10話 年齢不詳の古代人.9
一体の、マッスルホース型ゴーレムに乗った男が、結構な速さで近付いて来て、門の前で立ち止まり、何かを取り出し声を発した。
『あーあーデステス。愚鈍なる、アッジスノードの諸君。警告する。速やかに門を開き、我らノブストンに降伏せよ』
「アレは、拡声器か?」
「了。形状を見るに、発掘された物と推測」
『さもなくば、我ら万の軍でもって、貴様等を滅し、力尽くで奪う事となる』
「この国、今までどうやって、万の軍を退けて来たんだ? やっぱり大砲でドカンか?」
「不明」
「だよね。まさかデンバー副団長が、毎回突撃をかまして、追い払ってたとかだったら、凄いな」
『今降伏するならば、民の命は保証しよう。しかし、降伏せぬとなれば、誰一人として助かる事は無いと、今ここに宣言する』
目標、百メートル先の馬鹿の足下。
「ドール、撃て」
「了。発射」
『再度警こ────っ!?』
ゴゴオオオンッと大砲が光を放ち、一直線に馬鹿の足下に着弾し、その馬鹿を巻き込んで、地面ごと吹き飛んだ。
「おおっ、流石ドール。殺さずに上手く、無力化するとはな。名砲撃手だ」
「肯定。この程度、造作も御座いません」
「さあさあ、敵さんはどう出る?」
どうやら、突撃して来るっぽい。
先に見える米粒達が、群を成して迫って来る光景は、さながら映画の一幕だろう。
「何で敵さんは、真っ直ぐ突っ込んで来るんだ? 大砲が怖く無いのかね?」
「否。掌握前の稼働率では、大砲の連続発射不可。その情報を、敵が持っていると断定」
「そうだったのか……今は?」
「毎秒二十発可能」
「一分間に、千二百発の砲弾の雨とか、主砲要らんだろ……エグいわぁ。けども、やるしか無いよな。殺すなよ?」
「了。旧型固定砲台、ハンマー起動。連射開始」
ドールのその言葉と共に、俺が立って居る、壁最上部の少し下に穴が開き、十門の砲が、顔を覗かせ火を吹いた瞬間────前方の大地が、土煙の嵐で見えなくなった。
「煩いけど、凄い威力だなぁ。砲弾には、何が使われているんだ?」
「魔石の粉と、魔力を少々使用。防衛施設内に残された残弾数、七万発」
「あぁ……神殺しの廉価版なのか」
「撃ち方止め。敵の戦力、九十八パーセント無力化に成功。追撃しますか?」
「いんや、その必要は無い」
黒姫とミルンが、上がって来たからな。
「敵の玉潰すっ!」
「待たせたのぢゃあ……もう終わっておるかや? これからどうするのぢゃ」
「黒姫、龍の姿になってくれ」
「のぢゃ?」
今の砲撃で抉ったのは、アイツらの進行上の土であり、誰も殺していない。
衝撃を受けて、怪我はしただろうがな。
「あの兵達に、挨拶しに行くんだよ。この国には、魔神流が居るぞってな」
黒姫でぶドラバージョン。その頭の上に、ミルン印のお高い椅子を括り付け、足を組みながら座り、腰を抜かしている敵兵を、見下ろす。
日本でやれば、厨二病全開の痛いおっさんだが、異世界でやれば、ガチ魔王の御降臨。
「うんうん。敵さん見事に、萎縮してるぞ」
「んしょっ、ミルンは上っ」
「ミルンさんや……今肩車セットオンしちゃうと、威厳無くなるんだけど……」
「大丈夫っ。皆んな震えてるのっ」
下をチラッと見ると、確かに怯えている。がだ、怯え方が変な感じなんだよ。
「へっ、変態だああああああっ!?」
「何だあいつはっ、何でワンブルを乗せているっ! 何の意味があるんだっ!」
「何だこのドラゴン種はっ! 何故人を乗せてっ、何故ワンブルが乗っているのだっ!?」
下から見ると、黒姫の龍の上に、俺が偉そうに座ってて、更にその上に、ミルンが踏ん反り返ってるの図。
位置的には、ミルンが"最上位"。
間違ってはいない。
「黒姫、一発頼むわ」
「良かろうて。コォォォォォッ、ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアア────────」
煩いを遥かに超えて、空気を震わせる、鼓膜が破けるかと思う程の、黒姫の咆哮。
可愛いミルンの耳は、黒姫がしっかりと保護しているから、問題無しだ。
「ノブストンの兵達に告げるっ! 今後、アッジスノード王国に攻め入れば、同盟者であるこの俺、魔神流に敵意有りと認め、ノブストンに災いをもたらすとっ、ここに誓おうっ!」
「玉を潰す事をっ、ここに誓うのっ!」
「あっうん、間違ってはいないか……今直ぐ国元へ帰り、貴様らの上役に伝えるが良い!」
「十秒以内に動かないとっ! 玉を潰すのっ!」
「うわぁ……ミルン本気?」
「はちっ!」
これは……本気だな。こいつらに、安眠を邪魔されたから、プチ怒ミルンになってます。
「ろくっ!」
敵さんは、心ここに在らずってな感じで、死を待つゴブリンの様に、呆けているぞ。
「さんっ!」
今のミルンに勝てるのって、ドゥシャさんとかシャルネぐらいだから、マジ強いのよ。
「いちっ!」
乙女量産機ミルン、敵兵を追撃します。
「玉潰すのおおおおおお──っ!!」
肩からシュバっと飛び降りて、呆けている兵の股間に、ミルンの可愛いパンチが、メキィッと突き刺さり、悶絶大賞受賞。
「ひっ……ひゃああああああっ!?」
「ててっ、撤退っ! 撤退だああああああっ!」
「「「ひやあああああああああっ!!」」」
ほらほら、敵指揮官発見。
「ミルンっ! 頭に羽根飾りを付けた奴を狙えっ! 敵の指揮官クラスだっ!」
「かしこまああああああっ! ふんっ!!」
「ここから見ると、ミルン対万の軍勢に見えるのは、ちょっと面白いな」
そうして、あっという間に戦いは終了。ノブストンの指揮官クラス、ゲットだぜっ!
「やっぱ、大砲とかあると、便利だわぁ。そうだっ、なあ黒姫。ちょいと、頼みたい事が有るんだけど」
「我に頼みかや? 何じゃ?」
「ちょいとね。スパイの可能性が濃厚な奴を、捕まえて来て欲しいんだ」




