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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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7話 笑顔でニコニコご挨拶.10



 ここ数日、ミルンと黒姫、ドールを伴い、アッジスノード王国を見て回った。そして思った事は、古代の遺物をなんとか動かし、質素に暮らしている、小国と言う事だ。


 国の防衛は、あの壁の上の大砲と、デンバー副団長率いる、騎兵の部隊が九つ程。

 大砲が強力なのと、剣や槍、ボーガンや魔法が使える騎兵達で、他国をなんとか退け、国を保っている状況らしい。


 吹けば飛ぶ国、アッジスノード王国。

 間違い無いだろう。

 

 そして今日、三月二十七日。デンバー副団長と、オースターの働きによって、この吹けば飛ぶアッジスノード王国の、チャッフ・デフレイヤ・ルボワ・ノル・ポメラリオン国王陛下に、謁見する事となった。


 それは良いんだけど、何だろうな……。


「なぁ、デンバー副団長……」


「何だ」


 一段一段、階段を上がって行く。


「ここに来てから、ずっと疑問なんだけどさ」


「何だと聞いている」


 一段一段、階段を上がって行く。


「何でエレベーター、動かないんだ?」


「何だそれは?」


 これだよまったく。

 このアッジスノード王国の奴等は、古代遺物を扱い切れておらず、昇降機すら使わずに、えっちらおっちら、最上階の王の間まで、階段で上がらなければならない。

 そう、この国にはお城が無く、このアッジスノード王国で一番高い、十五階建ての高層ビルが、城の役割を担っている。

 王様の足腰、絶対に鍛えられるよね。

 

「長い階段は、良い運動です」


「我は疲れたのぢゃ。飛んで良いかのぅ?」


「駄目っ。黒姫は運動不足なの」


「そうでも無いのぢゃが……」


 まったく持って、ミルンの言う通りだ。

 大人バージョンの時でさえ、下っ腹がふっくらして来たんだから、少しばかり運動しないと、常時でぶドラになるだろう。


「と言っても、俺も油断出来ないか……」


 この異世界に来てからは、糖分を摂る事が殆ど無くなり、腹筋が割れたのよ。でもね、今のファンガーデンには、糖分旨しな食べ物が溢れてるから、気を抜くとヤバい。


「偶には、全力で走るか」


 あと十階分の階段でも、良い運動になるだろうし、丁度良いかな。


「流。流石にここでは、不味いと判断致します」


「チッ、勘が良いな、ドール」


「奥様より、流を見張る様にと、命令されておりますので。止めさせて頂きました」


「ドゥシャさんっ……」


 ミルンとの競争は、また後日だな。

 

