7話 笑顔でニコニコご挨拶.2
唐突だが、免許の話をしよう。
日本では、バイク、車、船、飛行機と言った乗り物を操縦する際、免許と言うモノが、必要である事は、皆様ご存知だろう。
例えば車の免許。
特定の年齢に達した者が、教習所に通って、運転の基礎や知識を学び、試験場でテストを受けて合格すれば、"お前は運転しても大丈夫"と言う、"御墨付き"が貰える。
これが、運転免許証だ。
何故車の運転に、コレが必要なのか。
簡単な話、技能の証明だ。
車は鉄の塊であり、誰彼構わず運転出来るともなれば、阿呆が暴走して、とんでも無い事故を起こす為、"原則禁止"されている。
それを一部解除できるのが、"免許証"。
規制を緩める、不思議アイテム。
高い講習費用とかには、納得出来ない面もあるが、良く考えられた仕組みだろう。
もしも、この免許制度と言うモノが無く、誰彼構わず、好きに運転出来るのだとしたら、恐ろしい事になる。
考えてもみてくれ。
怖いモノ知らずの小さな子供が、ハンドルを握り締め、アクセルを踏むと、どうなるか。
間違い無く、大惨事を引き起こす。
だからこそ、年齢制限を行い、基本的な知識や技能を習得させ、それを確認した上で、証明となる免許証が交付される。
免許証を持っていても、馬鹿をやらかす奴は少なく無いが、大半のドライバーは、道交法を守って、しっかりと運転している。
なんで今、こんな話をするのか?
「もっと曲がるのおおおおおおっ!!」
ゴガガガッと、迅号の翼を地面に擦りながら、ドリフトをかます、暴走ケモ耳ミルンが、降臨なさっているからさ。
「のぢゃあああっ!? 回るっ! 落ちるっ! あああああああああのぢゅっ!?」
黒姫はずっと、ボールの様に、機内で転がり回り、飛び跳ね、ぶつかり、顔面鼻血塗れ。
迅号の内装が、黒姫の顔面よりも、硬いと言う事が、証明されたな。
「ぐぎぎぎっ! 俺も遠心力でっ、座席から飛び出しそうだけどねえええっ!」
「魔物発見っ! 轢き◯すのおおおっ!」
「ミルンっ! 落ちつけっ、ぐっ!?」
さて、問題です。
俺が運転中には、全く感じなかった遠心力ですが、何故今、それを感じるのでしょうか。
答え、ミルンがポチって、解除したから。
「懐かしいわぁっ、あの人間大砲っ」
アレはただ、真っ直ぐ飛ばされるだけだったから、そこまで怖くは無かった。
でもコレは……無理だっ!!
「ドールっ! 何とかしろおっ!」
「駄目ドールっ! ミルンは今……とても楽しいのおおおおおおっ! 曲がるのっ!」
「了。保護解除を継続します」
ほんのちょっと、遊ばせるだけだった。
朝御飯を食べて、ミルンが暇そうにしてたから、ドールの自動操縦をオンにして、操縦席に、座らせてあげたんだ。
そしたら、ミルンがはしゃぎ始めて、色々なボタンをポチポチしたら、この有様。
直ぐに後部座席に座り、ベルトを締めた瞬間、迅号の全能力が、解放された。
「まさかミルンがっ、スピード狂だったとはっ」
「流っ! 助けるのぢゅっ!?」
「黒姫っ! 何とかして座席に座れっ!」
「あああああああああのごぢゅっ!?」
これは、無理だな。
大人黒姫に成れば良いのに、その考えすら出来ない程に、テンパって転がっている。
「見敵必殺なのおおおっ!!」
ドンッ、ゴガッ、ドンッと、嬉々として、ひたすら魔物を、ミンチ変えるミルンの目を、絶対に直視したくない。
ケモ耳の動体視力と、迅号の機動性が合わされば、万の軍にすら、勝てるだろう。
戦車の何倍の速さよ、コレ。
そうして走る事、半日。
ようやくミルンは、運転に慣れたのか、ゆっくりペースで、迅号を運転しています。
「……死ぬかと思った」
「お父さんは、大げさなの。あんな事ぐらいで、死ぬ訳ないの」
「ミルン……お野菜だらけのご飯が嫌なら、二度とあんな爆走は、するんじゃ無いぞ……」
「かしこまっ」
死にはしなくとも、荷物置場で下呂下呂している、黒姫の様になるのは、嫌だ。
「ぎぼぢばどぅいのぢゃ……うぽっ!?」
下呂バケツ、イン、黒姫。
黒姫親衛隊の面々なら、喜んでそのバケツを、中身ごと買うだろう。
「良しミルン。運転の基本を言うから、その通りに操縦してみな」
「うんっ」
「先ずは、余所見をせず、視野を広く持ち、顔は真っ直ぐ前を向く」
「前方良しっ!」
レバーから手を離しての、指差し確認。
超危険だから、良い子のおっさんは、真似しないない様、気を付けてくれ。
「ミルン……指差し確認は不要だぞ」
「かしこまっ」
「……それで、急加速したり、急に操縦レバーを切ると、黒姫の下呂が飛び散るから、緊急時以外は、禁止な?」
「魔物に突撃は?」
「進路上の魔物にだけ、突撃しなさい」
魔物を見つけても、進路上に立っていなければ、無視しても問題は無い。
迅号には、追い付けないからね。
「緊急時って、どんなの?」
「緊急って言うぐらいだから、突然攻撃を受けたり、ヤバい魔物が来た場合だな」
と言っても、このヴォイド大陸で、迅号に攻撃当てれる魔物が、居るかどうかだけど。
「にしても……何も無いねぇ……」
「お父さん、お目々悪い?」
「いんや、視力は良い方だぞ?」
「それなら、この先に岩があるの」
この先に岩?
目を凝らして、先を見てみる。
「んんーっ、確かに。岩の様な……壁の様な?」
ここからじゃ、何とも言えんな。
「ミルン。あの岩?目指して、操縦よろ」
「かしこまっ! 全速前進よーそろーっ!」
「それ……船で言う台詞だからね?」




