5話 ミユンと一緒にぐるぐると.2
畑作業もひと段落。
抜きに抜いた雑草は、細かく擦りおろし、コカトリスの餌にする予定だ。
雑草と言えども、ミユンの土から生えた物だから、そこそこ食べれる雑草なんです。
「無駄が無いねぇ。流石ミユン」
「褒められても、お芋しか出ないの」
「あんがとさん。施設の皆んなに配って、美味しく食べて貰うか」
そもそも何故、畑作業をしているのか。
農家の皆さんに、祝日だから働かないでと、俺が領主として、命令したから。
三日放置しても、問題無いって?
ミユンの土だぞ。
三日もあれば、雑草地獄だわ。
「芋畑はこれで良し。時間は……十時前か。そろそろルシィ捕まえて、施設に行くぞ」
「女王捕獲?」
「そうそう。何処に居るのかって、分かるか?」
「んーとねーっ。あっちな気がするっ!」
ミユンの指差す方向には、居住区の喫茶店。
小腹が空いたって事だわな。
「うしっ。軽く食べてから、ルシィを捕獲だ」
「お腹空いて無いよ?」
「まあまあ。よいしょっ!」
久々に、ミユンを抱っこだぜっ!?
みっ、見た目以上に重いっ!!
「っ、ミユンも成長したなぁ」
「少しだけっ!」
「そりゃぁ……嬉しい事だ」
この感じだと、もうミルンとミユン。二人同時には、抱える事が出来ないだろう。
それをやれば……腰が逝く。
「肩車や抱っこも、あと数年か……」
「数年経っても、抱っこして貰うっ」
「俺の腰を、壊す気かな?」
「パパが鍛えれば良いの」
村長みたいに?
俺を筋肉にするつもりなのか?
そうしている間に、喫茶店に到着し、小綺麗なテラス席に、"相席"をかまして、一息吐く。
「ふぅ……ミユンは何か頼むか?」
「うーんとね、紅茶の甘いやつ!」
「蜂蜜入りだな。なら俺は、パンケーキと紅茶で良いか。すみませーんっ」
『はーい』
「パンケーキと、紅茶二つ。紅茶の一つには、たっぷりの蜂蜜を、お願いしまーす」
『少しお時間を頂きまーす』
流石は居住区の喫茶店。
店内から出て来ずに、注文を受け付けるなんて、商業区とは大違いだわ。
「のんびり待つと、しますかねぇ」
「そうなのぉ」
「……話しかけぬかっ!?」
「ルシィの突っ込みは、キレが無いな。こんな居住区の茶店で、一人で何してんの? 護衛とか、ナブリル君は?」
ミユンの言った通り、ルシィが居ました。
こいつ女王の癖して、一般人を装った服装をして、こっそりお茶飲んでやがんの。
「儂とて、一人の時間も、必要なのじゃ。ナブリルには今日一日、休暇をくれてやったわ」
「あの人、苦労してそうだもんな。にしても、護衛も無しなのは、女王としてどうよ?」
「影がそこかしこで、見張っておるのじゃ」
「ボソッ(確かに、店内に一人居るな)」
知覚でバッチリ影サーチ。
何で影さんって分かるのか?
普通のお客様なら、壁に張り付く様にして、隠れる事なんてしないから。
「パパ、床下にも居るの。捕まえて良い?」
「影さんお仕事中だから、邪魔しちゃ駄目だぞ」
「床下にも居るとは……」
ルシィは知らなかった様だ。
因みに、半径十メートル圏内に居る、影さんの数は、十五名……って、多くね?
「結構な数の影さんを、連れて来たんだな」
「結構な数じゃと? 護衛として連れてきたのは、五名だけなのじゃが……彼奴らっ」
「あぁーっ、成程」
十五名中、五名はルシィの護衛。
では、残る十名は何なのか。
そんなのは、決まっている。
「ミユン親衛隊の面々か」
「ミユンの?」
「そうそう。可愛いミユンを、遠くから見守りましょうって言う、ストーカーだな」
「犯罪者?」
似たようなモノだろう。
なにやら、ジアストールの暗部の中には、三つの派閥が存在し、色々と競ってるらしい。
ミルン親衛隊。
黒姫親衛隊。
ミユン親衛隊。
ミルン親衛隊は、御座るやウザ子と言った、比較的マシな部類の影達で、構成されている。
黒姫親衛隊は、黒姫を触りたい、揉みたい、味わいたいと言う、ただの変態の集まりだ。
雷刀を渡した影さんが、黒姫親衛隊だな。
ミユン親衛隊は、暗がりなどから、ただひたすらに、ミユンを観察し続ける、実害の無い、ただの変態の集まりだ。
ミユンに捕捉されたら、終わるからね。
「何か……暗部って、変態ばっかりじゃん。ちゃんとさ、教育しろよルシィ」
「あの者らをっ、教育出来るかっ!」
「出来無いの? 女王なのに?」
「当たり前じゃっ! っ、あの者らは、儂の護衛である前に、ジアストールの影なのじゃ。命令は出来ても、教育は出来ぬっ」
「何じゃそりゃ?」
命令は出来るのに、教育は出来無い。
良く分からん関係性なのね。
「すみません、お待たせしましたーっ。パンケーキと、紅茶二つ。一つは蜂蜜入りですね」
「待ってましたっ」
「良い香りなのぉ」
「それでは、ごゆっくりどうぞーっ」
店員さんの動きが早いな。
ササっと置いて、店内に戻ったぞ。
「あっ、ここルシィの奢りな」
「何でじゃっ!?」
「昨日の件……忘れてないよな?」
「アレは御主がっ、ええいっ! もう良いわっ!」
一対一の口論では、勝てないと判断して、直ぐに諦めやがったな。
折角、弄り倒そうかなって、思ったのに。




