8話 セーフアース開拓事業.3
移住希望者大歓迎っ!
沢山の魔物と触れ合いながら、新たな地で、一歩を踏み出しませんか?
山有り、海有り、花畑有りの、壮大な自然に囲まれ、身も心もリフレッシュっ!
未経験大歓迎。
農業経験者優遇。
必須条件、魔物に偏見の無い方。
移住の御相談は、役場の窓口まで、是非っ!
なんて書かれた紙を、冒険者ギルド、商業ギルドの壁に、ぺたぺたと貼り進め、今は役場の窓口に、ぺたぺたと貼っている。
「なんだか、色々とぼかしてる内容だけど、嘘は書いてないから、タチが悪いの」
しかもこの内容、以前パパが作っていた、メイド募集の内容を変えて作ったから、物凄く違和感の有る、移住者募集の内容なの。
「領主の印が無かったら、犯罪者募集の求人にしか、見えない……ぺたぺた」
「あのぉ、ミユン御嬢様? さっきから何をぺたぺたと、貼って居られるのですか?」
「移住希望者募集の、貼り紙だよ?」
「いやっ、それは見たら、分かるのですがぁ」
この人は……誰だっけ? 確かこの役場で、一番偉い立場の人の筈なんだけど、名前が全く思い出せないの。
「貼ったら駄目?」
「ええっと、一応私が、ヘラクレス様に代わって、この役場のトップな訳でして……」
「ふーん。ぺたぺた」
「その貼り紙には、"御相談は役場まで"と書いてありますが、移住希望者の窓口は、業務が手一杯で御座いますからっ」
「そうなの? ぺたぺた」
「一旦それを貼るのを、止めて頂きたく……」
そんな事を言われても、既に冒険者ギルドと商業ギルドに、百枚は貼ってるの。
「時既に遅しっ」
「えぇぇぇ……ただでさえ、ファンガーデンの移住希望者が、多いんですよ?」
「そんな事言われても、領主代行のドゥシャの指示だし、やるしかないよ?」
「ドゥシャ様の指示っ!? 更に厄介な……」
「ミユンもお手伝いするから、頑張ってっ」
「はぃ……今日も残業かぁ……」
こうして、役場に急遽窓口を増設して、貼り紙をぺたぺたした次の日────役場の状況を確認しに来たら、凄い事になっていた。
『移住希望者の方ですね。こちらの内容に同意が得られましたら、サインをお願いします』
『私共も、ここに書かれている内容しか、知り得ません。それを踏まえた上で……はい? 問題無い?』
『エトワルちゃんですか? あぁ──、居るかも知れませんね。他の魔物? そこまでは私も、存じ上げておりません』
『次の方どうぞーっ』
並んでいるのは、全員が人種。犬人や猫人と言った、獣族は並んでおらず、なんとも奇妙な光景が、そこにはあった。
「なあにこれ?」
しかも何故か、皆一様に笑みを浮かべ、涎を垂らし、パパより気持ち悪い。
『ボソッ(エトワルちゃん、はぁはぁ。あの羽毛で癒されたいっ)』
『楽園だ……僕は楽園に行くんだっ』
『魔物と触れ合えるなんて、最高だなぁ』
『オーガのお姉様は、居るのかしらぁ』
『嫁に欲しい嫁に欲しい嫁に欲しい嫁に欲しい』
聞こえて来るのは、そんな声ばかり。
正直言って、こんなヤバい人達に、二次面談をしたく無いと言うか、セーフアースに住わせたく無い。
「二次面談も、役場の人に任せるのっ」
そう決めて、そっと役場から出ようとしたら、『あちらのミユン御嬢様が、二次面談を行います』と、受付の女性の一言で、その場に居たヤバい人達に、一瞬にして囲まれた。
「ぼっ、僕を楽園へ連れて行ってぇっ!」
「何処にっ、何処にエトワルちゃんが居るのですかっ! 会わせて下さいっ!」
「嫁が欲しい嫁が欲しいっ、魔物の嫁がっ! 欲しいんですっ! 連れてってっ!」
「あらっ、御領主様の娘様だわ」
「魔物と触れ合って、友達になりたいのですっ」
これは、狂気の眼差しなの。ここで下手に駄目だと言えば、ミユンをどこまでも、追いかけて来そうな気がする。
「一次面談を終えた人は、別室に集合っ! これから二次面談を行うのっ!」
「「「ヒャッハアアアアアア──!!」」」
「怖っ!? この人達怖い!」
男女関係無く、急にヒャッハー族に早変わりして、群れを成して部屋に行ったの。
パパ以上の……変態の群れっ。
別室に行く前に、役場内を見回して、柱の影にでこっちを伺っている、役場のトップを発見した。
近寄ろうとすると、ササっと柱の影から奥へとひっこんだが、逃す訳にはいかない。
「あの集団を、ミユンだけで面談は嫌っ。捕まえて……道連れにするのおおおおおおっ!」
石と木で作られた、役場の中には、ミユンから逃げられる場所なんて、ある訳も無し。
ものの数分で、役場のトップを捕まえて、二次面談のお部屋へと、引き摺って行った。
「妻と娘が待ってるんですっ! 今日だけはっ、今日だけは帰らせてええええええっ!」
「パパッと面談して、終わらせるの。ボーナスあげるから、頑張ってっ!」
「嫌だああああああ────っ!!」
こうして、パパよりも変態な人達が集結して、セーフアースの情報を伝え、アルカディアス経由の海路で来る様、指示をだした。
二次面談?
魔物の事以外は、そこそこ能力が高そうだったので、そのまま採用しました。
「ある意味で……魔物の天敵なの……」




