4話 会議は踊らずされど進む.5
会議と言う名の何かが終わり、ミルンと遊ぶべく、館内を捜索中。
「はぁ……溜息が出るわ」
ドゥシャさんとシャルネは、二人して再度、温泉に行っちゃいました。
アレかな?
レイズ国王を、男湯に沈めて、ザマァス王妃との密談でも、するのだろうか。
「ドールにでも、ミルンの居場所を聞いときゃ良かった。何処に居るのやら……」
ルシィの叫び声が、煩いと言ってたから、館の何処かには居る筈だ。
お部屋かな?
そう思って、ミルンのお部屋の前まで来たんだけど、中で何かしてるっぽい。
『ミユンはここの守りだから、却下します』
『横暴なのっ! ミユンも行きたい!』
『今度はミルンの番っ! ミユンは村長の所で、いっぱい楽しんだでしょっ!』
『むぐっ、楽しんで無いの……』
そっと扉を開けて、中を覗きます。
ミルンとミユンが言い合いなんて、珍しいを通り越して、有り得ない事だぞ。
「ピュアは、お留守番で大丈夫?」
「私は良いわよ。ここの食べ物は美味しいし、わざわざあんな所に、行きたくないもの」
「良かったの。後はミユンだけっ」
「拒否しますっ! ミユンも行きたいっ!」
何の言い合いを、しているのかは分からないが、幼女四人集まって、何とも可愛らしい光景が、そこにはあった。
ミルン、ミユン、ピュア、黒姫の四人で、小さなちゃぶ台を囲んでの、円卓会議。
黒姫だけ、ちゃぶ台に顔を乗せて、ミルンとミユンの言い合いを、のほほんと眺めている。
お婆ちゃんの心境かな?
見た目はどうあれ、最年長だろうし。
「ボソッ(ミルン以外、年齢不詳だけど……)」
精霊二人に、魔龍が一匹。
そこに犬耳美少女、ミルンが一人。
「ぬぅぅぅ、ミユンは我儘っ」
「ミルンお姉ちゃんこそ、横暴っ」
「「むぎぎぎぎぎっ」」
何アレ、可愛いっ!
ちゃぶ台を挟んでの、睨み合い。
但しっ! 二人して、頬っぺたを膨らませてるから、癒される光景なんだっ!
「これこれ二人共、あまりちゃぶ台を、揺らすで無いのぢゃ。少しは冷静に話さぬか」
「「黒姫は黙っててっ!!」」
「うっ、うむ。黙るのぢゃ」
黒姫は、ハブられてた、だけだった。
またちゃぶ台に、顔を置いたな。
哀れ黒姫。
「ねぇ、二人共。結局の所、連れて行ってくれるのか、分からないんでしょ?」
「……うん」
「ピュアの言う通りなの」
「それなら先ずは、その相談をしなさいよ」
ピュアっ……ミルンとミユンの言い合いを、上手く止めやがった。
流石水の精霊。
頭から水をかけて、二人を冷静にさせたな。
「相談……お父さんに?」
「そうよ。精霊神様を宿した、あの意味不明な存在が許可しないと、駄目なんでしょ?」
「パパは、意味不な存在じゃないの」
「そこに食いつかないで。兎に角先ずは、そこで盗み見をしている人の、許可を貰うべきね」
ピュアがそう言うと、皆んなのお顔がぐるんっと、一斉にこっちを向いた。
ちょっと怖い……。
何が怖いって、ミルンの首が、どう見ても左に百度以上、曲がってんのよ。
「えっと、ミルン。首……痛くないのか?」
「痛く無いよ?」
「あっ、そうですか」
普通の人なら、首、ヤバいよね?
「んで、ミルンとミユンは、何の話をしてるんだ? 喧嘩じゃ無いよな?」
「ミユンと喧嘩? して無いよ?」
「パパの勘違いっ。これは会議なの!」
「うん、だろうと思った」
ちゃぶ台囲んでるしね。
お茶にお茶菓子まで完備して、女子会と言っても、良いと思う会議だ。
「そんで、さっきピュアが、俺の許可云々言ってたのが、この会議の議題か?」
「「そやねん」」
「二人して、リティナの真似なの?」
異世界風に言うと、東方言。
「んで、議題は何だ?」
「お父さんに付いて行くのは、誰にするのかの会議っ。お祭り終わったら、行くんでしょ?」
「別大陸っ!」
何この娘達……会議終わったの、今さっきなのに、何でその事知ってんの?
「流や。昨日パーティーで、あの女王が言っておったぢゃろ。それで、この会議なのぢゃ」
「ルシィの所為か……でもなぁ、ヴォイド大陸には、二人は連れて行かないぞ」
「「なんでっ!?」」
「その合わせて驚くの、どうやってんの?」
理由は多々ある。
ヴォイド大陸では、根っこ移動が使えないから、いざという時、緊急離脱が出来ない事。
ミルンを連れて行くと、ドゥシャさんが寂しがり、帰って来た時に、少し怖い事。
ミユンを連れて行くと、農作物に問題が発生した場合、直ぐの復旧が、出来無くなる事。
「まぁ、色々理由は有るけどもだ。一番の理由は、ヴォイド大陸が、ガチで危険な場所の可能性が、あると言う事だ」
「危険なんて無いのっ!」
「ミユンは大丈夫っ!」
黒姫をチラッと見ると、首を左右に振っているので、間違い無く危険地帯。
何が危険なのかって?
勿論、魔王の存在だ。
「ミルンは、今のアトゥナに勝てるか?」
「っ……無理」
「ミユンはどうだ? 勝てそうか?」
「それはっ……分かんない」
そう言う事だ。
黒姫曰く、このエイドノア大陸の魔王達は、他の大陸の魔王よりも、弱いらしい。
魔龍と恐れられる、黒姫ですら、ヴォイド大陸の魔王を、警戒するレベルだ。
ぶっちゃけ二人を、守れる自信が無い。
「ミルンお留守番してたのにっ、お父さんがまた行っちゃうっ……狡いっ」
「ミユンもっ、ヘラクレスの所っ、頑張ってお手伝いしたのにっ……狡いっ」
二人して、目に涙を浮かべていますけど、それは狡く無いのかいっ!?
「くっ、黒姫、ピュアからもっ、二人を何とか説得してくれっ。泣き脅しは嫌だっ!」
「情け無い魔神なのぢゃ……」
「これが、精霊神様を、宿しているのね……」
黒姫とピュアからの、冷たい視線ですね。
「流や。以前に話した、ヴォイド大陸の魔王の特徴は、覚えておるかや?」
「ああ。超超遠距離タイプ、だったか?」
「然り。上空を飛んでおると、我でも痛い思いをするのぢゃ。逆に、陸地を行けば、彼奴は攻撃をして来ぬ」
「前に聞いたな。それが何なんだ?」
そんなの、魔王の気紛れだろ。
超超遠距離を、寸分違わず狙い撃ち出来るのならば、魔王に近付けば近付く程、その危険度は増してくる。
「人見知り魔王ぢゃから、近付けば近付く程、居場所を知られぬ為に、隠れるのぢゃ」
「俺の考えを読んだな。それが事実だとして、何だって言うんだ?」
「ぢゃからして、二人のどちらかぐらい、連れて行っても、良いのでは無いかや?」
うん、お馬鹿黒姫だよねっ!
折角二人共、連れて行くのを駄目にして、なんとかこの場を、収めようとしたのにね!
「ならミルンっ! ミルンが行くのっ!」
「パパっ! ミユンを選ぶのっ!」
取り敢えずは、保留にするか。
結論の先延ばしを行い、その間に、何か良い手を考えないとだ。




