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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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5話 ミユンと一緒にぐるぐると.3



 喫茶店で小腹を満たし、丁度良い時間になったので、ルシィを連れて、施設へと移動。

 その施設とは、婚約御披露目パーティーの準備と、並行して作った、とある研究所。

 

「これが……その義肢とやらの資料か」


「機密文書だから、盗むなよルシィ」


「誰が盗むかっ!?」


 ヴォイド大陸で見つけた資料を解析。

 先ずは、木材で型を組み上げ、確認を行い、その後、鍛冶職人達に、"部品毎"に製造を依頼して、組み上げる。


「ふむ……まさか目の見えぬ物を、この様に雇うとはの。驚きじゃわい」


「だろ? ああ言う人達は、聴覚や手の感覚が優れているから、部品毎に触って貰って、組み方を覚えれば、結構な戦力なんだ」


「耳の聞こえぬ者も、居る様じゃが、どの様にして、意思疎通をしておるのじゃ?」


「そこは共通して、コレを使って貰ってるぞ」


「何じゃそれは……小さな凹凸があるの」


「それは"あ"だな」


 異世界版、初期型点字板。

 これを、共通のコミュニケーションツールとして、一人一人に支給している。

 勿論、目が見えない人には、簡単な手話を覚えて貰い、両者共に支え合って、この研究所を回している。


「これら全てを、御主が考えたのか?」


「俺では無いな」


「では、誰がこの様な物を、考えたのじゃ」


「この資料の山を見りゃ、分かるだろ?」


「……古代人か」


 と言う事にしておかないと、ルシィの質問攻めが、回避出来無いからな。

 点字や手話は、俺の知ってる範囲でだから、まだまだ改善しなくちゃならん。


「リティナが居れば、無くなった腕も生えるけど、長期で放置してたら、治せないだろ?」


「その為にこの施設を、作ったと申すか」


「あくまで、理由の一つだ」


「他の理由は何じゃ?」


 そんなの、口に出す訳無いだろうに。


 日本だと、こう言った人達は、苦しいながらも、それでもなんとか、生活出来ていた。

 しかし、異世界は違う。

 目が見えないイコール、死。

 耳が聞こえないイコール、死。

 腕や脚が無いイコール、死。

 魔物が来たら、即終了。

 理不尽にも程がある。


「他の理由は、内緒だ……」


「流は本当に、良う分からぬ奴じゃ」


 ギィッギィッ────「パパ、連れて来た!」


「ミユン、あんがとさん」


 車椅子の車輪は、改良が必要だな。

 ミユンが押すたびに音が鳴るし、手で回すにしても、相当な腕力がいるか。


「ルシィ、紹介しよう。この施設の管理をして貰っている、パナトーナさんだ。見ての通り、足が不自由だから、不敬だとか抜かすなよ」


「御主、儂を何だと思っておるのじゃ」


「泣き虫女王様」


「それをここで言うなっ!」


「ふっ、ふぷっ」


 パナトーナさんに、ウケた様だな。


「陛下。ここの所長を任されております、パナトーナと申しますぅふふっ」


「なっ!? 笑うで無いわっ!?」


「ゴホンッ、失礼致しました。ぷふっ」


「ええいっ! パナトーナとやらっ! 儂に対してっ、不敬で有るぞっ!」


 ちゃんと注意したのに、言うお馬鹿。

 この施設に居る人達は、障害の所為で、住まう場所を追い出され、必死の思いで、この地に辿り着いた人達だ。

 要は、捨てられた人達。

 多少なりとも、国を恨んでいる人達だ。

 女王に払う、敬意なんてモノは、無い。


「不敬で斬首ですか? 私死にたくなーい。と言う事で、流様。実験しても良いですか?」


「止めろパナトーナ。ルシィ、今の言葉を取り消せ。さも無いと、標的になるぞ」


「何じゃっ、何の話をしておるっ!」


「ミユン、パナトーナの車椅子から、絶対に手を離すなよ。地面に固定だ」


「りょっ」

 

 床から根っこを生やして、車椅子を固定。

 これならば、パナトーナは動けない。


「ミユン様。コレ……解いてくれませんか?」


「大人しくしててっ」


「殺られる前に殺らないと、不敬で斬首は嫌ですよ? だからねっ? ねっ?」


「ミユン怒るよ……」


 流石はミユン、良い仕事だ。

 俺は取り敢えず、ルシィを一旦外へと連れ出して、簡単な事情を、説明タイムです。

 

「なぁルシィ。俺、ちゃんと言ったよね? 不敬だとか抜かすなよって」


「彼奴っ、儂に対して、一体何をしようとしたのじゃっ! 説明せいっ!」


「落ち着けっての。ただでさえお前は、この施設の人達からしたら、"憎むべき対象"なんだから、少しは自重しろって」


「何故儂がっ、憎むべき対象なのじゃっ!?」


 どうやらこの女王、相当頭が悪い様だ。

 今さっき、この施設で働いている人達を、しっかりと見たと言うのに、マジかーい。


「ルシィ。お前は今まで、あんな人達に対して、何かしてあげた事はあるか?」


「そんな事っ……」


「女王として、何か政策を考え、実行して、各貴族達に波及させたか?」


「……っ」


「スラムの状況を見る限り、無いだろうな」


 必死に生きようとする人達に、貴族は何もせず、町や村から追い出され、その行き着く先には、光なんて無い。

 希望が持てない。

 その思いの矛先は、何処に向くのか。


「パナトーナさんは、王都のスラムから来た」


「っ、それはっ……」


「魔物に怯えながらも、必死に杖を付いて、ここ迄来たんだってさ。俺が見付けて無けりゃ、どうなってたか……」


 下手したら、スラム化しちゃって、手が付けれない状況にまで、なったかも知れない。


「それとな。ここで研究してんのは、義肢だけじゃ無い。あのままだったら、ルシィの立派な腹肉に、穴が開くところだったぞ」


「はっ? 儂のっ、腹肉って言うなっ!?」


「疑問か突っ込みか、どっちかにしろよ」


 この、魔物蔓延る異世界で、普通の車椅子なんて、作る訳が無いだろうに。


「少し頭を冷やしたら、中に戻るぞ。パナトーナさんに、しっかり謝れよな」


「ぐっ……分かったわ」


 本当に分かってるのかね、この女王は。



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