3話 祭りをのんびり楽しむデー.3
人気の屋台の正体は、甘辛ソースが癖になる事間違い無しの、焼きそばっぽいモノだった。
ついでに、かき氷も売っていた。
二つ合わせて、銅貨十枚。
千ストールって、ぼったくりじゃん。
「副業許しちゃ駄目っ!」
「ミルン。部隊には、副業禁止なんて決まりは無いし、税が入るから、寧ろオーケーだぞ」
「えぇっと、なぜお二人が? 領主館で、パーティーをなさってる筈では……」
「それは昨日だっての」
今日と明日は、ミルン達と遊ぶついでに、他の貴族との会合や、ルシィに施設を慰問して貰ったり、アズヴォルドの件をどうするのか、考えるぐらいだ。
うんうん、地味に忙しいな。
特に、貴族の会合とかよ。
「……んでさ、ルトリア。二つで銅貨十枚って、ぼったくりにしては、酷すぎないか?」
「うぅっ、こっ氷の値段が高いんですよ。この道具も、そこそこ値が張りましたし」
かき氷マシーン異世界バージョン。
見た感じ、相当使い込んでるっぽいけど、そんな道具あったんだな。
「それって、どこで手に入れたんだ? あっ、俺はかき氷で。ミルンは二つともだよな?」
「シャクシャクとソースっ!」
「流れの商人からっ、買いました。かき氷のソースは、何味にしますか?」
かき氷には、シロップと言って欲しい。
かけるモノとしては、間違っていないけど、焼きそばにソースで、かき氷にもソースだと、頭が混乱してくるんだよ。
「ミルンはすっぱいの!」
「んじゃぁ、俺は赤いので」
「畏まりました。少しお待ち下さいね……」
焼きそばっぽいのを作りながら、かき氷マシーンも手際良く動かすって、器用だな。
何を隠してるのか知らんけど、この人、アルテラには結構甘いから、それ絡みか?
アルテラ……?
アルテラなら、氷ぐらい出せるよな。
んで、アイツは神様の一柱だし、かき氷マシーンを知ってても、おかしく無い。
「なあミルン。氷が無料で、道具も無料。それ以外の材料費だけなら、販売価格は、幾らになると思う?」
「その食べ物は、芋粉を使ってるの。お芋は、キロ単価百五十ストールだから、お祭り価格だとしても、二百五十ストールが妥当なの」
ルトリアさんの顔色を窺うと、良い感じに目が泳いでいて、汗も凄いな。
「んじゃ、かき氷の値段はどうだ?」
「ソースのお値段に、少し上乗せしても、百ストールが良いところなの」
このお店の表記で、計算してみます。
焼き物、五百ストール。
氷菓子、五百ストール。
ミルンは一つずつ買って、俺はかき氷だけだから、合計は千五百ストールだ。
銅貨十五枚分だな。
それじゃあ、ミルン算ではどうか。
焼き物、二百五十ストール。
氷菓子、百ストール。
俺とミルンの分を合わせても、銅貨四枚と石貨五枚の、四百五十ストールとなる。
「なあルトリア」
「ひっ、はっ、はい!」
「祭りだから許すけど、通常時にこんなんしてたら、また剥いて、牢屋放置だからなって、アルテラに伝えておいてくれ」
「分かりましたっ、必ず伝えます!」
少し離れた所で、俺の後の人が苛々して待ってるから、今日はお咎め無しだ。
「お待たせしました! 焼き物は熱いので、気を付けてお持ち下さいね!」
「ありがとさんっと。ほい千五百ストールな」
「有難う御座います! 次の方どうぞーっ!」
ルトリアの屋台から離れ、熱々の容器と、冷たい容器を抱えて、どこで食べるか。
勿論決まっている。
ファンガーデンが誇る、デートスポット。
世界樹がランドマークの、湖のベンチだ。
「どっこいせっと。ほれミルン、ここに座って食べなさいな。二つだから流石に、俺の頭は皿に出来ないぞ」
「仕方無いの。んしょっ、食べる!」
ミルン合体を解除して、横に並んで座り、いざっ、実食タイムです。
「それじゃあ、頂きます」
「頂きます! ズゾゾゾゾゾゾッッッ!!」
「ストップミルン!?」
「ズゾッ、なあに?」
焼きそばは、飲み物じゃあ無い。
付属の割箸を使わずに、飲み込む様に食べるなんて……ビックリしたわ。
「ちゃんと、お箸を使いなさい」
「むぅ……飲み込んじゃだめ?」
「駄目だ。今の姿を、万が一ドゥシャさんが知ったら、お野菜多めのご飯になるぞ?」
「それは嫌っ。お箸使います」
和土国で、箸の使い方をマスターしてるから、問題無く使えるだろう。
それなのに、さっきの行動……余程焼きそばが、楽しみだったのだろう。
「ずぞっ……ソースが甘辛で、こっちのシャクシャクと交互に食べると、無限にイケるのっ」
「無限は止めてね。黄色は柑橘系の果物か……それじゃあ、俺の赤いのは……っ!?」
「お父さん? 赤いの美味しい?」
さて皆様。食べ物で、赤いモノと言えば、何を思い浮かべるだろうか。
林檎。
苺。
桜桃。
他にも色々な、果物があるだろう。
しかし、赤い色の食物は、別に果物だけと言う訳では無く、他にも存在する。
香辛料。
そう、香辛料だ。
しかも、食べ過ぎると、トイレに籠ってさあ大変! 紙が無くなりどうしよう!!
そんな事になり得る、香辛料。
肉料理のアクセントに!
海鮮スープに混ぜるのも悪く無い!
でもね、どろどろの液状にして、かき氷にたっぷりとかけるのはね、違うだろ!!
「お父さん?」
「ミルっン……少し、耳を塞いででぐれ……」
「お口が真っ赤なの!?」
そりゃあね、タラコ唇さ。
しかもその辛さがね、食道を通って、胃に来てるの分かるし、明日は尻が破壊です。
「ふぅ……っ、アアアルテラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア────っ!!」
ピンポンパンポーン(上がり調)
レベルが上がりませんでした(痔になる瞬間っ)
ピンポンパンポーン(下がり調)
コレはかき氷じゃ無い。
拷問にも使えるだろう、ただの凶器だ。
考案者は間違い無く、あの桃色お化けコト、アルテラの糞女神様だろ。
次見つけた瞬間に、顔面グーぱん確定です。
「てっ、何が痔になる瞬間だっ!? なってたまるかっ! お前っ、何処にいやがるっ!」
「また聞こえたの?」
「ああっ、あのリシュエルだ。煽るだけ煽って、またレベル上げないとか……痔って……」
「ミルンの、一口食べる?」
「……有難うミルン。一口だけ貰うよ」
ミルンのかき氷は、柑橘系の果実そのモノ。
何で赤いのは、果物じゃ無いんだ。
と言うか、リシュエルの奴……ここ最近音沙汰無かったのに、急に来るとか。
「ご馳走様っ。次はお肉を食べる!」
「あの屋台だな。昼になったら、領主館へ戻るから、それまでだぞ?」
「かしこまっ!」




