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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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3話 祭りをのんびり楽しむデー.2



 ミルンのナビにより、屋台が軒を連ねる、商業区に来たんだけど、確かに並んでいる。

 十時オープンなのに、既に十人程だろうか。

 屋台は閉まっている為、看板も無く、本当に何の屋台なのかが分からないが、並んでいる。


「シャクシャクじゅわぁ、楽しみっ!」


「開店まであと、一時間以上も有るのに、本当に人気の屋台なんだな」


 シャクシャクじゅわぁは分からんが、こんなにも人気なら、少しは期待出来そうだ。


「んーっ、にしても、視線が痛い……」


「お父さんは、人気者?」


「服が不味かったかなぁ」


 昨日の正装そのまんま着たから、行き交う人達が、チラチラと見て来る。

 でも、この視線……俺の上を見てるよな。

 可愛いミルンに釘付けか?


「これ、ミルンへの視線だぞ」


 ミルンは、お出かけ用の服だ。

 お気に入りの、天使の羽根の刺繍がされた、可愛いワンピース。

 はい。ケモ耳天使の降臨です。


「ミルンは見られても平気っ。嫌な視線なら、近付いて玉潰すの!」


「見てるだけなら、放置しときなさいな」


 実害が無いのなら、放置一択だ。

 どうやら、貴族達に付いてきた兵や従者達が、色々と見て回ってるっぽい。

 そんな中で、領主が列に並んでいるから、気にならない訳が無いのだろう。


「今思い出した。結局、クズール君来なかったな。折角手紙送ったのに」


「大丈夫っ。別荘の権利書は押さえたから、いつでも遊びに行けるの!」


「……何それ? 別荘の権利書?」


「管理人は、ウザ子にしたから、安心安全っ」


 あの影さんが、管理人?

 もしかして、数ヶ月前に来てたのって……コレは、考えたら深みにハマるヤツだ。


「取り立ても完了したから、ホクホクです」


 ミルンさんや、確かクズール君は、子爵家の嫡男だった筈だけど、その子爵家に取り立てって、何したのその子?

 聞きたいけど、怖くて聞けない。

 

「あまり無茶はするなよ」


「りょっ。危なくなったら、お父さんに攻め込んで貰うから、安心っ」


 それは……攻め込んだ先に、隕石落とせと?

 

「なんやアンタら、物騒な話しとるな」


 ミルンとのお喋りを楽しんでいたら、通行人が立ち止まり、話しかけてきた。

 和服っぽい姿に、白髪青目の無い乳娘。


「リティナなの」


「リティナだなぁ」


「淡白っ! いつもならウチに会うなり絡んで来るのにっ、何やそん目は!?」


「某スナギツネの眼差しだ」


「それなあに? 狐人?」


 そういや、狐人の中にも、無を感じる眼差しの奴が、居た様な居ない様な。


「何考えてるかっ、分からへん目を"すな"!?」


「"スナ"ギツネだけに?」


「お父さん十点! 百点満点中なの」


 ミルンの辛口酷評です。


「リティナの突っ込みが、甘いからだぞ」


「何の事やねん!?」


 ゼェゼェと、息を切らせるリティナを眺めながら、周囲を確認する。

 麗しの猫耳メイドが居ないな。


「リティナは、また一人か」


「流にーちゃんと話すと、ほんま疲れるわ……ニアならまだ寝とるで。昨日の枕あるやろ? アレの所為で、中々起きへんのや」


「ふかふか枕! 一度使ったら、二度寝三度寝は当たり前なのっ!」


「何やその効果……で、アンタらは二人して、何してんの。けったいな行列やけど、何かオモロいモンでもあるん?」


「俺は知らんぞ。ミルンが食べたいって言ったから、こうして並んで……列増え過ぎっ!?」


 リティナと話をしていて、気づかなかったが、いつの間にか俺の後ろに、何人? 何十人と並んでいるこの状況。


「人いっぱいいる。早めに来て、正解っ」


「こんなにも人気だとはな。ミルンの言う通り、早めに来といて良かったぞ」


「何や、こない並んで、けったいな連中やなぁ。ウチは治療院に戻るけど、変ないざこざ起こさんといてや」


 そう言ってリティナは、歩いて行った。

 失礼だと思わんのかねぇ。

 まるで俺が、諍いの元の様な言い草だったけど、人畜無害な中年なのに。


「争いなんて、真っ平御免」


「お父さんの口から、変な言葉が聞こえるの」


「待て待てミルン。俺から争った事なんて、今まで一度も無いだろ?」


「ぬーんっ……」


 肩の上で腕を組み、色々思い返しているっぽいけど、やられたらやり返すだけで、俺から手を出した事なんて、無い筈だ。

 無い筈……無いよな?


 ガラガラッ────『少し早いですがーっ、今からお店を開けまーすっ!』


 いつの間にか、九時四十五分。

 ミルンは考えたままだけど、ようやく、良く分からない料理? との御対面だ。


「お父さんから……手を出した事……」


「なあミルン。そんな無理に思い出そうとしても、無駄だと思うぞ」


「ぬーんっ……」


『前の方から順に、お進み下さーい』


「ほれミルンさんや。屋台が開いたぞ」


「シャクシャクじゅわぁっ!」


 ミルンの意識が、屋台に向いてくれた。

 背中に尻尾がタシタシと、ヒットアンドアウェイを繰り返して、気持ちが良い。

 

「なんだこの匂い?」


「ソースの、良い香りがするの!」


 一人、また一人と列が進んで行き、ようやく匂いの元凶の前まで、到着した。

 そして、見た事有る人が、居るんです。


「いらっしゃ……流さん!?」


 調理用の鉄板の向こうに、桃色お化けの信者コト、神官のルトリアが、額に汗をかきながら、焼きそばの様なモノを作っていた。


「ルトリア。お前補給部隊の一員なのに、何で屋台なんかしちゃってんの?」


「副業禁止なの! ギルティっ!」



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