! 魔法の無駄撃ちをさせられてるのっ! 許せないっ!」
「ふむぅ……厄介な迷宮っぽいのぅ」




