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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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9話 朕を探してヴォイド大陸.3



「アッジスノード王国……その国の騎士団長が、何故村長をしている?」


「見ての通りの、おいぼれですからな。実務は副団長に任せておるし、死ぬ時は故郷でとお願いして、ここに居るのです」


「だからこの様な、一級品ばかりなのか……茶葉も出涸らしでは無く、都度淹れ直しているな」


「分かりますかな?」


 口に含んだだけだが、爽やかな苦味が心地良く、この風味は、出涸らしでは出せまい。


「ずずっ、美味しいです」


 マロンに至っては、普通に飲んでいる。毒は無い様だが……油断は出来んな。


「それは良かった。それでお二方は、国の名も知らぬこの地に、どうやって来たのですかな。国境は封鎖しとる筈ですが……」


 国境を封鎖しているのか? それではまるで、他国と戦争状態では無いか。


「それを答える前に、一つ尋ねたい」


「なんでしょう?」


「国と言うからには、首都があるのだろう。その場所を、教えてくれ」


「首都……王都アッジスノードですな。それでしたら、ここから北へ、馬を使って三月程度かと。徒歩では辛いでしょうな」


 馬で三月……と言う事は、魔神様の乗って行かれた迅号であれば、あっと言う間だろう。


「随分と正直に答えるのだな。私達が、この国に害を為す者であるとは、考え無いのか?」


「そうであるならば、今頃儂達は、殺されておるでしょう。そんな軽装で、あのパラサイトボーンの"巣"を、抜けて来れるのですからの」


「パラサイトボーン? あの海岸沿いに居た、ワームの魔物の名か」


 しかもその魔物の、巣ときたか。どうりで数が、異常に多かった訳だ。


「村の東を抜けるのならば、厚手の衣類が無ければ、彼奴らに襲われますのでな。儂らですら、海岸沿いは歩きませんぞ」


「襲われたら、体の自由を奪われるか……」


「左様です。その上で、子の苗床となり、生きたまま喰われるのです」


「あの砂浜の花は、その魔物避けか?」


「そうですな。別の家屋で栽培しておる花で、ああして砂浜に埋めておけば、パラサイトボーンは来ませんので」


 まさかの屋内栽培とはな。どおりで、花畑が見当たらない訳だ。


「さて、質問には答えましたぞ。次は、儂の問いに答えてくれると、有難いのですが……」


 有耶無耶にするつもりが、無理だったか。

 さて、どう話をしたものか……この地の事に詳しく無い以上、下手な嘘なぞ、直ぐに見破られてしまうだろう。


「そうだな……私達は、あの渦の先から来たと言えば、ワニロ殿は信じるか?」


「渦の……先? 海を越えて来たと?」


「そうだ。サハロブ・アヒージャ・ノゾ・ルプマンティと言う者を探して、この地まで来たのだが、何か知っているか?」


「サハロ? いえ、存じ上げませんな」


「そうか」


 サハロブ・アヒージャ・ノゾ・ルプマンティが、海を渡ったとして、こんな海辺の村に、来る訳が無いか。


「すまないが、周辺の国々について、聞いても良いだろうか」


「この国の事は、聞かなくても良いのかね?」


「騎士団長ともあろう者が、そう易々と、自国の情報は漏らさぬだろう」


「そうですな。首都までの道のりならいざ知らず、内情までは、話せませんで」


 ワニロの鋭い眼光が、私の目に突き刺さる。

 これのどこが御老体だ。

 私達に殺される? とんでも無い。

 この見た目御老体の者は、一国の騎士団のトップで有り、その実力は本物。殺り合えば間違い無く、深傷を負う。


「そのお身体で、現役とは……恐ろしいな」


「はて? 何の事でしょうか」


「隠すのも上手い様だ。良いだろう、交渉だ。我が国の情報と、そちらの持っている情報を、交換で如何か」


「ふむ……それならば、お答えしましょう」


「アレス様、宜しいのですか?」


 マロンが珍しく、不満げな顔で聞いて来たが、こればかりは仕方が無い。

 勿論、機密を喋る事は無い。

 あくまでも、表立った情報のみの交換だ。


「マロンはまだ幼い。これからこう言った事を、少しでも学んでいけば良い」


「はい。頑張ります」


「随分と利口な、娘様ですな」


「ああ、自慢の娘だ」


 こうして、アッジスノード王国、騎士団団長のワニロと、情報交換を行った。

 こちらの話した情報は、以下の通りだ。

 ジアストール王国所属の、元近衛である事。

 帝国の元暫定皇帝、サハロブ・アヒージャ・ノゾ・ルプマンティを探して、魔神様に便乗する形で、この大陸に来た事。

 魔神様は恐らく、アッジスノードの首都に、向かわれたであろう事。


「魔王は知っておりますが、魔神とは、初めて聞きますな。神を冠する存在ですか」


「ああ。魔神様には、敵対しない方が良い。怒らせたら、簡単に国が滅ぶぞ」


「それは……恐ろしいですな」


「本当にな。ふとした拍子に、思いもよらぬ魔法を使うので、歩く災害とも謂れている」


「災害ですか……」


 傍若無人。

 触るな危険。

 歩く災害。

 機嫌が悪い時は、犬人を触らせろ。

 こう言った、魔神様の情報ならば、幾ら提供しても、何の問題も無い。


「さて次は、そちらの情報を貰おうか」


「分かりました。それでは、他国の話を分かる範囲で、御教えしましょう」



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