10話 年齢不詳の古代人.5
四月五日、夜八時。
こうして都度、時間を確認しないと、体内時計が狂ってるから、不便なのよ。
「後で歯を磨かないとっ、肉が挟まってるわ。チッ、チッ、取れないなぁ」
「ミルンが取る?」
「大丈夫だ。ミルンに任せたら、歯ごと取りそうで、危ないだろ?」
「そんな事無いのっ」
目の前には、顔に包帯を巻き付けたあの女が、不機嫌そうに座っている。その隣には、デンバー副団長が座っており、こちらも顰めっ面で、何とも嫌な雰囲気だ。
「で、何か用か?」
「何故っ……」
「んっ? どうした、デンバー副団長?」
「何故疲弊しておらぬっ! 魔王とてっ、何も食わねば死ぬ筈であろうっ!」
そんな事言われんでも、知ってるわい。
ミルンや黒姫、ドール達は、どうやら空間収納スキルの事を、伝えて無い様だな。
「デンバー副団長……この人さっきまで、美味しそうにっ、ご飯を食べてたのよっ!」
「何処から手に入れたのだっ! いやっ、どこに隠し持っておるっ!」
「そうよっ! お米出しなさいよっ!」
それ絶対に、用件と内容違うよね? 馬鹿正直に、答える訳無いじゃん。
「なあミルン」
「なあに?」
「俺が牢屋に居る間、何食べてたんだ?」
「うんとね、屑肉のスープっ。干し肉は、二日に一回の、ご馳走だって」
「干し肉がご馳走様って……マジ?」
「本気と書いて、マジと読むのっ」
予想よりも、酷い状況じゃん。どおりで、町中回った時、飲食店が無かった訳だよ。
「なあデンバーさんよ」
「なんだっ」
「もしかしてこの国……食料難か?」
「っ、そうだ……」
「その事でっ、私から話があるのよっ!」
そういやこいつ、占いか何かは知らんが、俺達が来る事を、予見してたんだったな。
「話を聞く前に、俺の質問が先だ」
「何でよっ!?」
「お前はどうやって、俺達が来る事を知った?」
「っ……占った結果よ」
分かり易い程顔に出てるぞ。目も泳いでるし、嘘が苦手過ぎるだろ。
「確かあの国王様は、『彼の地の者来たれり』って言ってたな。随分と、曖昧な事で」
「そっ、そんな事無いでしょっ! 私が占った通りっ、貴方達が来たじゃないっ!」
「なら聞くが、"彼の地"とは、何処だ?」
「くっ……」
国王曰く、水害から民を守った。聖域の破壊を知った。他にも何か、助言をしたのだろう。
こいつは俺に言った、私は大魔法使いだと。
占い師では無くだ。
「デンバー副団長。あそこに居る"存在"を、見る事は出来るか?」
「何を言っておる? 何を見ろと?」
「お前はどうだ? 円堂兎留美。何か見えるか?」
「なっ、何も見えないわっ」
そう言いながらも、今の言葉を聞いた、"泣きそうになっている存在"を見て、冷汗がドバドバ出てるぞ。
「魔眼持ちに会うのは、久々だなぁ」
「っ、まさか貴方もっ……」
「この虹色の目が、カラコンにでも見えたか?」
「虹色っ!? 守護者ですってっ!?」
その言葉を知ってるのか。
となると、こいつは少なくとも、古代人である事は、間違い無さそうだ。
「今気付いたのかよ」
「お父さん。からこんって、なあに?」
「んっとな、目に色の付いた膜を貼って、目の色を変えれる、お洒落アイテムだ」
「ミルンのお目々、虹色に出来る?」
「ミルンは金色が似合ってるから、そのままで良いと思うぞ? カラコンは作れないしな」
「むぅっ、作れないのは残念っ」
ようはこの女、占いをして知ったのでは無く、ヴォイド大陸に"誰か来たよ"と、妖精達に、教えて貰っていた訳だ。
「こんなん、見えない人からしたら、分かる訳無いわな。騙し放題だろ」
「何の話をしているのだっ!」
「騙して無いわよっ! 実際この国の人を、助けたんだからっ!」
「煩い二人だなぁ……」
占い師がどうのこうのを、今この場で追求する気は、さらさら無い。疑問に思ったから、聞いてみただけだ。
「んで、お前は俺に、何の用なんだ? 米米言う様だったら、もうこの国出て行くぞ」
「お米くれたって良いじゃないっ!」
「良しミルン、行くか」
「かしこまっ」
「まっ、待ちなさいよっ! 言わないっ、言わないから話を聞いてっ!」
その話も、厄介事の様な気がして、出来れば聞きたく無いんだよなぁ。
「……何だよ、聞きたい事って」
「っ、万丈眞、徒然敦史。この二人の名前に、聞き覚えは無いかしら……」
「誰だよそれ。聞いた事無いぞ」
「それならっ、バジョマはどうっ!」
「バジョマ? 誰だよそれ?」
バジョマバジョマ……万丈眞とやらの、あだ名っぽいな。そんな奴知らんて。
「結局お前は、何が知りたいんだ?」
「私はずっとっ……帰る方法を探しているのっ」
「帰る? 何処に帰るってんだよ?」
「勿論っ、"地平の日の本"よっ!」
んんっ? 今こいつ、何て言った?
「おいおい、地球の日本だろ?」
「何言ってるの? 地平の日の本よっ! 自分の星の名前も忘れたのっ!?」
「んんっ!?」
「どう言う事よっ!」
言葉は通じるのに、意味が分からないぞ。
地平の日の本?
地球の日本じゃ無くて?
丸い星じゃ無くて、平たい星?
「えっと……宇宙人ですか?」
「人間よっ!?」
「ワレワレワ、チキュウジンダ」
「ちきゅう? 何よそれっ!」
おぉっ……話が通じないぞぉっ。




