8話 セーフアース開拓事業.2
セーフアースでは、魔物達がお互いを餌と認識している程に、お肉が足りていない。海側では、人魚達がお魚の養殖場を作っているが、それだけでは駄目なのだ。
世界樹の根っこから、十分程北に歩いた所に、コカトリス専用の小屋が有る。
御披露目パーティー前に、パパ自ら、簡易小屋を作り替えた、渾身の小屋。
「……パパは建築には向いて無いの。モクメ、コカトリスの数は増えた?」
「トドコオリナク」
「良かったの。それなら、小屋を拡張しても、問題無いよね」
「ハンショクコヤ、ショクニクコヤ、タマゴヲウムコヤト、ワケラレテハイカガデショウ」
「ナイスな提案っ、採用します」
ウッドドールのモクメは、魔物達の管理者兼コカトリスの養鶏場で、しっかりお仕事をしてくれるから、助かるの。
ハーピィ達や、蛇女達に任せてしまうと、数刻も経たない内に、コカトリスが全滅します。
「せめて、モクメ並みに賢い魔物が居れば、楽になるんだけどなぁ」
「エトワルナラバ、シンヨウデキマスガ?」
「でも、教えた事、直ぐに忘れちゃうの」
「ハナセルダケデモ、スゴイコトデスヨ」
そこは否定出来無い。
魔物達は本来、自分達の仲間としか、意思疎通が出来ないのに、エトワルはちゃんと喋れてるし、他の魔物達も、そこそこ喋れる。
「それでも、養鶏を任せるのは先なの。お肉をお金で買う事を、覚えさせないと、本能でパクってなっちゃうから」
「デスガ、ココガオオキクナルト、サスガノワタシデモ、テガマワリマセンヨ」
「近いうちに、ファンガーデンからの応援を寄越すから、今はお願いします」
「カシコマリマシタ」
応援と言うより、移住者だけどね。世の中は広いなぁ……と、思ったの。
パパも相当変わり者だけど、パパ以上の変態達が居るなんて、思いもしなかった。
「怖かったなぁ……」
あまり思い出したく無い記憶なのに、濃過ぎて、頭から離れず、忘れる事が出来ません。
三月十八日、朝六時。パパ達を見送った後、その事を報告する為に、一度ファンガーデンの領主館へと戻った。
「ドゥシャ。パパの出発を、見届けたの」
「報告、有り難う御座います。ドーツ。至急この手紙を、機動部隊のニックへ」
「了。承りました奥様。速達ですか?」
「そうです。影にも報告させますが、表立っての報告も、必要ですので」
「了。行って参ります」
やっぱりドゥシャは、抜け目無いの。
ヴォイド大陸の情報は、一般にはまだ公にはされていないけど、それも時間の問題なの。
「あの時居た、他の貴族対策?」
「その通りに御座います。故意に情報を、漏らすとは思えませんが、何かの拍子に、口に出てしまう事も御座いますので」
「そこは、精霊達と変わらないの」
寧ろ、そこに関してだけは、精霊達の方が、人種よりも酷いかも知れない。
特に、風の精霊。
口が軽く、噂話が大好きで、三度の御飯よりも、お喋りを優先する、困った精霊。
「それで、これからミユン御嬢様は、セーフアースの開拓ですか?」
「もちっ! ミルンお姉ちゃんが居ない間に、出来るところまでやるの」
「左様で御座いますか。それで御座いましたら、一つお願いしても、宜しいでしょうか」
「なあに?」
「セーフアースを、人種、獣族問わず、暮らせる環境に、して頂きたく存じます」
中々難しい事を、しれっとお願いして来る辺り、やっぱりドゥシャは侮れないの。
「魔物達の、楽園にしちゃあ駄目?」
「駄目とは申しませんが、流様の"領土"となった地に、魔物だけと言うのは、不味い事かと」
「それは……確かにそうなの」
セーフアースの存在が明るみになり、そこが魔物の地だとなれば、一般の人達からしたら、恐怖の対象になりかねない。
そこに付け込んで、他の貴族が動くかも知れないし、内乱のきっかけにされるかも。
「魔物に友好的な人達を、住わせれば良い。だけなんだけど、難題なの……」
「ですが、それが叶いませんと、いざと言う時に、対処が難しくなりますので」
「ぬぅ。いっその事、セーフアースの存在を公表して、移住者を募るのは駄目?」
「それは……」
機密情報を、大々的に公表して、魔物と一緒に暮らせそうな人を、募集するの。
そんな人、パパ以外に居ないと思うけど、例外は何処にでも居る筈。
「パパの様に、ハーピィ大好きと迄はいかないにしても、魔物に忌避感を持たない人も、少なからず居る筈なの」
「成程……移住希望者の、選定に御座いますね」
「そう。下手に人が来て、魔物達をヒャッハーなんてされたら、パパがブチ切れちゃうの」
「想像に難く無い、状況に御座います」
「でしょ? パパがブチ切れたら、ドーツの自爆よりも、遥かに厄介っ」
ハーピィ達がヒャッハーされたら、パパは恐らく、魔法でチュドンするの。そうなったら、セーフアースの地形が変わっちゃう。
「分かりました。一部情報を開示して、役場、冒険者ギルド、商業ギルドに、移住希望者の募集をかけましょう」
「それが賢明なの」
「移住希望者の面談は、ミユン御嬢様にお任せしても、宜しいでしょうか?」
「勿論なの。しっかり見定めて、魔物達に優しい人を、選んでみせるの」
そんな人が、見つかればだけど……。




