間話 斥候部隊隊長六番.3
斥候部隊が、東の国境に到着して早々、夜戦を仕掛けた次の日の朝。隊長の面々が、陣へと戻り、報告会を開いていた。
「えっと、七番隊は、指揮官五名捕獲。八番隊は、二名捕獲で、六名を処したと。九番隊は、三名捕獲。んで、十番隊は……全殺しと」
「んだよ、文句でも有るのか?」
「文句は無いぞ。でもな、次から一人ぐらいは、生かしたまま連れて来いよ」
「了解。たくっ、最後に行くんじゃ無かったぜ」
十六名もの指揮官クラスが、行方不明。
そりゃ伝達されて、警戒されるわ。
そんな中に、十番隊は侵入したんだから、生け捕りじゃ無くても、仕方無いだろう。
「この調子なら、案外早く終わるだろうな。その後はどうするんだ、六番」
「ミルン御嬢様の特命は、国境の防衛。だからこそ、やる事は一つだ。だろう、七番」
「敵さんの国に忍び込んで、二度とちょっかいをかけて来ない様、徹底的に潰すか」
「その通り。敵さんの王を脅して、二度とちょっかいをかけて来ない様、恐怖を植え付ける」
和土国に拠点を作って、その近くの和州、レベチガイ、ゾノオールの三国を疲弊させ、最後はルノサイアだ。
「六番、本気になってるじゃん。珍しい」
「当たり前だろ。この特命を完遂しないと、ミルン御嬢様に何されるか……」
「んじゃあ、どうすんだ? このまま隊ごとに分かれて、別々に行動するのか?」
「ああ。自分は和土国に行って、拠点を用意しておく。定期連絡は、そこに寄越してくれ」
和土国の、傘根技代表に会って、諸々の交渉をした上で、味方になって貰おう。
ついでに、影も探してみるか。
あの人達……絶対に潜入してるだろうから、見付けたら、手伝って貰おう。
「まっ、先の事は置いといて、先ずは目先の軍を、数日で片付けるぞ」
「数日か……楽勝楽勝」
「分かった。今日も夜襲だな」
「はいよっと。すこし寝るかぁ」
「次は俺の隊が、一番に出るぞ」
締まらない報告会だわぁ。
これだから、隊長格は面倒なんだ。
敵さんだって、馬鹿じゃ無いんだから、何某ら対策をしてくるだろう。
「……問題無いか」
何故なら、自分達は斥候部隊。それも、ドゥシャ様の地獄の訓練を、潜り抜けて来た、精鋭なのだから。
なーんて、傲慢な考えだったわ。
粘るわ粘るわ、東の兵共。
ほんとっ、魔法って狡いよねぇ。
『居たぞっ! あそこだっ!』
『糞っ、また見失ったっ! "サーチ"っ! 南側に逃げたぞっ! 追い詰めろっ!』
『バルノア殿の仇だっ! 逃すなっ!』
俺の位置バレてやがんの。
魔神様の"知覚"と違って、常時発動型じゃ無いっぽいけど、厄介過ぎるなぁ。
「初日は余裕だったのに、二日目でコレか」
敵兵に包囲されない様に、嗅覚と聴覚を総動員して、何とか逃げてるけど、あの魔法使いだけは、始末しておかないとね。
「ひい、ふぅ、みぃ、三人……」
「くっ、何処に行った……"サーチ"っ! なっ、背後だ────がぁっ!?」
「すまんね。あと二人……を、守るよなぁ」
魔法使いの二人を囲む様に、わらわらと兵が集まり、密集隊形でガチガチです。
この敵陣の総数は、凡そ百名。
このまま手をこまねいていたら、いずれ包囲されて、自慢の尻尾が斬られちゃうか。
「なら、あの"サーチ"とやらの、効果範囲を調べるか。一度離脱だな」
懐から、小さな瓶を取り出し、敵兵に投げて直ぐ、全力でその場を離脱。
背後から、ガラスの割れる、音がした。
『ああああああっ!? 鼻がっ、捥げるっ!』
『くさあああああああああいっ!?』
『目にっ! 鼻がっ! おげぇっ!?』
超強力な、腐敗臭を放つモノを、瓶に閉じ込め使用する、ドゥシャ様特製投擲武器。
材料の基本となる素材は、ゴブリンの膀胱。
「こんなに離れてても、臭いがするもんなぁ。風下だったら、自分も死ねるわ」
敵陣を抜けて、近くの草村へ伏せ、追っ手が来るのかを、静かに見極める。
あのサーチの範囲は、如何程だろうか。
「ボソッ(魔神様の知覚程、規格外だったら、作戦を練らないと、不味いぞ)」
耳を立て、ジッと様子を伺う。
『居たかっ!』
『こっちには居ないぞっ! サーチの反応はどうだっ! まだ陣内部に潜んでいるかっ!』
『反応が無いとの事っ! 恐らく範囲外に逃げたモノと、思われますっ!』
自分の今の場所は、敵の陣から、凡そ十メートルは離れており、先程の魔法使いが、居た場所からは、五十メートルは離れている。
「しかも、都度発動しなけりゃ、こっちの居場所を知る事が、出来ないと……イケるな」
永遠に使い続けられる魔法なんて、それこそ魔神様の様な、規格外だけなんだし、夜明けギリギリを狙って、再突入だな。
敵はもう来ないと、奴等が安心する瞬間。その瞬間に、魔法使いを確保、又は始末して、そのまま離脱だ。
「楽な任務じゃ無いなぁ……酒呑みてぇーっ」




