4話 会議は踊らずされど進む.2
小々波流の、マッサージ術。
先ずは肩を揉む前に、後頭部の下、首の上辺りの半棘筋と、その下辺りの頭板状筋を、優しく揉み解します。
「あぁっ、んっ、はぁ……」
強くやり過ぎると、首を痛めてしまうから、整体や整骨院などの、その道のプロに任せた方が、安全に施術してくれるぞ。
「ふぅ……んんっ!?」
そのままゆっくりと、背骨に沿う様に、下へ下へと押して行き、凝りをコリコリ、固いな。
その次に、両肩を持ち、後ろへグイッと引っ張って、背筋全体を刺激する。
「おぉっ、はぁぁぁっ……」
良く解れたら、首周りの筋肉を意識して、ゆっくりと首を、右回転、左回転、右回転、左回転と、交互に回しましょう。
ここからは、ちょい痛いぞ。
僧帽筋をぐりぐり解しながら、ついでとばかりに、鎖骨の上辺りの凹みを、ぐりっと。
「んんんっ……っ、んんっ」
後ろ側だけ解しても、意味が無いからな。
鎖骨乳突筋や、鎖骨下の胸筋上部も解さないと、バランスが悪い。
「ああんっ!?」
後は、柔軟体操とまではいかんでも、ラジオ体操でも良いから、肩周りを伸ばす事。
「ふぅ……」
背筋を意識しながら、腕をピンっと上に伸ばして、ゆっくり下すだけでも、凝りの改善には役立つから、やってみてくれ。
「今やった事は所詮、素人療法だ。下手にすると、"逆に体を痛める"から、必ず最寄りの、整体、整骨院に、相談しようっ」
流お兄さんとの、約束だぞ。
えっ、四十間際はおっさんだって?
寿命の半分以下だから、まだお兄さんだろ。
「で、ルシィ。会議終わった?」
「終わる訳無かろうが!? 儂らは一体っ、何を見せられておったのじゃっ!」
「ほいドゥシャさん、どうよ肩周り」
「流様の力が弱過ぎて、こそばゆいのを、耐えるだけに御座いました」
あっ、さいですか。
どうりで、妙に舐めかましい声を、上げていらっしゃった訳ですね。
「……男性陣共、椅子に座ってても、前屈みになってるの、バレてるぞーい」
「「「言わんで良いっ!?」」」
「ノリ突っ込み完璧かよ……レイズ国王は、普通にしてんのな。耐えたのか?」
「はははっ。儂は、ザマァス一筋なのでな。妃以外だと、背が低くて燃えぬのだ」
レイズ国王……隣のザマァス王妃が、顔を真っ赤にしてんだけど、惚気か?
「世界樹の葉と、オークの睾丸を配合した、特別薬……持って帰るか?」
「コホンッ、婿殿……妾が貰い受けよう」
あっ、レイズ国王が必死に、首を左右に振ってたの、見逃してたわ。
御免ねっ、レイズ国王様。
「で、ルシィ。会議終わった?」
「っ、ドゥシャっ! その男を何とかせいっ!」
「陛下……今更に御座います」
「むきいいいいいい────っ!? さっさと会議を進行せぬかっ! ナブリルっ!!」
部下に八つ当たりとは、酷い女王だな。
でも残念、会議は進行しないぞ。
なぜなら今のナブリル君は、椅子から立ち上がる事などっ、不可能だからだっ!!
「ちょいちょい、ルシィさんや」
「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、何じゃっ!!」
「あまり煩いと、レイズ国王に失礼だろ?」
「────っ、貴様がソレを言うなあああああああああああああああ────っ!!」
会議室に居る全員が、耳を塞ぐ程の大絶叫って、本当に迷惑な女王様だ。
コンコンッ────『流。ミルン御嬢様より、煩いとの御言葉を、伝えに参りました』
「ほらぁ。ルシィの所為で、ミルンが怒だぞ」
「儂の所為では無かろうがっ!?」
「ドール。ルシィには、言って聞かせるからって、ミルンに伝えておいてくれ」
『了。ミルン御嬢様に、お伝えします』
「儂の所為にされたじゃとっ!?」
何を言ってるんだルシィ。
ルシィの大声の所為で、ミルンが怒なんだから、ルシィが十割悪いに、決まってるだろ。
「さっ、小々波閣下。陛下を揶揄われるのは、ここ迄にして、会議を進めたいと存じます」
「おっ、ナブリル君復活じゃん」
「ゴホンっ。それでは只今より、新大陸調査に向けた、二ヶ国同盟会議を始めます」
やっぱり、その事だよな。
恐らくではあるが、俺の居ない間に、行われた会議とやらは、セーフアースからの海路を使った、輸送の税に関する事だろう。
「ボソッ(後は、領土問題か……)」
ヴォイド大陸を発見したのは、俺。
んで、立場的には、ジアストールの貴族。
と言う事は、ヴォイド大陸の、調査如何によっては、ジアストールの領土となり、アルカディアスが挟まれちゃう。
「同盟会議開始に伴いまして、先ずはレイズ国王より、小々波閣下に、お話が御座います」
大国である、海洋国家アルカディアスは、それを踏まえた上で、どう出るか。
「ふぅ、ようやく本題に入れるな。小々波伯。いや、流殿。儂からの、お願いが有るのだが、聞いてくれるかね?」
「返答は、聞いてからが基本だろ」
「それもそうであるな。では、簡潔に。小々波流殿。貴殿を、我が海洋国家、アルカディアスの……"公爵"に叙する」
「…………「「「えっ?」」」
ジアストール側全員が、『えっ?』てなったんだけど、これ……どう言う事態なの?
「ドゥシャさん、何か知ってた?」
「存じ上げません。これは、不味い状況に御座います。陛下の目の前で、この様な……」




