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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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9話 朕を探してヴォイド大陸.2



 海沿いの崖を下り切った先に、村が見えた。

 長く続く砂浜の上に、幾つもの小屋が建てられており、人の姿も見える。


「しかしあれは……無防備過ぎる村だな」


「柵も堀も無いのは、不用心です」


「あの村の者達が、相当な手練れであれば、柵などは要らんだろうが」


 何か有れば、即戦闘に入るだろうと思い、警戒しながら、村へと近付いて行く。


「何だこの匂いは……」


「アレス様、地面に何か埋まっています」


「これは、花か?」


 しかもこの匂い、世界樹の葉の香りと、どこか似た感じがするな。魔物避けか? しかし何処にも、花畑なぞ見当たらないが……。


「取り敢えず村の者に、話を聞くか」


 そう思い、村へと入った。

 家屋は十戸と小さい村。だからこそ、余所者がそこへ足を踏み入れると、過剰に反応する。

 大陸は違えど、そこは同じらしい。


「アレス様、いかがなさいましょう」


「手を出すのは、攻撃されてからだ」


「畏まりました」


 ぞろぞろと、私とマロンを取り囲む様に、村人達が集まって来る。

 二十人と言ったところか。

 人種が九人、残るは……エイドノア大陸で、見た事の無い獣族だ。ソードファングに似た、顔付きでは有るが、その瞳には知性を宿し、槍を構えている辺り、魔物では無いのだろう。


「この様な辺鄙な村へ、何用ですかな?」


 村人が左右に分かれ、一人の御老体が、ゆっくりと歩いて来る。


「貴方が、ここの村長か?」


「いかにも。このノーブル村の村長をしておる、アリゲーツ族の、ワニロと申す」


「その外見……ワニロ殿は、獣族なのか」


「けものぞく? 知らぬ言葉ですな」


 獣族を知らないと。しかしこの口調、仕草。見た目は魔物に近いが、矢張りこの大陸での、獣族と言ったところか。


「失礼した。私はアレス、こちらは娘のマロンだ。訳あって、旅をしている身でな。出来たら宿を借りたいのだが」


「旅ですか? もしや、"他国"の方ですかな?」


「そうだが、そもそもここは、国なのか?」


「ふぅむ……」


 これは、警戒させてしまったか。

 もしもこの地が、国を成している地ならば、私達は不法入国者となり、騒ぎになるぞ。


「ボソッ(アレス様、殲滅致しますか?)」


「ボソッ(まただ……相手の出方を見る)」


 村長のワニロは、腕を組み、何かを考えている様だが、出来たら、争いは避けたいものだ。


「皆の者、槍を下げよ。それとアレス殿」


「何だ?」


「この村には、宿など無い故、私の家に泊まると良い。色々と、話を聞かせておくれ」


「私達を村に入れて、大丈夫なのか?」


「構わんよ。見た感じ、ディヒケンや、ノブストンの手の者では無さそうだし、儂等に害を成す者には、見えぬでの」


 ディヒケンにノブストンか。恐らく組織か国の名前だろうが、これは有益な情報だ。それにこの村長、村民の一人に目配せをして、何処かに報告に行かせたな。


「ボソッ(追いかけて、消しましょうか?)」


「ボソッ(放置しておけ。恐らくだが、国の偉い者達に、我等の事を報告しにでも、行ったのだろう。荒事になれば、その時に動けば良い)」


「ボソッ(畏まりました)」


「ほれ皆の者っ、仕事に戻らぬか。お二方はこちらへ。村を案内しよう」


 村長の一言で、村人達は解散。浜辺や畑に戻って行き、仕事を再開し始めた。

 誰も文句を言わず、村長の言葉に従うとは、このワニロと言う者、侮れ無い。


「お世話になる、ワニロ殿」


「お世話になります」


 武装は外さずに、そのままワニロの後を付いて行き、ついでにこの村の中で、どの様に生活しているのかを、観察する。

 砂浜から渦までの距離、目測で百メートル。

 漁をするには、不便であろうこの場所で、一体どうやって魚を捕っているのか。


「成程な……渦に巻き込まれた魚は、あの場所から沖に出れず、それを網にかける訳か」


「そうですね。あの渦が、海の巨大な魔物より、我等を護り、恵も与えて下さる」


「陸地の魔物には、襲われ無いのか?」


「浜辺一帯に、魔物避けを撒いておりますので、滅多な事では、襲われませんな。迷宮活性期には、多少の被害は出ますが……」


 魔物避けは、あの花の事だろう。

 それに、迷宮。

 ヴォイド大陸には、エイドノア大陸とは比較になら無い程の数の、迷宮が存在していると、魔神様の報告書に書いてあった。

 活性期とは、迷宮の氾濫の事。


「この近くにも、迷宮は有るのか?」


「それはもう。迷宮なぞ、歩けば当たるモノですからね。ご存知無いのですか?」


「そこまで多いとは、知らなかった」


「ふむ……」


 探り探られると言うこの状況は、私の性に合わ無いのだが、情報を集める為だ。少しばかり我慢して、色々聞き出さねばな。


「ここが私の家ですな。さあ、どうぞ」


 こんな時、あの影が居れば、多少なりとも、情報を聞き出せるのだが、無いモノねだりか。


「お邪魔する」


「失礼致します」


 ワニロの家に入って、驚いた事が有る。

 外から見た家は、御世辞にも綺麗とは言い難い、物置小屋の見た目であったのに、どう言う訳か、家の中は見事なモノ。

 石の床に絨毯が敷かれ、家具なども、何処からどう見ても、一級品の物ばかり。


「とても村の長が、持てる物では無いだろう」


「凄い豪華な物……」


「どうぞ、そちらにお掛け下さい。お茶を淹れて参りますので、少しお待ち下され」


 ワニロが奥の部屋へと、行った事を確認して直ぐ、部屋の中をくまなく散策。出来れば、この村の事だけで無く、国に関する事も、知っておきたい。

 

「ボソッ(アレス様っ、戻って来ます)」


「ボソッ(早いな……)」


「お待たせしました。粗茶ですが、どうぞ」


「ああ、頂こう」


「頂戴します」


 目の前に置かれた茶を飲む、訳が無い。あくまでも、飲んでいる風だ。茶が淹れられたコップに口を付け、少し啜る音を出し、唾を飲む。


「それでは、改めまして……アッジスノード王国騎士団、団長の、ワニロと申します。お二方は何処の国から、来られたのですかな」


「ぶほっ……失礼しました」


 マロンがお茶を吹き出す程に、今の自己紹介は、洒落が効いていると思う。

 この御老体が騎士団長? 今先ほど、村長だと名乗っていた者が、どう言う事だ。



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