「ボソッ(ドール。頼むから、その黒子頭巾取れない様に、気を付けろよ)」


「了。ジャストサイズに御座います」


「……声デカくね?」


 ドールの顔面水晶を隠す為、黒子風の頭巾を被って貰い、メイド黒子ロボと言う、属性過多な姿に、なって貰っている。

 デンバー副団長も含め、この国の人達に、水晶の顔面なんて、見せれる訳が無い。


「静かにせんかっ。今から王に、拝謁を賜る身であるのだぞ。貴族らしく振る舞えっ」


「だから正装してんじゃん。口調だって、王様の前ならちゃんとするから、大丈夫だって」


「貴様と話しておると、頭が痛くなって来るぞ」


「そりゃ危ない。薬なら有るぞ? 飲むか?」


「要らぬっ」


 こうして、話をしながら上がると、階段も苦にならないし、あっと言う間に到着だ。


「社長室っぽい扉の前に、鎧の護衛が居るのって、場違い過ぎるよなぁ」


「それは我等も同じぢゃろうに」


「俺は軍服コーデだから、そこまで場違いには見えんだろ? ミルンと黒姫は私服だし、鎧が可笑しいんだっての」


「鎧脱がす? 剥ぎ取る?」


「ここでやったら、また逃げなきゃだから、剥ぎ取りは無しな」


 デンバー副団長は、扉の前に居る護衛に、何か耳打ちをして直ぐ、その護衛達によって、扉が開けられた。

 こんなビルの最上階で、〇〇様おなーりーとか、言われずに済んで、ほっとしたのは、気の所為じゃ無いだろう。

 そんな事を思いながらも、敢えて目線は下げず、赤い絨毯が敷かれた先を見て、目線を逸らし、また先を見て、驚愕した。


「ミルン、黒姫、ドール。俺の見間違いじゃ無ければ良いんだけど……アレが、国王だよな?」


「了。座られている椅子からも、国王である確率、九十七パーセント」


「この国の王は、丸々しとるのぅ」


「あごタプタプしてるの。触りたいっ」


 スポーツ漫画の金字塔、某バスケ漫画や、殺伐とほのぼのが両立した、某殺し屋漫画に出て来そうな、立派な顎肉をタプタプさせた男が、ちっさい王冠を頭に乗せ、ぼてんっと椅子に、挟まっているでは無いか。


「何をしている。王がお待ちなのだ、さっさと入って、挨拶をするのだ」


「あっ、ああ……」


「お父さん。あのあご、タプタプして良い?」


「やったら失礼だから、駄目だぞ。王様本人が許可したなら、オーケーだ」


「あとで聞いてみますっ」


 それでも失礼だけどね。

 国王の前まで進み、わざと跪かず、真正面から、アッジスノード王国の国王を見る。

 隣には王妃だろうか。それと、フードで顔を隠す様にしている、変な奴も居る。

 さて問題。何故俺は、立ったままなのか。

 答えは簡単、対等だからだ。


「お初お目にかかる、チャッフ・デフレイヤ・ルボワ・ノル・ポメラリオン国王。私は、ジアストール王国女王、ルルシアヌ・ジィル・ジアストールが名代、小々波流と言う者だ」


「きっ、貴様王に向かって無『デンバーよ。気にせんで良い良い』っ、ははあっ!!」


 ほぅほぅ、部下を止めるか、この国王様は。


「部下の非礼、謝罪しよう。僕がこの、アッジスノード王国国王、チャッフ・デフレイヤ・ルボワ・ノル・ポメラリオンである。良くぞ参られた、彼の地の者よ」


 彼の地の者? この国王様は、エイドノア大陸の事を、知っているのか。デンバー副団長が知らないと言う事は、機密扱い?


「取り繕う必要は無いか。国王様は、俺達が何処から来たのか、知ってるのか?」


「勿論、知っているとも。と言いたいけども、知ったのは少し前だね。ここに居る彼女が、彼の地の者来たれりと、"占った"からさ」


「占った?」


 彼の地とは何処なのか、国王が言わない辺り、どうにも胡散臭い話だわな。

 ローブ姿の占い師、何者だよ。


「俺等が来るのが分かってたって、そんなもん、予言みたいなモノじゃん」


「そう、予言だね。彼女のお陰で、水害から民を守れたし、聖域の破壊も知ったんだ。彼女はね、御主の事も、予言したんだよ」


「俺の事? 初対面なのに、変な話だな」


「ここに呼んだ理由もね、彼女がどうしても、御主と話がしたいと、言ったからなんだ」


「なんじゃそりゃ……」


「ほらっ、折角呼んだのだから、挨拶なさい」


 国王に言われて、一歩前に出て来た、フードを被った変な奴。そのフードに手がかれられ、その顔がハッキリと見えた。その瞬間、俺は怒りのままに、飛び出していた。


「初めま────」


 肩まで伸びた、ふわふわな金髪。

 若干垂れ目気味の、優しい瞳。

 口元に微笑みを浮かべ、全体的に、ボーッとした雰囲気を醸し出す、俺の殴りたいランキング、ナンバーワンの存在。

 目の前に、あの"リシュエル"が居た。



「顔面凹めやごらああああああ────っ!!」



 魔神化プラス威圧全開プラス御使特攻プラス、魔法を放つ前提のぶん殴り。

 魔神の全力を、振り抜いた。


 俺の顔? 勿論、笑顔に決まってるじゃん。

 リシュエルには、良い挨拶だろ。



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