9話 朕を探してヴォイド大陸.1
魔神様と別れて、丸一日。
面白い位に、魔物に襲われるが、報告書にあった魔物では無く、別種の魔物の様だ。
「ふんっ! アレス様のご指示です」
地中から突然現れ、マロンを捕食せんと、その牙だらけの口を大きく広げ、襲いかかって来るが、マロンの拳一発で爆散する。
見た感じ、ワーム系の魔物だろうか。
「ふんっ! アレス様のご指示です」
正直言って、敵では無いのだが、マロンばかりが狙われるので、私は暇なのだ。何故この魔物達は、私に向かって来ないのだろうか。
「ふんっ! アレス様のご指示です」
それにしても、マロンは強くなったと思う。
毎日欠かさず、私と模擬戦をしているし、影の下部組織、雲の中であれば、間違い無く一番の実力だろう。
「ふんっ! アレス様のご指示です」
それでもまだまだ、脇が甘いな。
「マロン、全体的に気配を探れ。見えてから攻撃では無く、見える前に動いて、相手に攻撃する隙を与えるな」
「ふんっ! 分かりましたっ」
こうして、マロンの訓練をしつつ、海沿いを歩いているが、本当に何も無い。
歩けど歩けど、魔物しか来ない。
「ふぅ……アレス様、殲滅完了しました」
「ああ。魔石を抜き取り次第、先へ進むぞ」
「畏まりました」
もしこのまま、食えそうに無い魔物ばかりと遭遇するならば、長期の探索は無理……か。
「せめて、ソードファングとやらが来てくれれば、腹も満たせるのだがな……」
生息域が違うのか、姿を現さない。
流石の私でも、ワーム系の魔物を食べるのは、危険過ぎて無理だな。
「アレス様。魔物の死骸の中に、小さな粒々が有るのですが、コレは何でしょうか?」
「矢張りか……絶対に口にするな。ワーム系の魔物は、色々と寄生され易いからな。他の魔物の卵だろう」
「分かりました。アレス様に従います」
このまま崖に沿って進むか、少し陸地寄りを進むか、悩む所ではある。
左手は崖となっており、その下は海。しかも渦の所為で、落ちたら私でも、助からないであろう、荒れた海だ。
釣り糸を垂らしても、魚は捕れまい。
「アレス様、終わりました」
「良し、先へ進むぞ」
「はい」
魔物の情報を紙に記しながら、またひたすら崖に沿って、真っ直ぐ進む。緩やかな下りになっているので、若しかしたら、砂浜が有るかも知れない。
「マロン。周囲への警戒を、怠るなよ」
「畏まりました」
そうしてまた、歩く事一日。変わり映えしない風景に、内陸地へ行こうかと本気で考えたその時、マロンが突然倒れた。
「マロンっ!」
「アレス様……体が動きませんっ」
直ぐ様体温を確認し、服をめくって、体に異常が無いかどうかを探る。
頭、顔、胸、腕、腹、脚には、異常は無し。背中や尻にも、異常は見られない。そして、目線を少し上にした時、その異常を発見した。
「っ、コレかっ!」
首の後ろの、小さな穴。
「虫系の魔物っ、少し切るぞ。我慢しろ」
「はい……っ、ぎっ!?」
穴を少し切り、確認する。
「あのワームの子供? あのワーム自体も、寄生するタイプだったのか……」
小さな小さな、幼虫みたいなモノが、マロンの中へゆっくりと、入ろうとしていた。
「……火だな」
皮袋から、火打石を取り出し、木屑を集めて直ぐに火を付け、ナイフを炙って、それをマロンの首の穴に、慎重に刺し込む。
「ぎぃっっっ」
「動くなマロンっ!」
ただでさえ、首の奥へと、魔物が入り込もうとしているのだ。少しでも手元が狂うと、首の神経を傷付けかねない。
「虫は取れたか……後はコレで」
世界樹の葉を擦り潰し、傷口へ塗り込むと、一瞬マロンが光り輝いた。
首の後ろには、小さな穴どころか、傷痕一つ残っておらず、少しだけ安心する。
「マロン。手足が動くか、確認しろ」
「はいっ……大丈夫そうです」
マロンはゆっくりと立ち上がり、血を流した所為か、多少ふらつくものの、問題無く動けている様だ。
「今のワーム、いつマロンに寄生した……」
マロンは攻撃を、全て避けていたし、寄生されるタイミングも無かった筈。マロンばかりが狙われている事と、関係があるのか。
「マロンに無くて、私に有るモノ……まさか、世界樹の葉? コレのお陰で、魔物が私に寄って来ないのか?」
マロンの分も、私が預かっていたが、確認の為に渡しておくか。コレでマロンが襲われ無ければ、最低でもこの一帯では、世界樹の葉を手放せなくなる。
「マロン。世界樹の葉は残り五枚。念の為四枚は、マロンが持っておけ」
「宜しいのですか?」
「構わん。ちょっとした実験だ」
「アレス様に従います。お見苦しいモノをお見せして、申し訳御座いません」
「気にするな。私とて、同じ目に遭うやも知れんのだ。その時は頼むぞ」
「はいっ」
せっかく焚火をしてるのだからと、軽くお昼を済ませ、手に付いていた世界樹の残りを、水に溶かして、マロンに飲ませる。
「少しばかり、ヴォイド大陸を舐めていたか。少し休んだら、先へ進むぞ」
「はいっ、アレス様に従います」
そうしてまた、歩く事一日。とうとうヴォイド大陸で、村を発見したのであった。
前に調査をした影は、長期に渡り、何も発見出来ずに居たが、それは進む方向を、間違えていたのだろう。
「三日で村を見つけたか……」
「小さな漁村の様ですね」
「そうだな、宿が有ると良いが」




