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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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5話 ミユンと一緒にぐるぐると.4



 研究所所長、パナトーナとは。

 王都のスラムで、物乞いや、娼婦の真似事をしながら生きて来た、逞しい女性である。


 産まれも育ちも王都のスラム。

 不自由な身ではあったが、歯を食いしばり、何とか生き抜いて来た。


 スラム産まれの者は、他のスラムに住む者達からは、襲われない。

 襲ってはいけない。

 スラムの暗黙のルールで"あった"。

 スラムのボス、ヤナギが消える迄は。


 抑える者が居なくなれば、ルールなど意味を成さず、その場所に留まり、他のスラムの者達に、捕まってしまえば、弄ばれ、皮を剥がれ、骨すら残らないだろう。

 だからこそ、王都から近く、スラムにでさえ噂が届く、ファンガーデンまで来た。

 老齢のマッスルホースで、三日。

 若いマッスルホースで、一日、二日。

 普通に歩けば、七日。

 老人でさえ、十日の距離。

 パナトーナは、二十日かけて来た。

 魔物に怯え、草を食べ、泥水を啜りながら。


 ファンガーデンの検問は厳しく、正面からは入れなかったので、城壁をぐるっと外回り。

 何とか見付けた穴から、無事侵入。

 繁華街の店から、布や木板を拝借して、その裏手に、小さな寝床を作った。

 そして、疲労による爆睡。

 俺が寝顔を見ている事すら、気付かない程に、深く、深く、眠っていた。


「と言う事情から、ルシィの印象は、女王? 何それ? 贅沢三昧している、糞貴族でしょ? としか、思われていないんだ」

 

「流様。私的には、糞貴族では無く、肥え太ったオークだと思ってますよ」


「女王、太った?」


「っ……すまぬ」


 研究所内に戻った俺とルシィは、パナトーナさんから距離を取りつつ、その生い立ちを、掻い摘んで、ルシィに聞かせた。

 その結果、ルシィの顔が、真っ青です。


「謝られても、どうにもなりませんよ? だって私、不敬罪で死刑ですもんね?」


「儂の失言であった。先の言葉は、取り消そう」


「えっ、取り消すんですか? 何で? 女王が簡単にそんな事して、良いんですか?」


「……すまぬ」


 パナトーナさん、容赦ねぇ……。

 これ幸いと、ルシィに絡みまくって、今までの鬱憤を、晴らす気満々じゃん。

 それでも、今日ルシィが、ここに来た趣旨と違うから、ここ迄にしないとな。


「さっきから、"すまぬ"しか言ってませんが、まさか他に言葉を知らない訳が『パナトーナさん、そこまでだ』っ、はーい」


 俺の言う事は、素直に聞くんだよなぁ。


「ルシィ。こう言う人達が、王都にはまだ居る事を、踏まえた上でだ。ここで働く人達の声を、聞いてくれ」


 女王自ら、声をかけ、その声を聞く。

 彼等にだって、ルシィにだって、そんな機会など、無きに等しい事だ。


「っ、儂一人でかのぅ……」


「んな訳あるか。影さん、居るんだろ?」


「惨影なら居るっすよー?」


 影さんを呼んだのに、ウザ子が来た。


「良しっ! チェンジでっ!」


「そん事言わずにっ、この惨影に任せて貰えば、皆んなを笑顔に出来るっす!」


 否定出来ない事が悔しい。

 確かにこの、影にあるまじきウザ子パワーならば、この施設の人達からしたら、明るくて良い子ポジションに、なるのかも知れない。


「……そんじゃ、パナトーナさん。ルシィとウザ子を連れて、施設をぐるっと宜しく」


「分かりました。惨影さん? すみませんが、後ろから押してくれますか」


「良いっすよっ! ほら陛下も、そんな暗い顔をしてたら、女王失格っすよーっ」


「ボソッ(そうじゃの……失格じゃの……)」


 ギィッギィッと、嵐が去って行った。

 いや、ルシィからしたら、嵐の中に突入して行く様な、モノだろうか。


「パパはやっぱり、鬼畜なの」


「鬼にもなるって。元凶が王都のスラムな訳だし、ルシィには、頑張って貰わないと」


「スラム撲滅?」


「それは無いな。断言するが、王都のスラムは絶対に、無くならない」


「なんで?」


 王都スラムは、大きくなり過ぎた。

 更に言えば、特権階級の貴族が多く居り、スラムを飯の種にしている奴が、必ず居るであろうから、スラムは無くならない。


「そんなの、ミユンは良く。知ってるだろ?」


「甘い汁を、吸い過ぎた?」


「大正解っ!」


 だからこそ、ルシィにはこれを抑え、少しずつでも、スラムを縮小して貰わんと、周りに飛び火するからな。


「だからこその、テストケースとして、ここにルシィを連れて来たんだ。多少なりとも、参考にして貰わにゃな」


「流石パパっ。変な知識だけは、豊富なの」


「うん……それ、褒めてる?」


「褒めてるのっ」


「なーんか、むず痒い」


 もし俺が、この異世界で産まれていたならば、こんな考えは出来なかっただろう。

 

「先達達に、感謝しないとな」


「感謝?」


「いや、何でも無い」


 兎も角これで、一つの行事は完了だ。


「ルシィが終わるまで、俺達も、研究所内を回るか。面白い物が、沢山有るからな」


「面白い物っ。ミルンロボ?」


「アレはドーツの外装だろ……」


 巨大な戦車に手脚とか、浪漫溢れる素敵ロボだけど、俺的にアレは無い。二足歩行ロボ作るなら、顔を戦車にしたら、駄目だと思うからだ。

 戦車の上に、人型の顔さえ有れば、良かったと思うのに、残念仕様だわな。


「ほれミユン。行くぞーい」


「待ってパパっ。抱っこ! 抱っこしてっ!」


「へいへい。よいしょっ……」


「重いって言ったら、このまま殴りますっ」


 そんな事言わないよ。

 心の中で、思うだけだからね。

 

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