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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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7話 笑顔でニコニコご挨拶.7



 土鍋の小さい蒸気穴から、プシューっと白い湯気が出て来たので、蓋を取って、煮え具合を確認する。


「良い感じじゃん。ミルン、黒姫、水炊き出来上がったから、食べようぜ」


「熱々なの。頂きますっ!」


「どれどれ、頂くのぢゃぁ」


 ミルンは肉、黒姫は大根、俺は白菜から、先ずは何も付けずに、口へと運ぶ。


「あふっ、あふっ、んまいわぁ」


「ふーっ、ふーっ、あむっ……あひゅいっ!」


「酒が欲しいのぢゃぁ」


 こう言った鍋物だと、ミルンはゆっくり食べるから、消化に良いだろうな。いつものご飯は、噛んでいるのか不安になるくらい、食べるの早いから。

 そんなミルンを眺めていると、ふと、視線の先に、ジュラ紀に居そうな鳥っぽい魔物が、ジッとこっちを見ている。


「匂いに釣られて、魔物が来てるぞ……アレが、影さんが主食にしてた奴か」


「我が居るにも関わらず、目視出来る範囲まで来るとはのぅ。まぁ、襲っては来ぬぢゃろうて、放置一択ぢゃな」


「ふーっ、ふーっ、狩る?」


「今ご飯中だから、狩りません。念の為、少し脅しておきますか……"威圧"?」


 威圧をかまそうと、ソードファングに視線を向けたら、凄まじい勢いで、逃げて行った。

 化物に遭遇したかの様な、見事な逃げだぞ。

 ジュラ紀っぽいのに、脱兎の如く。


「……黒姫何かした?」


「何を言うておる。どう見てもあの魔物、流の瞳を恐れて、逃げたぢゃろうて」


「この瞳の所為かよ」


 神殺しの発動キーって言っても、莫大な量の魔石が必要っぽいし、特定の魔物か妖精達と、コミュニケーション取れるだけ。そう思っていたけど、初めて役に立ったか。


「はふっ、白菜美味いわぁ。豆腐が有れば、尚良しなんだけど、作り方知らんしなぁ」


「とうふって、なあに?」


「何と聞かれても……白くてプルプルした、とてもヘルシーな、健康食だとしか言えん」

 

「ぷるぷる?」


「こればかりは、見てみないと分からないぞ」


 豆腐の材料は、大豆、水、苦汁、以上。

 豆っぽい穀物は有るんだけど、苦汁って何から作るのか、ど忘れしてんの。


「……苦汁」

 

