6話 ヴォイド大陸調査隊
晴れた空、白い雲、何処までも続く、大海原を眺めながら、ぼーっとしています。
えっ? 何処に居るのかって?
セーフアースの港ですが?
「ピィッ、荷物重たいっ!」
「ピュイッ、ピピプーッ!」
「ピーィ、ピーィ、ピュァーッ」
エトワルとその姉妹達が、手分けしながら、荷物を船へと、運んでいる姿を横目に、俺はこうして、英気を養っております。
大型帆船、スカルペネトレイト号。
セーフアースとアルカディアスを、海路で繋ぐ為に、新たに造船された、最新帆船である。
パッと見ただの、海賊船。
だって帆に、骸骨マークがあるんだぞ。
今は三月十三日。
祭りが終わって、もう五日経った訳だ。
ザッザッザッ────「掘るのっ! 掘り掘りするのおおおおおおおおおっ!」
後ろでミルンは、ひたすら穴を掘ってるけど、犬人の本能だから、仕方が無い。
「ちょっ、ミルンっ、待つのぢゃっ! 我を埋めるでっ、止めぬかっ!?」
黒姫が埋められて居るけど、犬人は、大事なモノを、埋める習性があるから、仕方が無い。
「ミルンお姉ちゃん、まだ穴が小さいの。これだと黒姫が、ポコって出ちゃう」
ミユンはミルンの、お手伝いをしているが、土の精霊だから、穴には煩いんだ。
そんな和やかな空気の中で、約二名。ずっとそわそわしながら、俺の周りをうろちょろと、歩き続ける者達が居る。
「魔神様っ! まだ行かないのかっ!」
「アレス様が、怒られております」
元影の一人、アレス。
その義娘、マロン。
厄介な二人が、来たもんだ。
行方不明の朕野郎を探して、帝国をくまなく回ったが、影も形も無かったらしい。んで何故か、昨日領主館へ突撃して来て、『ヴォイド大陸へ連れて行け』と、寝ていた黒姫を叩き起こし、暴れたんだ。
朕野郎って誰なのか? サハロブ・アヒージャ・ノゾ・ルプマンティと言う、ドルジアヌ帝国の、元暫定皇帝。
「……なあアレス。何故にヴォイド大陸? 朕野郎なら、どうせ帝国のどこかに、隠れてるだろうに。マジで来る気か?」
マロンと二人で探してるんだから、見落としとかもあるだろうに。わざわざヴォイド大陸まで行かなくても、良いじゃん。
「魔神様。私の勘を、舐めないで頂きたい」
「そうです変態様。舐めないで下さい」
「……なあアレス。マロンってこんなに、口が悪い娘だったっけ? 変態って何?」
「マロンっ、魔神様に失礼だろう」
「失礼しましたアレス様。以後、気を付けます」
うんうん、俺には謝らないのね。
ずっと腕に、棘付きガントレット嵌めたままだし、物騒な娘になったなぁ。
「アレだ、ヴォイド大陸に調査は行くけど、定期的に、ここに帰るからな」
「私とマロンは、そのまま残してくれても、一向に構わない。ヴォイド大陸にさえ行ければ、後は自分達で、何とかする」
「無茶過ぎるだろ……」
大陸が違えば、魔物の生態も変わり、今までの常識が、通じ無いなんて事もある。
一番怖いのは、病原菌だな。
以前ドゥシャさんが集めていた、絶滅した筈の毒草なんかが、生えてる地だ。
「それならせめて、これは持っておけよ」
空間収納から、世界樹の葉を取り出し、アレスとマロンに三枚ずつ渡した。
「それが無くなったら、必ず、ヴォイド大陸の端っこまで来い。分かったな」
「……分かった、約束しよう」
「アレス様に従います」
となれば、進む方向を決めないとな。
ドゥシャさんが描いた、簡単な地図を取り出し、アレスがどう進むのかを、確認する。
「私達は、崖に沿って進もう。それならば、方向も見失わずに済むし、影の知らぬ情報も、得れるだろうからな」
「分かった。俺達は、ドールを見つけた施設の先に、そのまま真っ直ぐ行くわ」
「進路は決まったが、いつ出発するんだ。私達だけでも、行きたいのだが……」
そうしてあげたいのは、やまやまだが、出発はもう少し、先なんだよなぁ。
「最低でも、後三日は待ってくれ。そこで埋まってる黒姫は、今休暇中なんだ」
「っ……休みならば、仕方無い。宿を借りるぞ」
「ああ。ちと狭いが、過ごし易いと思うぞ」
アレスとマロンは渋々、港近くに幾つも作った、宿泊施設へと歩いて行った。
そう、黒姫の休暇。
港完成に際しての、ちょっとした御褒美。
港の建設のストレスで、う◯こ爆撃をする程に、頑張っていたからな。パーティーも無事、終わった事だし、こうして黒姫は、休暇を楽しんで居る訳だ。
ザシュッザシュッ────「埋め埋め埋めてっ、しっかり埋めるのっ!」
そういや、黒姫の声がしないな。
後ろにくるっと振り向き、確認します。
「埋めた後は、土をポンポンします」
ミユンが土を、ポンポンしてるけど、黒姫ヘッドの二本のドリルが、見えてるからね。
「休暇中に埋められるとか……笑えるわぁ」
ズボンッ────「助けるのぢゃっ!?」
頭が飛び出して来ました。
完璧に埋まってたのに、凄いパワーだな。
「ミルンお姉ちゃんっ! 黒姫出て来たの!」
「黒姫埋まるのっ! 埋まってなきゃ駄目っ!」
「流やっ! 我を助けるのぢゃあああっ!!」
黒姫が再度、ミルンに埋められているのを横目に、ヴォイド大陸調査隊のメンバーを、少しばかり、確認しておく。
「少人数、小精鋭で、行かないとだ」
黒姫は、絶対に連れて行く。
大陸を渡る為の、貴重な交通手段だし、いざと言う時には、乗せて飛んでの爆速離脱。
ドールも、黒姫と似た様なモノだ。
陸地移動に、迅号は必須だし、なにより、姉妹機を探すと言う、約束が有る。
「後は……ミルンかミユンねぇ。おーい二人共。最初の調査は、どっちが先に行くのか、決まったのかーい」
「ミルンが調査に行きますっ。じゃんけんで勝ったのっ。あっ、黒姫また出て来たっ!」
「次はミユンっ」
精霊のミユンに勝つとは、凄いなミルン。
「それじゃあ、一月毎調査を区切るから、その時にちゃんと、交代するんだぞ」
「もちっ!」
「ろんっ!」
「仲の良いことで。それ、黒姫生きてるのか?」
さっきから、角は見えるが……動かない。
「黒姫? 大丈夫だよ?」
そう言うとミルンは、地面から少し出ている角を掴むと、『えいっ』と言う可愛い声を出し、黒姫を引き抜いた。
「何故我を助けぬのぢゃっ!」
うん、普通に元気だわ。
不貞腐れて、ぷにぷにしてるだけだった。
「黒姫なら簡単に、逃げれるだろ?」
「ミルンが怪我をするのぢゃっ!」
「それは駄目だな。逃げるの却下で」
「ぢゃから御主に助け────」
ミルンはそっと、黒姫を穴に戻した。
そんな事をしながら、三日間の黒姫の休暇が終わり、ファンガーデンに居るドゥシャさんに、一度声をかけてから、ヴォイド大陸へと、調査に向かった。




