表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

530/565

間話 斥候部隊隊長六番.1



 それは、ファンガーデン祝日の、最終日。皆んながわいわいと、祭りを楽しむ最中、世界樹を眺めながら、少しお高い酒を、一人寂しくちびちびと、呑んでいた時だった。


 ピィィィ────と、遠くから聴こえる、笛の音のが、方々に鳴り響く。


「えぇ……緊急招集? 折角の休みなのに?」


 空を見ると、複数の羽人が、とある場所に棒を向けており、そこに向えと言う指示だろう。

 

「ミルン御嬢様かなぁ……」


 間違い無く、そうだろう。犬人族のリーダーにして、魔神様の娘である、ミルン御嬢様の招集には、誰も逆らう事は出来無い。


「逆らったら……うぅっ、震えがっ……」


 前の戦の時なんて、危うく玉を潰されて、雄として、死ぬところだったからなぁ。

 

「行きたく無いけど、行くしか無いかぁ」


 そっと、裏道に入り、斥候部隊員の証でも有る、黒い頭布を目深に被り、口元も隠す。

 頭布に縫われた、六の数字。

 それが自分の、部隊での名前。

 その場所から、建物の壁を垂直に登り、屋根を足場にそのまま真っ直ぐ、領主館へ走った。


「よっ、六番。まだ生きてたのか」


 背後から誰かが、近付いて来た。


「んっ? 二十番じゃん。そんな心配しなくても、お前よりは長生きするぞ」


「上から六番目だからって、気を抜いてると、俺に追い抜かれるぞ?」


「先ずは十九番になれよ……」


 二人して、のんびりと話をしている様に、見えるけど、これでも結構急いでます。

 

「あそこだな。先行くぞ、二十番」


「ちょっ、一緒に行こ────」


 二十番は足が遅い。仲良く一緒に走ってたら、遅れて痛い目を見るから、ここは置いて行く。


「ほっ、とっ、ほっ、到着っと」


 屋根から飛び降り、緊急招集の集合場所であろう、領主館の庭に、到着した。


「あれっ? 自分が一番?」


 自分より速い筈の、一番から五番が居ない。

 いつもなら、自分よりも先に着いて、何やかんやと、嫌味を言ってくる筈なのに。

 

「なーんか、嫌な予感が……」


 犬人族の、本能だろうか。

 今直ぐこの場を離れて、身を隠さないと、やばい事になりそうな、予感がする。


「おっ、弄られ隊員の六番じゃん」


「流石、足だけの隊員。着くのが速いな」


 七番と九番が来ちゃったよ。

 逃げようとした瞬間に、コレだ。


「足だけで悪かったな。お前らは、今回のこの招集の事って、何か知ってるか?」


「六番が知らないのに、俺らが知ってる訳無いだろ。んな事、一番に聞けよな」


「その一番が居ないんだよ。こんな事、有り得ないでしょ?」


 次々に、ファンガーデン中から集まる、斥候部隊員達を見て、不安が増して来る。ミルン御嬢様は、一体何を考えているのか。


『総員っ、整列っ!!』


 不安にお腹を撫でていたら、何処からか、ミルン御嬢様の声が、聞こえて来た。

 体が自然と、動いてしまう。

 自分が中心となって、他の隊員達の基準となり、ものの数秒で、ばらばらだった隊員達は、整列した。


「ミルンの部隊、凄いでしょ?」


「うっ、うむ……」


「アズヴォルド閣下の兵は、出来無いの?」


「ここまで迅速には、正直言って出来ぬ」


 ゆっくりと歩いて来るのは、ミルン御嬢様と、どこかの貴族様だろうか。

 やっぱり、嫌な予感が的中したなぁ。

 

「ボソッ(貴族関係の何かなんて、碌でも無い事に違い無いじゃんっ。嫌だなぁ……)」


 ミルン御嬢様と、その貴族の動きを目で追っていると、何故か自分に、近付いて来る。

 

「それで、ミルン嬢。ミユン嬢が言っておった者は、誰なのかね。確か……六番であったか」


「それなら、中央最前列の、この者なの」


 自分の目の前で止まり、ミルン御嬢様の指が、何故か自分に、向けられている。


「六番っ! アズヴォルド閣下に御挨拶っ!」


「ははっ! ファンガーデン斥候部隊所属っ、六番でありますっ!」


「宜しいっ! 休めっ!」


 何故自分は、挨拶をさせられたのか。

 この貴族様を、ミルン御嬢様が"閣下"と呼ぶと言う事は、結構な身分の貴族様だ。


「顔は見せぬのだな……」


「それはそうなの。お父さんですら、この部隊員達の顔を知らないのだから、アズヴォルド閣下の命でも、絶対に見せないの」


「ふむ、徹底しておるか。素晴らしい」


 そんなご身分の貴族様に、ファンガーデン斥候部隊員として、挨拶させられて。その理由を考えるのならば……。


「と言う事で、六番に特命なの」


「はっ! 何で有りましょう!」


「このアズヴォルド閣下領地の、東の国境を、敵国から護り、出来るならば、その敵国の軍を、殲滅して来て下さいな」


「……やっぱり、戦ですよねぇ」


「返事は?」


 嫌ですと言えば、許してくれるのだろうか。

 無理だろう。

 だってミルン御嬢様の目が、嫌と言わせないかの様に、自分を見て来るんだもん。


「返事の前に、一つ宜しいでしょうか」


「なあに?」


「その……誰が部隊の指揮を?」


「勿論、六番なの。出来るよね?」


 あぁ……ミルン御嬢様、そりゃキツいわぁ。


「でっっっきまっ、すっ!!」


 出来ませんっ!と、言いたかった。

 そんなん言えないって。

 言ったら自分、終わるもん。


「そう言う事だから、アズヴォルド閣下。六番以下、斥候部隊百名を、預けるの」


「感謝する、ミルン嬢。それと、これから宜しく頼むぞ、六番殿」


「はっ、ははっ……了解致しましたぁ……」


 今日って、祝日だよね? 自分今から、東へ行くの?


「……厄日だなぁ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