9話 朕を探してヴォイド大陸.4
アッジスノード王国、騎士団長のワニロから聞いた内容を、整理しよう。
ヴォイド大陸には、多くの国が存在しており、アッジスノードの東側に、傭兵国ディヒケン。北と西にを覆う様に、大国であるノブストンと言う国が、あるらしい。
アッジスノード王国は、最南端の国。
長きに渡って、ノブストンの脅威を退けて来たが、それも限界に近いと言う、崖っぷちの小国との事。
「そんな話を、しても良いのか?」
「構わんよ。お二方が首都に行けば、どうせ知られる情報だろうて」
「国が滅亡間際か……長きに渡って、敵を退けて居たのならば、そう易々と負けはしまい。それを何故、限界が来たなどと言う」
「儂が言ったのでは無い。占い師が、王にその事を伝え、王がそれを信じたのだ」
何だそれは? 占いの結果、お前の国はもう保たないよと言われ、それを信じただと?
「この国の王は、馬鹿なのか?」
「馬鹿ではあったが、愚かでは無かったの。いや、先代は賢王であったから、今の王は、平凡な王と言うべきか……」
「成程。だからワニロ殿は、故郷であるこの村へ、帰って来た訳か」
「せめて、故郷だけは護りたくてね。それで死ねるのならば、本望だ」
このワニロという者、本気だな。
騎士団長の位で有るならば、護るべきは王であり、国である筈なのに、この国の王を、見限ったという事だな。
「そんな目を向けないでくれ。何か起きても、副団長の彼ならば、王だけは逃すだろうさ」
「私には、理解出来んな。愚かな王ならば、早々に首を落とし、別の者に王位を継がせるべきだ。国が滅べば、苦しむのは民だぞ」
「アレス殿の国では、そうして来たのかね?」
「そうだ。王はその国の象徴であり、民を導く者。愚王なぞ、存在する価値も無し」
だからこそ、我らは"影"なのだ。
ジアストール王国前王、王妃共々、愚かであった為に、王太子達に手を貸し、今の女王へと、王冠を移した。そうしなければ、内乱で国力が低下し、他国に攻められて、ジアストールは滅んでいただろう。
「王の子供は六人居るが、その全員が、頭の中は御花畑と言ったら、信じるかね?」
「……そうなのか?」
「残念だが、そうなのだ」
「詰んで無いか、この国」
「だから、限界が近いのだろうて」
そうなると、占い師の言った事は、単なる事実であり、占いでも何でも無いのでは? 寧ろその事実を王に伝え、少しでも良くしようと、助言している風にも思える。
「アレス様。お話が続く様でしたら、少し漁を見学してきても、宜しいでしょうか」
「マロン……ワニロ村長、良いだろうか」
「幼い子には、退屈な話であったな。見学ならば、好きにすると良い」
「と言う事だ。村の外には行くな」
「はい。有難う御座います、ワニロ村長」
余程退屈だったのだろう。マロンにしては珍しく、小走りで出て行った。
「済まんな、ワニロ村長」
「構いませんとも。この村には子供が居りませんで、見ていて心が癒されますわい」
「子供が居ない?」
「若い者は、皆村を出て、アッジスノードの首都に居ますからの。あそこなら、魔物にも襲われず、暮らし易いのですよ」
「城壁にでも、囲まれているのか……」
「城壁? 似た様なモノでしょう」
何故城壁と言っただけで、首を傾げたのだ? 私は別に、可笑しな事を言ったつもりは、ないのだが……城壁では無い?
「似た様なモノとは、一体何なのだ?」
「これは、失言でしたな……現存する古代の遺跡を、我等の都市としているのです」
「っ、遺跡を都市にっ……他国から攻められる理由も、そこに有るのか」
「そうでしょうな。聖域の壊れぬ岩も含めて、他国からすれば、脅威なのでしょう。今の世では、解明出来ぬ物で、ありますからな」
これは朗報だ。あのドールという者ならば、その古代の遺跡を調べさせれば、何かに使えるかも知れん。この事を魔神様に伝えに、私も首都へ行くべきか。
「ワニロ殿。済まんが、馬を借りる事は出来るか? 首都に向かいたいのだが」
「それは無理ですな。この村に馬は一体のみしか無く、今先程、王都に向かわせましたので」
「王都から返答があるまで、待てと言う事か?」
「はい。勿論、それまで村に滞在頂いても、徒歩で王都に向かわれても、どちらでも構いません」
馬が居ないのであれば、徒歩で向かうしか無いが、時間を無駄にするのは勘弁だな。それに何故"一体"なのだ? 馬を数えるならば、"一頭"と言うのが普通だろう。
「馬で三月……徒歩なら半年以上か。娘のマロンと相談して、決めさせて貰おう」
「ご随意にどうぞ」
「チッ、余裕だな……」
「いえいえ。年老いた所為で、顔に出ないだけですとも。ごゆっくり滞在下され」
今後の予定をどうするか決める為、ワニロ村長の家を出て、マロンが居るであろう、砂浜の方へと向かう。
「さて、どう動くべきか……悩むぞコレは」
魔神様と合流するには、王都まで向かう必要が有る。ただそれだと、半年以上の期間、この村ないし、移動に時間を取られ、目的である朕野郎を、探す事が出来ない。
「サハロブ・アヒージャ・ノゾ・ルプマンティ。お前は一体、何処に居るんだ……」




