7話 笑顔でニコニコご挨拶.9
「そうそう、海の向こうから来た。こう見えて、結構良い都市の、領主様だぞ?」
「貴様が……貴族や領主? 笑えぬ戯言だな。よしんばそれが、事実だとしてもだ、貴様の様な化物の巣窟であろう」
「んな訳あるか」
「だが、スパイでは無さそうだな」
どうやらやっと、スパイでは無い事は、理解して貰えた様だ。もしも俺がスパイなら、こうしてお高い薬を使ってまで、デンバー副団長を、治す訳が無いからね。感謝して欲しいぜ。
「……疑いが晴れた訳では無い。妙な真似をすれば、その首を必ず、落としてやるぞ」
「縛られてんのに、態度がデカいな。呆れるを通り越して、感心するわ」
「デンバー副団長は、疑り深い性格ですので。それで、何故我が国へ来られたのですか?」
何故アッジスノード王国に来たのかと言う、オースターからの質問だが、何と答えるべきか。ここは素直に、ありのままを伝えるかね。
「んな事知るか。言ったろ、調査に来たって。あっちの方角から、真っ直ぐ来ただけだ」
そもそも、人が居るのかすら知らなかったのに、大砲撃たれて、捕まえられてと、踏んだり蹴ったりだわ。
「聖域の方角……成程。アッジスノード王国とは知らずに、入って来たのですね」
「そうだ。方法は言えんが、あの渦の先にある陸地から、ヒョイっと"飛んで"、真っ直ぐな」
「飛んで渦を越えたと」
「飛んでなどと、馬鹿らしいっ」
デンバー副団長は、信じて無いな。
「疑うのなら、俺達が帰る時にでも、誰か付いて来ると良いさ」
「それは……王が何と言うかですね」
「そりゃそうだ。でもこれで、俺達に敵意が無い事は、分かってくれただろ。そもそも敵だったら、貴重な薬使って、お前等を治すなんて事、しないだろうからな」
「そこは理解しました。貴方達の事は、一度王に報告させて貰います」
それなぁ、報告されて、やっぱ処刑ねっ! 何て事に、ならなきゃ良いんだけど。
「けぷっ。お話終わった?」
「ようやく起きたか。ミルン、この人達に、ちゃんと挨拶しなさいな」
「かしこまっ。ミルンです。さっきは玉を潰して、御免なさい……じゅるっ」
「うひっ、えっ、えぇ。ノッド・オースターと申します。宜しくお願いしますね……」
怯えながらも、しっかり股間を押さえて、トラウマになっちゃったかな。
「我は黒姫じゃ。誇り高き最古の龍であるからして、平伏するが良いぞ」
地面に寝そべりながら、偉そうに足で挨拶をするのは、誇り高き龍がする事では無い。
「ボソッ(最古の……龍? いやっ、そんなまさか。しかし、文献の特徴と……)」
「どうしたんだオースター? 黒姫の事、知ってんのか?」
「いえっ……何でもありません」
黒姫が龍と言った途端に、デンバー副団長、ペペルーノ、オースターの三人の顔色が変わり、今にも下呂を吐きそうに見える。
「ボソッ(なぁ黒姫。お前さ、以前にこの大陸に来た時に、暴れたりでもしたのか?)」
「ボソッ(何ぞ急に。そんなのいちいち、覚えとらぬぞ。封印の所為で、色々忘れとるしのぅ)」
いちいち覚えてられない程、色んな場所で、暴れ散らしていた訳か。黒姫の事だから、ノリと勢いで国滅ぼしてても、違和感無いな。
「で、オースターさんとやら。俺達の疑いは、晴れた訳じゃあ無さそうだけど、入国して良い感じなのか?」
「構いません、死罪も取り消します。が、少なくとも、王の許可を頂くまでは、軟禁させて頂きます。ご辛抱頂けますか?」
「危害を加えられず、監視付きでも良いから、出歩かせろ。じゃないと、このミルンがストレスで、暴れまくるからな」
「お前の玉をっ、丸齧りっ」
「……分かりました。それにしても、ワンブルの子供が、人間に懐くなんて、珍しいですね」
ワンブルの子供? ヴォイド大陸だと、そんなアニマルな呼び方なのか。
「こっちだと、犬人族って呼ばれてんだけど、やっぱり呼び方変わるのな」
「犬人族ですか……変わった種族名ですね」
「そこらへんも、確認しないとだ」
言語は同じっぽいけど、物の言い方が違ったりすると、色々と面倒が起きそうだし。
「そう言う訳で、デンバー副団長。彼等を我が国へ招き入れる事、許可願いますでしょうか」
「……許可する。しかしだ、勝手な真似はするなよ。王の命があるまで、大人しく待っておれ」
「へいへい、大人しく待ってるよ」
こうして俺達は、デンバー副団長に連れられて、無事、アッジスノード王国へと、入国する事が出来た。
ドールはどうしたって?
あの穴から、正面に向かって左に直進したら、迅号共々燃料切れの状態で、発見された。
「ミルンが正解だった訳だな」
「黒姫は、方向う◯ちっ」
「ぬぐぅっ、誰がう◯ちぢゃっ!」
因みに、このアッジスノード王国には、宿屋と言うモノが無かった為、高層ビルのワンフロアを、監視付きで貸して貰えたんだけど……ミルンがはしゃぎまくって、壁に穴を開けたのは、許して欲しい。
そうして、アッジスノード王国内で、のんびりした数日間を過ごし、三月二十七日。とうとう、王様に謁見する事となったのである。




