7話 笑顔でニコニコご挨拶.4
これからどうするか。
高層ビルが立ち並ぶ光景を、のんびり眺めながら、頭を回していたら、鎧を着た者達が続々と、迅号の周りに集まって来た。
「……コスプレ感が半端ない」
「こすぷれって、なあに?」
「えっと、前にミルンが、ミルンレッドになってただろ? アレがコスプレだ」
現代高層ビルに、鎧を着た人達。
アンバランスと言うか、何かの催し物かと思ってしまうのは、俺だけだろう。
「何か言ってる?」
「だなぁ。ドール。外の音を拾ってくれ」
「了。迅号再起動……」
おっ、迅号復活した。
「頑丈だねぇ。んじゃ、外の奴等は何を言ってるのか、聞いてみようか」
あの感じだと、大体何を言ってるのかは、想像出来るんだけど、念の為にね。
『負傷者を中央塔へ集めろぉっ!!』
『デンバー副団長っ! この魔物っ、槍で突いても、傷一つ付きませんっ!』
『助けてくれぇ──っ! 娘がっ、瓦礫の下敷きになったんだ──っ!』
『こいつ、古代の魔物かっ!』
うんうん、迅号の破壊した人工物って、どうやらこの場所の、城壁だった様だ。そこに突っ込んで、破壊を撒き散らしたとか、迅号は攻城兵器だな。
「お父さんっ、反省っ!」
「いや、これしたのミルンよ?」
「……んしょっ、ミルンは黒姫を介抱しますっ」
しれっと俺に、罪をなすりつけて、操縦席から離れ、黒姫を揺さぶり始めるミルン。
アレかな?
子の責任は、親の責任って奴。
「解析完了。死傷者は居ませんが、瓦礫の下敷きになった者多数。時間の問題かと」
「放置してたら死ぬってか……っ、攻撃して来たの、アイツらが先だろうに。"知覚"っ!」
迅号が突っ込んだ付近に、結構な数の反応が有り、相当数埋まってるっぽい。
「あああっ! もうっ、仕方無えなっ! ミルンとドールはここで待機っ! 何か有れば即離脱っ! 分かったなっ!」
「かしこまっ」
「了。迅号の燃料残、五パーセント。当機の燃料残、百パーセント。離脱可能」
「ふぅっ……昇降口を開けてくれ」
プシューっと、開いた昇降口から、顔を出し、周囲を確認してから、そっと降ります。
迅号は、常時浮いており、下には二メートル程の隙間が出来ている。更に、突撃した勢いもあって、地面が凹んでいるから、あの鎧を着たコスプレ風の奴等には、こっちは見えない。
「匍匐前進とか……軍人じゃ無いってのっ」
知覚を使って、なるべく人の居ない、迅号の尻へ、えっちらおっちら匍匐前進。
第四匍匐だったかなぁ、この匍匐。
「ふぅ……ようやく。どっこいせっと」
地面の凹みから這い出て、辺りを確認。
「これで、死人が出てないとか……奇跡だろ」
迅号の突撃した壁から、この地点まで、飛び散ったであろう瓦礫の山が、降り注いでいた。
やらかし感が、半端ない。
「っと、呆けてる場合じゃ無いな」
人命救助が最優先。
可愛いケモ耳ミルンを、人殺しにはさせたく無いし、友好を示さねば。
「誰かぁっ! 娘がっ、娘が──っ!」
「ほいほい。んーっ、反応はあそこか?」
「だっ、誰だあんたっ!?」
「まぁまぁ。"空間収納"で、瓦礫を無い無い」
「……えっ?」
娘さん発見っ! なのは良いんだけど、腹から血がどばどば出てるし、こりゃ不味いな。
「ロリーダっ!」
叫んで居た父親が、娘に駆け寄ったんだけど、名前が気になって、感動出来ない。
その名前で良いのか……父親よ。
娘さんどう見ても、成人してるだろ。
「ぐぅっ、傷が、血が止まらないっ」
「ちょっと御免よーい」
空間収納から、濃厚世界樹の葉エキスを取り出し、患部に一滴、二滴と、ポタポタさせる。
ロリーダが光輝いて、完治しました。
「……ふぁっ?」
「ああっ、ロリーダっ! 良かったっ、良かったあっ! お前まで失ったらっ」
娘さんは、訳が分からん顔してんな。
んじゃサクサクっと、次行きますか。
鎧を着たコスプレ共が、気付いていない人達を、サクサク助けて行きます。
『助けてーっ! 誰かーっ!』
「今助けるぞーっ! "空間収納"で、一気に瓦礫を撤去っ! ……何で裸っ!?」
「いやああああああっ!?」
皆んな、誤解するなよ。今悲鳴を上げたのはっ、毛深いおっさんだっ!
怪我も無い様だし、次に行きましょう。
「知覚の反応はここか? 声がしないな。"空間収納"で、瓦礫よっ、さようならっ!」
「ふんふん、この問題は解けた。次はこの例題を元に、こっちの問題に挑戦だね」
「……この状況で勉強っ!?」
「んっ? 何か御用でしょうか? 勉強の邪魔になる様でしたら、お引き取り下さい」
「あっ、はい。お邪魔しましたぁ」
お邪魔する家が、破壊されてんのに、あのお坊ちゃんは、どうかしてると思うぞ。
この状況下でも、勉強優先。
「恐ぇぇぇ……」
そうして、知覚の反応を頼りに、瓦礫を撤去しまくって、無事、任務を果たしました。
死傷者ゼロ名。
負傷者には、濃厚世界樹の葉エキスを、ポタポタビシャっとかけ逃げして、全員完治。
これで万事、解決したと言えるだろう。
「で……知らない間に囲まれてると」
「貴様、何者だ」
「えぇっと、ここの住民ですよ?」
取り敢えずは、誤魔化してみよう。
「オースター。反応はどうだ?」
「反応が有りません。その者は、我が国の者ではありませんね。他国のスパイかと……」
「と言う事だ。どこの国の者かね?」
オースターと呼ばれた、鎧の人は、手に何か持って、俺に向けてんだけど、何なの、あの機械的な物。
と言うか、物凄く可愛い人です。
男なのか……女なのか……気になる。
「総員構え……」
「「「ははっ!」」」
うーん、やっぱり変な感じだ。
高層ビルが建ってんのに、鎧の人達の武器は、異世界風味溢れる、長槍なんです。
その長槍を、ガチャガチャと、俺にツンツンする気だとしたら、痛そうだなぁ。
「あのぉ……」
「何だ? 答える気になったのかね?」
「ここって、どこなんでしょう? えへへっ」
社会人必殺の、営業スマイルっ!!
それも、下請けが元請けに媚びるが如く、擦り寄る感じの、最上級の笑顔だっ!!
「……捕えよ」
「総員突撃っ!」
「「「ははっ!!」」」
はい、捕まりました。
その瞬間、迅号が動き出して、くるっと横に百八十度回転からの、爆速離脱。
流石ドール、命令に忠実……でも無いか。




