3話 祭りをのんびり楽しむデー.4
ミルンと焼き串を頬張りながら、どんな屋台が出ているのかを、散策中。
「衣類、焼き串、宝飾、焼き串、調度品、焼き串、果物、焼き串……焼き串の屋台が多いな」
「ムゴムゴっ、お肉の種類が違うの。あそこの屋台はコカトリスで、あっちの屋台は、オークのお肉を使ってます」
「一目で分かるの、ミルンだけじゃね?」
「ゲフッ、お肉屋さんも、出来るよ? 髪の毛にくるくるプスっと、後で捨てるっ」
ミルンさんや……自然な動きで、食べた後の串を、俺の頭に刺すの、止めて欲しいなぁ。
「にしても、娯楽が無い……」
「楽しくないの?」
「ミルンと一緒にお散歩だから、楽しいぞ」
「むふふっ、ミルンも楽しいの」
楽しいのは嘘じゃ無い。
けどね、俺の祭りのイメージと、かけ離れ過ぎていて、少し残念な気持ちだ。
輪投げ、射的、籤引き、金魚掬い等々、子供が楽しめる屋台が、全く無い。
そう言えば和土国に、駒はあったな。
「何か流行らせてみるか……」
「お父さんのお顔が、また変なお顔なの」
「変な顔はしてないぞーい」
ミルンのお顔がひょっこりと、肩の上から、覗き込む様に、俺の顔を見て来るっ、マジ天使っ。
「ミルンは可わっ……口の中痛てぇ……」
「お口直しに、甘々食べる?」
「どこか良いお店でも、知ってるのか?」
「ミルンのお店なの」
ふーん、ミルンのお店ねぇ。
ミルンのお店?
んんんっ? ミルンのお店?
「それって、飲食のお店なのか?」
「お茶屋さんっ! 今日はお団子の日っ!」
「へぇーっ……」
俺の知っている、ミルンのお仕事一覧。
居住区、消費者金融ミルン。
商業区、ミルン工房。
鉱山、犯罪者更生施設。
そして今日、ここに新たに、お茶屋が追加。
「なあミルン」
「なあに?」
「税金、ちゃんと払ってるよね?」
「勿論なのっ。収支報告書を、ドゥシャに提出してるから、完璧っ!」
十歳の犬耳天使が、収支報告書の提出を、嬉々として語っています。
「完璧ねぇ……暇が出来たら、その収支報告書、俺も見るからな」
「お父さんに、暇はないっ」
「暇は無くとも、見るからな」
「見なくて良いのっ」
この焦り様、確実に、脱税してるだろ。
しかも、ドゥシャさんと結託して。
最強タッグですか?
「……程々にな?」
「お茶屋っ! お茶屋に向かうのっ!」
「はいよ。指差し案内よろ」
「あっちっ!」
誤魔化すのに必死な、ミルンさん。
ポタポタと俺の頭に、冷や汗を垂らしているけども、串刺さったままだからね?
「帰ったら、頭洗うか……」
ミルンナビにて、お茶屋に御到着。
遠目から見ても分かる、立派な木造建築で、店員達も、見事な着物。
「和土国のお茶屋、そのまんまじゃん」
「のんのん。ちゃんと、こっちの良い所も、取り入れてるのっ。コレとか!」
「あーっ、確かに。和土国だと、爪楊枝だったけど、フォークにしたのか」
しかも、純銀製のフォークっぽい。
確か、銀製の物は、ヒ素に含まれる何かが反応して、黒くなるんだったか。
「それだけじゃ無いの。お団子を作ったら、必ず一度は、決まった場所に置くの」
この話の流から行くと、毒対策の銀製品は、あくまで保険だろうな。
置くだけで、無毒化出来る物と言えば、今のところ、一つしか思い浮かばない。
「……勝手に屋敷の皿、持ち出したな」
「一枚だけっ、一枚だけだから、大丈夫っ」
「数は有るから良いけど、割っちゃ駄目だぞ」
「勿論なの。落とさない様に固定してるし、触って良いのは、お団子職人の、四人だけっ」
パリィンッ────『てめえっ、何やってんだっ!? それっ、殺されるぞっ!』
肩の上のミルンが、固まった。
そうだよね、この店の奥で、今正に、何かが割れる音が、ハッキリと聞こえて来たから。
噂をすれば、何とやらだ。
「ミルン。固まったままで、良いのか?」
「ハッ!? こうしちゃいられないのっ!」
シュバっと肩から飛び降りて、『何割ったのおおお──っ!!』と、激怒ミルンが、お店に突っ込んで行った。
「ミルンのお店だし、座って待っておくか」
縁台に、赤い布まで再現って、凄いな。
「どっこいせっ……和むわぁぁぁ……」
座り心地がね、良い感じなの、この縁台。
掛けられている布が、もうふわっふわっ。
素材が何なのかは、分からないけど、手触りも抜群だし、ずっと座って居たくなる。
「いらっしゃいませ。御注文を、お伺い致しますうううっ!? 御領主様っ!?」
「お団子一つと、渋めのお茶で。幾ら?」
「えっ、ええっと、銅貨二十枚になりますっ!」
「二千ストール……米、高いからなぁ。ほい、銅貨二十枚。お茶を先に頼むわ」
「かっ、かか畏まりましたっ!」
走って行ったなぁ。
御領主様とか言われると、物凄くむず痒いと言うか、居心地悪くなるんだけど。
「なんちゃって領主だから、変に気を使わんでも、良いと思うんだ……」
高圧的な態度で来られると、こっちも黙っちゃいないけど、タメ口程度なら、問題無いぞ。
『ミルンのお皿ああああああ────っ!?』
店の奥から、時間を置いての、ミルンの叫びが木霊するって、結構間があったな。
チラッと店の中を覗くと、さっきの店員さんが、お茶を持って来てるわ。
うん、バッチリ目が合いました。
「お待たせ致しましたっ、お茶になりますっ! お団子の方はっ、今暫くお待ち下さいっ!」
「いやっ、催促してる訳じゃ無いから、そんな緊張しなくても良いって」
「しっししっ、失礼致しますっ!」
領主って、こんなにも怖がられるのか。
「ズズッ……旨い茶だぁ。ドールとは雲泥の差」
時間を確認すると、十一時半。
もうそろそろ、館へ戻らないと、貴族会議に遅れてしまい、ドゥシャさんに怒られる。
「ミルン、戻って来ないな」
あまりに遅かったら、見に行ってみるか。




