10話 年齢不詳の古代人.7
夜も遅くに、牢屋からの釈放。
寝る場所? 勿論軟禁部屋です。その部屋で、俺、ミルン、黒姫、ドールが集まり、さっきまで話をしていた内容を、共有です。
「と言うとで、ドール。万丈眞、徒然敦史って名前に、心当たりは有るよな?」
「了。副管理者から、管理者の名前を確認。流の言う通り、その二名は管理者です」
「素直に答えたか……この二人のどちらかが、転移魔法研究者なのか?」
「否。これ以上は、副管理者の権限外です」
違うと言う事は、教えてくれるのね。
「黒姫は、あの円堂兎留美って奴の事、知ってるか?」
「知らぬの。哲也のパーティーにも、大魔法使いのエルフはおったが、彼奴は男なのぢゃ」
「エルフ……男のエルフに、会った事無いな」
「緑人族や、緑隠族と言ったエルフは、本来根暗な引き籠りぢゃからのぅ。影の中にも数名おるが、彼奴らは珍しいのぢゃ」
「へぇーっ。まあ確かに、院長影さんは、明るいと言うよりも、暗い方だわな」
良い言い方だと、静かな大人の女性。
超美人だし、孤児の子供達の面倒見も良い、素晴らしい女性だ。
「んでさ、十八日までには、セーフアースに帰らなきゃ、ミルンがミユンと交代出来ないし、これからどうする?」
「ミユンと交代しないと、怒られるっ」
「だよなぁ。明日は四月六日。残り十二日で、移動を考えたら、十日、十一日の猶予はあるけどもだ……」
この国の現状を見るに、結構不味い。
アッジスノード以外にも、人が居る事は確実だろうから、そこに向かうべきか。
「ここにこのまま居たら、確実に戦に巻き込まれるだろ? なあ黒姫?」
「であろうのぅ。食料を見る限り、他国との交流も絶ってそうぢゃし、畑も見当たらぬ。他国がこれを、逃すまいて」
「ドール。姉妹機の反応はどうだ?」
「否。この大陸の何処かには居ますが、魔王の力が邪魔をして、正確な位置までは不明」
「魔王ねぇ……」
この国が警戒してんのは、隣国だっけ? 巻き込まれる前に、トンズラしないとだな。
「うしっ。そんじゃあこっそりと、お暇しますかね。皆んなも、それで良いよな?」
「我は構わぬのぢゃ」
「了。流に従います」
「ぬぅ……」
ミルンが珍しく、浮かない顔をしている。
「どうしたミルン?」
「お父さん。戦になったら、ここはどうなるの」
「そりゃぁ……対抗出来なかったら、詰むだろ。若しくは、食料難で自滅か?」
「ノルパノちゃんや、タダイル君は?」
「誰?」
「ミルンが遊んでた、赤ちゃん」
国王夫妻の、娘と息子か。
あの時、結構仲良く遊んでたからな。情が移った……違うな。ミユンと出逢った時もそうだけど、ミルンは小さい子に、結構甘いんだ。
「国王夫妻の子供となれば……っ」
万が一国が滅べば、運が良くても飼い殺し。悪けりゃそのままあの世行き。余程栄えた、懐の深い国で無いと、助かる道は、ほぼ無いと言えるだろう。
「でもさ、ミルン。この国はこうして、残ってるんだから、今直ぐ滅ぶ訳じゃ無いだろ?」
「そうなの?」
「ここには、あの大砲も有るし、大丈夫だって」
「ぬぅ……」
この顔は、納得してないな。
耳がピコピコ、尻尾がブンブンと揺れて、眉間に皺まで寄せて……可愛いっ。
「自称大魔法使い様も居るんだし、大砲と合わせたら、早々滅ぼされないと思うぞ?」
俺の魔神化した鎧に、穴開けたんだからな。
「流や」
「んだよ黒姫……」
「彼奴は確かに、突出しておるが、所詮は人なのぢゃ。城の防護が無ければ、流の最初の一撃で、死ぬ程度ぢゃぞ」
「チッ、何を言ってんだよ」
「哲也の友であった、大魔法使いならいざ知らず、彼奴では、戦力にならぬのぢゃ」
この黒姫っ、さっきは出て行くのに了承した癖にっ、意見を変えやがった。
「ヴォイド大陸を、調査するにしても、拠点を構えるのは、悪く無いと思うのぢゃが?」
「っ!? 黒姫の言う通りなのっ!」
「おまっ、それは……っ」
「他の国に行ったとして、この国の様に、素直に話が出来るかのぅ。戦云々も、あくまで"仮定の話"ぢゃろうて」
一理ある。一理有るんだ。が、万が一戦になろうモノなら、またアレを見るんだぞ。
帝国で見た、あの惨状。
思い出すだけでも、苛々すんのよ。
「お父さんなら、どうにか出来ない?」
「ミルン……」
信頼の眼差しが、凄いのよ。
他国に攻められない為の方法は、有ると言えば有る。ヴォイド大陸ならではの、方法だ。
いや、エイドノア大陸でも、やってるか。
伸びっぱなしの髪を掻き、天井を見つめて、再度ミルンの可愛い目を見る。
「はぁ……ドールっ! この遺跡の全機能を掌握っ! 動かせる兵器が有れば動かせっ!」
「了。防衛施設内の稼働率、四十パーセントまで、使用可能。他は破損しております」
「ミルンっ! デンバー副団長を探してっ、寝ている国王を起こさせろっ!」
「お父さん……っ、かしこまっ!」
「黒姫っ! 大人モードで、知覚出来る所まで調べろっ! 武装してる奴が居たら報告っ!」
「ふふっ、任されたのじゃっ!」
俺のモットーは、ヤルと決めたらヤル。
この国が、滅びかけてるならば、持てるモノ全てを使って、復興させてやるっ。
「先ずはっ、大義名分作りからだっ!」




