10話 年齢不詳の古代人.1
今日は俺の一日の過ごし方を、簡単に紹介しよう。開口一番に、何言ってんだコイツ? とかは、思わない様に。
先ず、目を覚ますと、腕時計で時刻の確認。
今は、四月五日の、朝十一時だ。
昼だろうって? 起きた時間が朝だろう。
空間収納から、コンロと鍋、コップと茶葉、水樽を取り出して、茶を沸かしての、優雅な朝のティータイム。
これが無いと、延々眠気に襲われて、二十時間睡眠になるから、マジで体に悪いのよ。
次に、軽く屈伸運動と、腕立て伏せ、腹筋をした後に、ベッドに座って、ボーッとする。
以上っ! 終了っ!
「怠惰なニート生活ってなぁ……スマホも無いのに、どう過ごせと?」
この言葉も、毎朝のルーティンだよね。
さて問題です。俺は今、何処に居るでしょうか。十秒以内に、お答え下さい。
「ちゃらちゃっちゃっちゃーっ、ちゃらっちゃっちゃっ、らららはいっ! 正解は、アッジスノード王国の、ガチ牢屋でーす。はははっ」
訳が分からんわな。
古代遺跡を利用した、今までで一番頑丈そうな牢屋なんだけど、これがマジでヤバいの。
先ず、出入口が分からない。
四方を、コンクリートの様な壁で囲まれており、窓も無い完璧仕様となっております。
空間収納で穴を開ければ、簡単に逃げられると、普通なら思うだろう? ところがどっこい、四方の壁の向こうには、兵が常駐しているという、俺対策完璧なのよ。
んで次に、四方の壁の内、三ヶ所の壁の向こうには、それぞれミルン、黒姫、ドールが待機しており、俺が逃げ出そうとすると、有無を言わさず襲って来るのよ。
特に、ミルンと黒姫は、ガチだった。
『お父さんっ! 反省するのっ!』
口からお肉の切れ端が見えている、ミルンの下からの攻撃。勿論脛ダイレクト。
『少し頭を冷やさぬかっ!』
酒瓶片手にふらふらと、大人バージョン黒姫の、手加減ボディブロー。
「壊した壁も、あっと言う間に自己修復。何で壁が勝ってに直るんだよ……」
ドールに至っては、『解析…脅威度Cと確定。兵の物量で押せば、逃す事は無いでしょう』って、何で兵士に指示出してんの?
「牢屋に籠って、明日で十日目とか、一体いつになったら、出れるのか」
俺も多少は、悪いと思ってる。
だって、あの顔見たら、仕方無いじゃん。殴りたくなるじゃん。我慢出来ないっての。
牢屋に入ってる理由?
暴行未遂、器物破損、猥褻物陳列罪、国王への不敬罪、王妃への不敬罪ってところか。
極刑に処そうとしても、無駄だと言うことは、デンバー副団長が知っていたから、こうして餓死させる為に、閉じ込められました。
「空間収納内に、数年分の食料や水も有るから、餓死しないんだけどね」
灯りも有るし、暇を除けば、俺が夢にまで見た生活に近いかも。いや、暇が問題よ。
「さーてとっ、もう一眠りしようかね」
ベッドに横になり、目を瞑りながら、あの時の事を、思い返してみる。リシュエルを見付けて、喜びの余り、殴りかかった時の事を。
三月二十七日、謁見の間。
「顔面凹めやごらああああああ────っ!!」
ムカつく御尊顔に、魔神化プラス威圧全開プラス御使特攻プラス、魔法を放つ前提の、ぶん殴りを、お見舞いしてやった。
いかにあのリシュエルと言えども、今の俺の拳を受けて、無傷な訳が無いだろう。
そう、思っていた。
ゴガンッと鈍い音を立てて、俺の振るった拳が、見えない何かに阻まれた。
「へっ……」
リシュエルは何故か呆けている。このチャンス、逃す訳にはいかない。薄皮一枚、突破すれば良いだけだ。
「この距離なら、逃げられないだろ……っ、死に晒せっ! "豪炎"っ!!」
超至近距離からの、お手軽魔法発動。
前方に撃ち込んだから、背後のミルン達に被害は出ないし、国王様と王妃様は……生きていたら治療してやろう。
そう思っていたのに、豪炎も何かに阻まれ、その炎がくるっと波の様に、俺に降り注いだ。
「なっ、あ────」
はいっ、おっさん焼き完成です。
誰がおっさんだゴラァっ!?
「お父さんが、焼かれてるの」
「防衛機能の一つかと。あの魔法の威力では、破壊不可。当機と同期させれば、無効化は可能です」
「ドールや、やらんで良いのぢゃ。まったく、アレをリシュエルと勘違いするなぞ、馬鹿な流なのぢゃ」
「貴様等仲間であろう!? アレを止めよ!!」
背後で何か言われているが、俺は絶賛焼かれ中で、息を止めるのに必死だからね。
ようやく炎が収まり、シュウウウウウと身体から煙を放ちながら、一歩前に出る。
流石魔神、火傷一つ無いわ。
「えっと、初めまし────」
「オラァっ!!」
もう一度殴り付けるが、矢張り何か壁の様な物に阻まれ、ギリギリで届かない。
「チッ、何だこの壁っ!?」
攻撃が駄目なのか……それとも、立ち位置が関係してるのか、分からん。
それなら、モノは試しだ。
「えいっ」
「へっ?」
立派な御山に、両手ワキワキ。
見えない壁に阻まれる事無く、俺の手はそのまま、御山に吸い込まれて行きました。
「これはいけるのか……」
「ぃや……」
それなら、このまま豪炎を撃ち込めば、阻まれる事無く、ダメージ通るんじゃね?
「ふぅ、豪────」
「嫌ああああああ──っ!! "ボムズ"っ!!」
「なっ!?」
目の前が急に光ったと思ったら、爆音が耳を襲い、俺はそのまま通路へと、吹っ飛ばされた。
「痛くは無いが、何だ今の魔法。よいしょっと……リシュエルにしては、威力が弱いな」
直ぐに起き上がって、謁見の間に佇む、リシュエルを睨み付ける。
弱体化しているのか、手加減して遊んでいるのかは知らんが、本気でやるか。
「黒姫っ! ドールっ! ミルンを守れっ!」
「なっ、何をする気じゃ御主っ!?」
「了。マテリアルシールド展開。ミルン御嬢様の周囲にて、待機させます」
「お父さんが……キレてるの」
アッジスノード王国には悪いが、このビルごと、あの糞リシュエルを吹き飛ばす。
知覚の精神汚染も、効いて無い様だが、さっきのパイ揉みで、大体理解したわ。
「行くぞリシュエルっ……」
流ダンプカーで、直線上に"移動"して、体当たりから近接ミルン砲で、ぶっ飛ばす。そう思い、全力で駆け出した。
ピンポンパンポーン(上がり調)
レベルががががが……(あ…れ…わる?)
ピンポンパンポーン(下がり調)
「はぁっ? リシュエルのアナウンスっ!?」
アナウンスに意識を取られ、勢いそのままにリシュエルの横を通り過ぎ、そのまま奥の壁を突き破って────どこまでも広がる、青い空に、飛び出してしまった。
「……えぇっと、どうしよう」
某栄養ドリンクを飲めば、翼、生えますか? 売ってませんよねっ、異世界だもん。




