10話 年齢不詳の古代人.4
ジュウウウっと鉄板の上で、肉から染み出した油が、顔に向かって跳ねて来る。部屋に煙が充満して、ダイレクトに目を刺激するが、これぞ、焼肉の醍醐味だろう。
「旨んめぇーっ。バラ肉だけじゃアレだから、タンとハラミも焼きますか」
薬味をちょいと、タンを焼く。
薄切りにしてあるから、片面焼きでもしっかりと熱が入り、これは塩で頂こう。
「ん──っ、このコリコリ感が、堪りませんなぁ。お次はタレを付けてっと。ついでに明日の分も、下拵えしておくか」
深皿を出して、ハラミをタレで揉み揉み。
「絶対旨いヤツじゃん。んじゃ、残りのハラミを、焼き焼きと……白米食べたい」
異世界だろうと、焼肉に白米は、正義っ! そう思うので、米炊きの準備だ。
空間収納から、予備のコンロ、土鍋、ファンガーデン産の米、水樽を取り出す。
「土鍋に米と水を入れて、優しく米研ぎしたら、水を入れ替えてっと。あとは火を付け、待つばかりっ……野菜も食べておくか」
葉野菜を出して、軽く水洗い。肉を包んで、もしゃもしゃと食べる。
最高です。
肉ばかり食べると、胃もたれするからな。胃薬なんて持ってないし、気を付けないとだ。
ゴンッ────「何っ!?」
急に壁から、凄い音が聞こえた。方向的に、ミルンが待機してる部屋だろうか。
ゴンッゴンッ────「またかっ」
まるで、俺がお肉を一人占めしている事に対する、抗議の様だ。
「抗議をして来るって事は、ミルン達のご飯には、お肉が無いのか?」
前見た時は、干し肉齧ってたよな? あの干し肉って、ソードファングの肉だろうか。
「ジュラ紀っぽい肉の……干し肉」
食べてみたい気もするけど、さっきからゴゴゴゴゴッと、壁を連打する音を聞く限り、ミルン的には、かなり御不満なのだろう。
「いくら叩いても、ここは牢屋だからなぁ。食べれるのは、俺だけだぞーい」
ミルンがここに来るなら、ご馳走しても良いんだけど……出入口は何処だろうか。
そんな事を思っていたら、ガゴッと天井から音がして、扉の様に開いた。
「天井にあったのか……」
「煙たっ!? 貴方何してるのっ!」
「えっと……誰だっけ?」
「自己紹介したじゃないっ! 円堂兎留美よっ!」
そうだったそうだった。ずっと放置されてるから、名前忘れんだよなぁ。
「何か用か? 今ご飯中なんだけど?」
「何でご飯があるのっ!?」
「んなもん、お前らが食べ物くれないから、自分で用意したに、決まってるだろ」
「そうじゃ無くてっ、何処から出したのよっ!」
「そんな事、お前に言う訳無いだろ」
ギャンギャン煩い奴だ。リシュエルはウザい奴だが、こいつは面倒臭い奴だな。しかも顔が似てるから、ムカつき度も鰻登り。
「貴方反省しない子ねっ!」
「へいへい、御免なさいねーっ。おっ、米炊けたかなぁ、良い感じじゃん」
「人の話をっ……お米っ!?」
上のあいつは無視だな。
そんじゃぁ、米をよそって、その上にハラミを山盛りにしてっと、完成っ!
「ハフハフっ、旨んめぇーっ!」
「ちょっ、何でお米が有るのよっ!? それにその肉っ、美味しそうじゃないっ!」
「んぐんぐ、やっぱり米は最高だぁ」
「くっ、それ寄越しなさいよっ!」
「一粒金一キロと、交換なら良いぞ?」
「……貴方何言ってるのっ!?」
米を見て、血相を変えたと言う事は、どうやらこのアッジスノードでは、米の栽培をしてないっぽいな。
「ここ数百年米を食べて無いのよっ! 少しくらいくれても良い『邪魔なのっ!』じゃぶっ!?」
あの女、吹っ飛んで行ったなぁ。それに、数百年米を食べてないって……マジで何歳だよ。
「んしょっ、とうっ!」
シュタっと飛び降り、すかさず箸を持ったのは、勿論、肉食系犬耳娘のミルンだ。
「お肉を下さいなっ!」
「はいよ。ご飯を盛り盛り、ハラミをのせて、ミルンは特盛りだよな。ほいどうぞ」
「じゅるっ……頂きますっ!」
この涎具合から見ると、ここのご飯は相当、ミルンのお口に合わない様だ。
特盛ご飯が、ものの数秒で消えました。
「お代わりっ!」
「炊いたご飯は、これで最後だからな」
「お肉食べるから、平気っ」
「そりゃそうだ。今度はゆっくり食べなさいな」
「りょっ」
一人飯も悪く無いが、やっぱりこうして、誰かと食べるご飯の方が、美味しいよね。
『むっ? 何故扉が開いて……占い師殿っ!?』
デンバー副団長の声が聞こえたな。あの女、ミルンの不意打ちを食らって、生きてるのか?
「なあミルン。ちゃんと手加減したか?」
「モゴモゴんぐっ、勿論なの」
「なら大丈夫か」
にしても、あの女やデンバー副団長が来たって事は、そろそろ牢屋から、出られるのかね。
「今は飯時だから、後にして欲しいぜ」
「うまうまぁっ!」
「うしっ! 肉をモリモリ焼くぞーっ!」
「焼くのっ!」
そりゃもう食べましまとも。
天井の開いた扉から、匂いを嗅ぎ付けた騎士達が、ガン見して来たけど、これ見よがしに食べまくりました。
「げふっ……ご馳走様」
「もうっ、食べれないのっ」
その後直ぐに、梯子が下されて、不貞腐れたあの女と対面し、話をする事となった。
もの凄く、面倒臭いわぁ。




