7話 笑顔でニコニコご挨拶.8
破魔の盾を空間収納に戻して、ゆっくりと立ち上がり、デンバー副団長の顔を見る。
若干俺の事、怖がってるよね。
「えー当方としては、その様な争いで無くっ、話し合いでーっ、お互いに理解を深めあいたく存じますがーっ、如何で御座いましょう」
満面の笑みで、副団長に御提案。
「きっ、貴様……っ、そのデーモンの如き笑顔を止めよっ! 私を揶揄っておるのかっ!」
おかしいな……日本だと、この満面の笑みを使えば、商談が円滑に進んだのに……。
「なあミルン。この笑顔って、怖いかな?」
「尻尾を撫でて来る時より、マシな顔っ」
「それでも、気持ち悪いのぢゃ」
「そんなに酷いの? ちょっとショック」
「っ、押し潰されよっ!!」
目を離したのを、隙だと思ったのか、マッスルホースのゴーレムで、突撃をかまして来た。
俺に対しては、愚策だわな。
「知覚で見えてますよっと、"空間収納"」
貴重なゴーレムは、俺の遊び道具として、しっかり有効活用させて貰おう。
「────むっ!?」
おぉーっ、凄え身体能力だ。
空間収納で、マッスルホースのゴーレムを頂いて、デンバー副団長は、空中に投げ出されたのに、そのまま綺麗に受け身を取って、勢いで立ち上がったぞ。
「拍手でも贈ろうか?」
「くっ、我が愛馬を何処にやったっ!」
「えっ……馬のお人形が恋人?」
「馬鹿にしおってええええええっ!!」
近距離での、ボーガンの連続射出。普通なら、穴ボコだらけで死んじゃうぞ。
「学習しないねぇ……幾らやっても、チクチクするだけって、ちゃんと言っただろ?」
「何故矢が刺さらぬっ!?」
「いやぁ……何ででしょう?」
防ステさんが、仕事してますから。
「そろそろさ、話を聞いてくれっての」
「スパイの話なぞ、聞いて溜まるかっ!」
「スパイじゃ、無いんだけどなぁ」
チラッと横目で、ミルンの状況を確認。
少し離れた場所で、白目を向いて倒れているオースターの股間に、何度も何度も何度も、可愛いパンチを打っている。
オースター君、一瞬で負けたのね。
「ほれぇ、ちゃんと残さず食べるのじゃぁ。御主等が汚した、鍋なのじゃぞぉ」
「もあああっ!? 熱っ、苦いっ! 止めてええええええ──っ!!」
「これを食わねば、ほれっ。鍋の具材になった矢を、このまま食わせるぞぇ?」
黒姫は大きくなって、ペペルーノの首根っこを掴んで、楽しそうに鍋を食わせている。
「なぁ、デンバー副団長。これって、どこからどう見ても、俺等の勝ちだよな?」
「チッ、子供に化けた、化物であったか」
「化ける魔物が居んのかよ。そこの角生えた奴は置いといても、あそこのケモ耳は、本当に十歳児だぞ。化物扱いすんなよな」
「オースターを一蹴する十歳児などっ、居てたまるものかっ!」
あそこに居るんだけどなぁ。現実から目を逸らすなんて、どうかと思います。
「んーっ、マジで話を聞いてくん無いと、俺もそろそろ、我慢の限界よ?」
「私をっ、舐めるなっ!!」
デンバー副団長が、俺に手の平を向けた。
奥の手の何かだろうが、そんなの使わす暇なんて、与える訳無いだろ。
「取り敢えず、寝とけ」
角をニョキっと、甲冑姿に早変わりして、魔神化流さんの、御降臨です。
「なっ……角っ、魔王だとっ!?」
「へぇー、こんくらいの威圧には、耐えれるんだな。そんじゃ、攻めるぞ?」
「ぐぅっ、ライトニン『流ダンプカーっ!!』ぐしゅびっ!?」
俺の俊敏性と、防御力の高さの成せる技。
