4話 会議は踊らずされど進む.4
頼んでもいないのに、お茶のお代わりを、コトッ、コトッと、皆んなの前に置くドール。
流石ロボ。
顔が水晶だから、顔色も読めないし、何考えてるのかさっぱり分からん。
「なあルシィ。以前にドールを紹介した時、俺が何て説明したか、覚えてるか?」
「何じゃ急に。確か、新たに発見した大陸に、"落ちていた"と申してたな」
「そうそう。それ、嘘だから」
「……えっ?」
ルシィだけで無く、レイズ国王とザマァス王妃までも、『えっ?』て顔して、面白いな。
「俺、ドゥシャさん、シャルネ、影さん、黒姫含めて、全員で口裏を、合わせていたんだ」
「待て流っ、では……っ、今ナブリルが話した情報も、嘘だと言うのか」
「そっちは本当だろ。影さんが黙ってたのは、ドールに関する事だけだぞ」
実際、ナブリル君が話した内容には、俺の知らない事が、山程有ったからな。
あの影さん、凄ぇ生活してたのね。
「シャルネっ、何故妾達に嘘を吐いたっ!」
「待ちなさいザマァス。娘にも何か、考えがあっての事だろう。そうであろう、シャルネや」
「? 流様に、色々と黙っておく様にと、お願いされたからですわ。それだけですの」
「……流殿っ。説明を……願えるだろうか?」
レイズ国王の顔、泣きそうじゃん。
愛娘に騙されてんの、気付かなかったの?
「小々波卿……そこのドール、嬢?に似た者が、もう一人居たであろう……」
「ドーツだな。そっちは村長の所の、迷宮で発見された、ドールの姉妹みたいなモノだ」
「待てい流っ!? ヘラクレスからっ、その様な報告は受けておらぬぞっ!!」
「発見者はミユンで、村長には黙ってたみたいだぞ。そりゃ、報告書にも載らんわ」
そこはミユンの、ファインプレーだ。
村長が知っていたら、ドーツの存在を隠さずに、ルシィに報告してただろうし。
「と言う事で、ドール。個体識別番号開示、対物理兵装起動を許可。皆んなに挨拶よろ」
「了。個体識別番号、T-OP壱号、名称ドール。対物理兵装起動……マテリアルシールド……展開致します」
うんうん、久々に見たわ。
影さんが持つ、雷刀の剣撃を、いとも容易く受け流していた、意味不明な盾。
その盾が三つ?
以前はもっと、多かったよな。
「なあドール。出し惜しみしてる?」
「戦闘時では無い為、これ以上は不要と判断」
「そりゃそうか。で、皆んなの感想は?」
会議室が、静まり返り、誰も喋らない。
「反応薄っ。何で皆んな俯いてんの? ほらっ、南の連邦にも無い、面白ロボだぞ?」
会議室が、静まり返り、誰も喋らない。
「ボソッ(なあドゥシャさん。皆んな、どうしちゃったの? さっきまで喋ってたのにさ)」
「ボソッ(恐らくは、呆れてモノも、言えないのでは無いかと、推測致します)」
「ボソッ(ふぅん。それなら、ドーツを呼んで、大砲装着させて、驚かせようか?)」
「ボソッ(止めた方が、懸命かと存じます)」
却下されてしまいました。
まぁ、あの大砲は、昨日見られちゃってるから、インパクトに欠けるか。
そんな事を思っていたら、ルシィがゆっくりと、椅子から立ち上がり、それに合わせる様にして、シャルネ以外の皆んなが、ゆっくりと立ち上がった。
「ふぅ。それでは皆の者、決を採るのじゃ」
「左様に御座いますね、陛下」
「そうだのう。妾も暇では無いし、さっさと終わらせて、温泉にでも行くとしよう」
「それならば、儂と二人で行こうか。夫婦水入らず、ゆっくりしようぞ」
「ノイズと一緒に、祭りを回らねば」
「マズド卿、一緒に酒でも如何ですかな?」
「おぉ、それは良い。皆も行くであろう」
「「「良いですなぁ」」」
コイツらは、何を言ってるんだろう。
会議の決を採る?
会議が始まってから、議題も何も"聞かされていない"のに、決を採るって言ったのか?
「それでは……ファンガーデン領主、小々波流辺境伯を、海洋国家アルカディアスの、外交特使として任命する事、異議のある者はおるか?」
「「「異議無しっ!!」」」
んっ? 外交……特使?
「次に、セーフアースを、小々波流辺境伯固有の地とし、そこを拠点として、新大陸の調査に向かわせる事、異議のある者はおるか?」
「「「異議無しっ!!」」」
セーフアースを……拠点?
新大陸っ、ヴォイド大陸の調査っ!?
「ちょっ、待て待て待て待ていっ!?」
「その他の詳細は、外交官を通じて、取り決める事とする。会議はこれにて終了じゃ。レイズ国王よ、良いかの?」
「うむ。良き会議であったのぅ」
「シャルネ。妾達は温泉に行くので、貴女はそこの愚か者を、どうにかなさい」
「……仕方無いですわね」
足速に、皆様部屋からご退室。
じゃ無いわっ!?
「おいルシィっ! 待てお前らっ! 何無視して部屋から出てっ、ちょっと待てえええええええええええええええ────っ!?」
全無視って、酷く無い?
ルシィ、ナブリル、レイズ国王、ザマァス王妃、アズヴォルド卿、その他の貴族達。
皆んな、目も合わせてくれないんだ。
「……ドゥシャさん。もしかしてコレ、予定調和とか、決まってた事なの?」
「本来で御座いましたら、流様の意思を確認した上で、決まるモノに御座いました」
「やられましたわね、流様。二ヶ国間での取り決めですので、流様が拒否をなさいますと、嫌がらせを受けますわ」
シャルネが言う、嫌がらせとは?
「何されんの……」
「お母様からのお手紙が、一日に百通は来るかと思いますの。それも、長文ですのよ」
「地味な嫌がらせだなっ!?」
皿くれお化けよりも、酷い量だぞ。
「それと、干物や魚醤の制限も、有りえますわね。流様の好物と、知られておりますもの」
「それはっ……やられると泣くぞっ!?」
「流様の弱点ですわね」
「魚醤や干物は、猫人の好物に御座います。これが入って来なければ、気分屋の猫人が、どの様な行動に出るか……」
要は、会議が上手く進んでも、進まなかったとしても、そのカードを切られれば、俺は従うしか無かった訳だ。
「会議と言いながら……議論しないとかっ」
ヴォイド大陸の調査、やるしか無いのかぁ。
「流。兵装を解除しても、宜しいですか」
「ああ。兵装解除して、業務に戻ってくれ」
「了」