「苦汁? その言葉、昔に哲也が言っとったのぅ。何ぢゃったか……残り汁?」


「何の残り汁だよ。そう言えば黒姫って、父さんと旅してたんだったな。ここにも来た事あるんだっけ?」


「あるのぢゃが……封印される前ぢゃし、短い間に、色々と様変わりしとるのぢゃ」


 黒姫の封印期間、五百年ちょい。それを短い間にって、マジで黒姫何歳なんだろ。


「ふーっ、ふーっ……なあにあれ?」


「どうしたミルン? 何見て……えぇ、今?」


 逃げて来た方角から、土煙りが迫って来てての、どう考えても追っ手だろう。

 ここは気にせず、鍋をつつきましょう。


「流や。凄い血相変えて、迫って来ておるが、戦わなくて良いのかや?」


「この距離で良く見えるな。あんなの、無視しといても問題無いだろ。今は鍋中だ」


「ふーっ、あむっ! 美味しいーっ!」


「こらミルン、ちゃんとお野菜も食べなさい」


 ミルンの小皿に、大根白菜をササっと乗せて、ミルンはそれを、鍋にササっと戻した。


「ミルン……」


「最後っ。お野菜は、最後に食べるっ」


「食べなかったら、毎日肉無しサラダだからな」


「肉無しは嫌っ! ちゃんと食べますっ!」


 俺はそろそろ、柔らかお肉を頂きます。


「魚醤をちょいと付けて、どれどれ。んーっ、やっぱ鍋には、違う気がする」


 美味しいんだけど、コレじゃ無い感が凄くする。お酢とみりんが有ればなぁ。


「んぐんぐ……追っ手は三人か。少ないな」


 恐らくだが、副団長と、女顔。もう一人は、催眠が解けた、ペペルーノあたりだろう。他の騎士等は、町の中を探してるのかね。


「あのマッスルホース……大陸違うと、あんな色になるのか? グレーの馬って……」


「流や、何を言うておる。あのマッスルホースは、どう見てもゴーレムぢゃろうて」


「……アレがゴーレムっ!? 俺の中の、ゴーレムのイメージと、全く違うんだけど」


「ドールやドーツを、見ているであろうに。今更、驚く様な事でも無いのぢゃ」


 あの二体はゴーレムと言うよりも、古代人が作り上げた、不思議ロボだろう。

 見た目は人型ロボットで、中身はスライム。

 そして、俺を揶揄う無駄機能。

 

「迅号……お前だけが頼りだよ」


 しみじみと、そんな事を思っていたら、ヒュンッという風切り音が聞こえて直ぐ、俺の額に何かが当たり、弾かれて、くるくるポチャンと鍋の中。


「何に今のって……矢じゃん」


「お鍋っ!?」


「凄くばっちい矢ぢゃのぅ。ミルンや、もうこの鍋に、手を付けるで無いぞ?」


「おにぐぅっ、まだあったのに……」


 何とも勿体無い事をするなぁ、アイツら。折角の鍋が、台無しになっただろ。


「仕方無い。この鍋は、アイツらに食べて貰って、俺等の分は、また作るか」


 ドドドドッと、迫り来るマッスルホース型のゴーレムを見て、少しばかり格好良いなぁと思ってしまうのは、許して欲しい。


『デンバー副団長っ! 矢が弾かれましたっ!』


『狼狽えるなっ! 次は一斉に放つぞっ!』


『よくも私にあの様なっ、許しません事よっ!』


 距離にして、凡そ五十メートル。

 この距離になってようやく、どうやって矢を射ったのか、ハッキリと見えた。


「弓矢じゃ無くて、ボーガンか。しかもあの構え方、照準も付いてるっぽいな」


 額、胸、腹と、完璧に当てて来る腕前に、少し驚きながらも、妙な"違和感"を覚えた。

 相対距離十メートル。

 デンバー副団長は、腰の剣を抜き、俺と交差する一瞬の間に、それを振り抜いた。

 ガキィッと火花を散らし、デンバー副団長の剣が折れ、そのまま鍋の中にイン。


「学習しないねぇ……無駄だっての」


 今回は、生身で受けて無いぞ。ちょっとした耐久テストで、破魔の盾で受けてみました。


「なっ、盾なぞ持っていなかった筈っ」


「ミルン、黒姫。女顔と、女騎士を任せても良いか? 俺はあのおっさんをやる」


「かしこまっ! 鍋の仇なのっ!」


「面倒臭いのぅ。ささっと終わらせるのぢゃ」


 友好関係を結びたいから、殺す訳にはいかないけども、鍋の怨みだけは晴らさねば。


「オースターっ! スパンキンっ! その二人の子供を保護せよっ!」


「「ははっ!」」


 違和感の正体が分かった。あのデンバー副団長、ミルンと黒姫に矢が当たらない様、矢の軌道を計算して射ってたんだ。


「子供には、武器は向けないか。まともじゃん」


 でも、この二人には悪手だな。見た目に騙されて、即潰されるのがオチだ。


「ミルンは、あの男の玉潰すの」


「あの女子のぅ……何とも、張り合い甲斐の無さそうな、女子なのぢゃ」


「そんじゃ、戦闘開始と行きますかっ!」



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