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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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10話 年齢不詳の古代人.10



 四月六日、午前十時をお知らせします。

 万の軍勢に圧勝。その知らせは直ぐに、アッジスノード首都内全域に伝わり、ちょっとしたお祭り騒ぎになってしまった。

 朝から酒飲んで、結構なご身分だ事で。


「これがその報告書な」


「……むぅ」


「そんな悔しそうな顔すんなよ、デンバー副団長。こっちの損害ゼロで、敵の指揮官を捕える事に、成功したんだぜ?」


「分かっておるわ」


 こうしてちゃんと、敵の情報を共有しておかないと、今後どうするのかの方針を、決める事が出来ないからな。

 

「本当に……万の軍勢が居たのかね」


「んっ? そんなん足跡見に行けば、分かる事じゃん。疑うのなら、見に行けよ」


「いや、失言であった。いつもであれば、数百人規模で、攻めて来ていたのでな」


「あーっ、やっぱりそうか」


 と言う事は、そう言う事なのだろう。


「タイミングが良過ぎるな。デンバー副団長、スパイに心当たりは?」


「っ、分からぬ……」


 そう、見事なタイミングなのよ。

 俺と言うイレギュラーが現れて、そんなに時間が経って無いのに、今まで少数で攻めて来てた敵さんが、万単位で来た。


「防衛施設を稼働して無かったら、流石に死傷者ゼロは、厳しかったぞ」


「あのドールと言う者は、何者なのだ。何故我らですら、稼働出来ずにいた物を、こうも容易く扱えるのだっ」

 

「そこは……ナ、イ、ショっ」


「気持ち悪い口調を止めたまえっ!?」


「へいへい。で、スパイをどう見つけるよ?」


 無傷で万の軍勢を帰したから、懲りずにまた、攻めて来るかも知れない。


「なーんか、威力偵察されてるっぽい、感じなんだよなぁ。ノブストンが大国なら、それこそ数十万の規模で、軍を抱えてるだろうし」


「貴様がどんな存在かを、確かめようとしていると? であるならば、また攻めて来るか……」


「だろうな。しかも今度は、何か対策してくるかもだし。スパイ見付けないと、情報筒抜けになるぞ?」


「分かっておるわっ」


 スパイかなと思う人に、心当たりは有る。しかも、二人も居るんだよなぁ。


「占い師、円堂(えんどう)兎留美(うるみ)。あいつは一体、何処から来たんだ?」


「ぬぅ……聞いておらぬ。水害の発生を、知らせに来た者達の一人でな。知らぬ間にっ、国王付きとなっておったのだ」


「なあ、デンバー副団長。もしかして、スパイの目星、付いてるんじゃ無いのか?」


「っ……」


 俺でも分かる事なんだ。騎士団を預かる、副団長様が、気付かない訳が無い。


「証拠が無いか?」


「うむ……確たる証拠が無ければ、手の出しようが無いのだっ。だからこそ、見張ってはいるのだがな」


「それじゃあ、サクッと捕まえるか」


「何をする気だ」


「なあに、ちょっと試したい事があってね」




 デンバー副団長の部屋を出て、少しばかり、外の様子を確認する為、再度北側の壁の最上部まで、足を運んだ。


「やっぱり、ファンガーデンとは、景色が違うな。緑が少ないわ……なあ、占い師さん?」


 出入口を見ると、何故バレたと言わんばかりの顔で、姿を現したのは、自称占い師、自称大魔法使いの、円堂兎留美。


「索敵の魔法……いえ、スキルかしら?」


「さあね? んで、何の用だ? デンバー副団長の部屋から、ずっと付けて来てただろ」


「知らないわ。偶然じゃない?」


「さいですか。あっ、そうだそうだ。ペペルーノなら、さっき処刑されたぞ」


「っ……なぜ彼女が?」


 少しだけ、動揺したなぁ。やっぱりこいつ、分かり易い性格してるわ。


「少し疑問だったんだ」


「何がよ」


「ペペルーノの奴な、黒姫と戦った事が有って、その時に何で、"魅力魔法"を使わなかったのかって、疑問だったのよ」


「なっ……」


 勿論、使ったとしても、黒姫には効かなかっただろうけど、それでもだよな。あの魔法を使えば、あの時の状況ならば、ミルンぐらいは、無傷で捕縛出来ただろう。

 副団長や、他の団員に、知られたく無いってのが、バレバレだよな。


「何でその魔法を、知ってるのかって?」


「……っ」


「それを伝える前に、一つだけ、良い事を教えようか。お前の益になる話だ」


「何よっ」


 さてさて、どんな反応をするのかな。


「T-OP壱号って、名前があってだな……その名前が、"ドール"って言うんだ」


「どーる? どっ、ドールですってっ!?」


 隙を見せたら、駄目ですよっと。

 "夜の帝王"発動っ! お兄さんの臭いに、悶え苦しむが良いっ!


「なっ、あっ、"スピリットリカバリー"っ!」


「おおー、そんな魔法もあるんだな」


「かはっ、今のっ、精神汚染じゃ無いわね。あの子より上のっ、魅了のスキルっ!」


「気を付けろよ? このスキル、俺が切らない限り、パッシブだから」


「回数制限無しって、厄介ねっ!? そうかっ、あの子にそれを使って……」


 大正解。俺が逆さ吊りの時に、ペペルーノに色々聞いたけど、はぐらかされた理由が、単に俺の聞き方が、悪かった訳だ。


「変な事はしてないぞ? んでさ、お前がこの国に居る理由を、俺なりに考えてみた訳よ」


 円堂兎留美は古代人。

 地平の日の本と言う、自分の居た世界に、帰りたいだけの、煩い女。

 転移研究者に関わる物を、探している。

 導き出される答えは、一つ。


「お前、"あの施設"に入れなかっただろ?」


「っ、やっぱり……ここの人達が不滅の巨石と呼ぶアレを、破壊したのはっ……」


「聖域? 俺が言ってるのは、ここから南に向かった先の、研究所の事だぞ」


「それが不滅の巨石よっ! どうやって入ったのっ! 中で何を見付けたのよっ!」

 

 ギャンギャン煩いわぁ。さっさと捕まえて、じっくり話を聞かないとだな。


「ドール、防衛機能発動だ」


円堂(えんどう)兎留美(うるみ)に警告。魔法の行使及び、敵対行動を確認次第、電流処置にて、行動不能にします』


「なっ!? 砲をあれだけ撃ったのにっ、何で魔力切れになってないのっ!?」


「それも知ってるのか。まあ、アレだ。牢屋でじっくりと、話を聞こうじゃ無いか」


 魔法発動の兆候があれば、電流。

 動けば電流。

 魔法を発動しないと、夜の帝王の魅了から、逃れる事が出来ない。


「っとそうか……牢屋には運ばなきゃだし、ドール。電流処置して、気絶させろ」


『了。ウォールショック、起動』


「なっ、ちょぐっ!?」


 足下からバチっと一発。

 ピンっと棒立ちになった円堂(えんどう)兎留美(うるみ)は、その姿勢のまま前へと倒れ込み、顔面ダイブを見事に果たした。


「……嫌な倒れ方だわぁ。黒姫も、ペペルーノを捕まえただろうし、色々聞かないとだ」


 ペペルーノが処刑された? そんなもん、嘘に決まってるじゃん。


「これで、防衛機能の一つは、試せたし、後は相手の出方を見るかね」



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