ヒュンヒュンヒュンと、空中で回転し続けたデンバー副団長は、少しして地面に落ち、泡を吹きながら、失神した。
「ふぅ……魔神化解除っと」
角がボトっと抜けたので、空間収納に保管。
毎回毎回、角が抜けると、悲しい気持ちになるのは、何なんだろうか。
「ミルーン。もう良いから、そいつをこっちに持って来てくれーっ。治療するからなーっ」
「かしこまっ!」
「黒姫は……全部食わせたの?」
「当たり前じゃ。飯を粗末に扱う輩は、許しておけぬしのぅ。ほれ流。早う新たに作って、我に献上するのじゃ」
大人バージョンの黒姫は、御山が立派でエロいんだけど、可愛さが無いんだよなぁ。ぷにっと姿の方が、愛嬌があって良い。
「そんじゃ、ご飯の続きだな」
新たに鍋を作っている最中に、白目全開の三人を治療して、完成しました豚塩鍋。
「動いた後だから、お塩が旨しっ」
「流石、アルカディアスの高級塩。塩なのに旨味増し増しで、いくらでも食べれるな」
「流や。酒は飲まんのかや?」
「酒? 少しだけだぞ」
そうして、"デンバー副団長が"目を覚ます頃には、腹がパンパンのミルンと、酔いが回った黒姫が、地面に横たわっていた。
「ぐっ、うぅっ、何だ……何処だここは……」
「よっ、デンバー副団長。ようやく起きたか」
「っ、貴様っ!?」
後ろ手に親指を括って、両足も縛ってるから、どんなに暴れても、無駄ですよ?
「オースターとスパンキンをよくもっ! 必ず報いをっ、受けさせてやるっ!」
報いって、二人共死んで無いんだけど。
「デンバー副団長、後ろ見てみ」
「後ろだと……」
デンバー副団長が、くるっと横回転。そこには、美味しそうに鍋をつつく、二人の姿がありましたとさ。めでたしめでたし。
「あっ、でぇんびゃーふぐだんっ、んぐっ。デンバー副団長、起きられたのですね」
「熱っ、心配しましたわよ、副団長」
「きっ、貴殿等はっ、何をしておるかあっ!!」
デンバー副団長が起きる、結構前に目を覚ました二人には、お詫びに鍋を進呈しました。
オースター君なんて、世界樹濃厚エキスを一滴どころか、真っ赤な股間にドバドバかけなきゃ、完治しなかったんだ。
「デンバー副団長。少しばかり、彼から話を聞きましたが、どうやら、スパイでは無さそうです」
「なっ、何を言うオースターっ! 敵から情けを受けっ、寝返ったのかっ!」
「違います。そもそもスパイであれば、あの時、我が国の民を見捨てて、そのまま逃げる事が出来た筈。それなのに彼は、無抵抗のままに、捕まったのですよ」
「っ、それは……」
本当にそれな。
迅号で突撃かましたのは、悪かったと反省しているが、それだって、大砲撃たれたから、ミルンが怒った訳だし。
「言っておくが、デンバー副団長。あの壁に穴を開けたのは、魔物じゃ無いぞ」
「矢張り貴様っ、何か知っておるのかっ!」
「アレは……"空間収納"っと、このゴーレムと、似た様なモノだ。お前等が大砲撃って来たから、突撃をかました」
「あっ、アレがゴーレムだとっ……馬鹿なっ」
ここは敢えて、事実を言う。
今回は、何処からどう見ても正当防衛だし、死者は出ていないんだから、こっちが正義だ。
「コホンッ。改めまして……俺の名前は、小々波流。海の向こうから来た、なんちゃって貴族であり、調査員だ。宜しく、デンバー副団長」
しっかりと、満面の笑みで、伝えました。
これでマトモに、話が出来るかな?
「海の向こうから来た……だと?」
物凄く睨んでくるよね。
事実だけを、言ってんのになぁ。




