3話 祭りをのんびり楽しむデー.1
三月七日、午前八時を、お知らせします。
昨日の疲れが、全く抜けない。
七時に目が覚め、ベッドに横になりながら、腕時計を眺める事一時間。
「……ミルンさんや、怖いから止めて?」
いつの間にか、ミルンが部屋に侵入して、ベッドの端から、ジッと見つめて来るんです。
圧で俺を、起こそうとしてないか?
「ボソッ(屋台開いてるのっ)」
何故に小さい声で言う。
屋台開くのは十時からだし、もう少し惰眠を貪っても、問題無い時間だろ。
「ボソッ(並ばないとっ、食べれないのっ)」
並ばないと食べられない?
今回の屋台は、ヤナギが中心となって、なんやかんやとしてるけど、並ばないと食べれない屋台なんて、あっただろうか。
「ボソッ(ひんやりシャクシャクするのっ)」
何それ、かき氷?
昨日しこたま残り物食べたから、胃もたれ中のこのお腹には、良い食物だけどさ。
「ボソッ(甘々の汁が、かけられてるのっ)」
それは……かき氷だな。
朝から並んでかき氷って、この異世界だと、贅沢な気がするぞ。
「ボソッ(ソース味が、人気なのっ)」
んっ? かき氷じゃ無いのか?
氷にソースをかけても、ただの冷たいソースを飲むだけだし、それなら要らないぞ。
「ボソッ(果物ものってて、甘々なの)」
やっぱりかき氷なの?
さっきのソースは意味不明だけど、果物がのった、ひんやりシャクシャクなら、かき氷しか無いだろう。
「ボソッ(肉汁たっぷり、じゅわぁなのっ)」
駄目だっ、埒が開かない。
ミルンの説明だと、かき氷なのか肉料理なのかが、判断出来ない。
ひんやりシャクシャクの食感で、甘々の汁がかれられてて、ソース味が人気なんだけど、そこに果物ものせられてて、肉汁が溢れ出す。
「……何それ?」
「ボソッ(並んで食べるっ)」
旅行から帰ってきてから、ミルンを構う時間が無かったから、丁度良いのかね。
「ミユンとか、ピュアはどうした?」
「今日は、ミルンと遊ぶ日!」
「成程、そう言う事だなっと」
ベッドから起き上がり、いつもの服にスパッと着替えて、すかさずミルンをセットイン!
一分で完了してやったぜ。
「ミルン装着完了!」
「ハッ!? ミルン反応出来なかったの!」
「甘いなミルン。その気になれば、三十秒で支度できる、流さんだぞ」
「お父さんが、気持ち悪いっ」
「ミルンさんや、寝ても良いかい?」
「駄目っ。前進よーそろっ!」
扉を指差し、さっさと歩けと指示ですね。
昨日の慌ただしさから一変して、この時間にも関わらず、通路で誰とも遭遇しない。
「皆んな、疲れてるのかね」
「ミユンとピュアは、起きてたの。二人で水田に行って、頑張るんだって」
「有難いな。ドゥシャさんとシャルネは、何してるか知ってる?」
「王様達連れて、温泉に行ったの」
「……裏山か」
ルシィに、レイズ国王とザマァス王妃を連れて、温泉に行くとか……濃いメンバー過ぎる。
どうりで、お付きの人達も居ない訳だ。
静かで良いねぇ。
「ノイズ嬢とは、祭りを回らないのか?」
「それは明日! 今日は疲れて寝てるの」
そりゃぁ、そうだ。
東の国境付近から、二ヶ月以上かけてまで、このファンガーデンまで来たからな。
来て直ぐ昨日のアレだったし。
疲れない訳が無い。
「他の貴族達も、まだ寝てるか……」
そう思って、庭に出た。
だよな。
この筋肉が、疲れるとか無いわ。
「ふんっ! ふんっ! おはよう流君!」
「朝っぱらから、人ん家の庭で、何してんの?」
「半裸の筋肉なの!?」
異世界だから許されるが、もしも日本で、こんな筋肉が、上半身をムキムキさせながら、庭で変なポーズをとっていたら、事案です。
「ちょっとした、朝の運動であるっ!」
「胸筋をピクピクさせんなっての!?」
「ふむっ、運動は大事であるぞ?」
「村長のは、運動なのか……」
ミルンが首を、横に振っているから、どうやらミルン的には、運動じゃ無いらしい。
「村長は、今日の昼に帰るんだっけ?」
「うむ。ミウとメオに、土産を買ってから、ミユン君に送って貰うのだ」
「見送りはしないぞ?」
「要らぬのである。次に会うのは、米の相談をする時であろう」
「だな……っとそうだ、『空間収納』っと。ミウとメオの分の、効果付きネックレスだ。防ステ十パーアップの、レアな物だぞ」
しかも、この二つのネックレスは、銀では無く、全てがミスリルの、特別製だ。
ミウとメオは、今でも大事なメイドだし、安全面を考えたら、これぐらいは必要だろう。
「ほい村長。二人に宜しくな」
「っ……この輝きは、ミスリルであるか。昨日貰った、ネックレスもそうであるが、効果付きの物を、こんなにも揃えるとは……」
「そこは企業秘密だぞ。にしても、一目でミスリルって、分かるもんなんだな」
「うむ。帝国の鉱山で、ミスリル鉱床を見つけたのでな。量が溜まれば、流通させるのであるぞ。買うかね?」
「そこは、状況次第だな」
どうやって帝国の鉱山を……何て聞いても、そこは教えてくれないだろう。
ミスリルは、ほんの少量であれば、管理している鉱山から出たけど、鉱床って程でも無い。
少しだけ、羨ましいな。
「お父さん! 列が出来ちゃうの!」
「っと、御免御免っ。ほいじゃ村長、そっちに行った時にでも、話しようぜ」
「分かったのである。それまでには、領地の土壌を、改善しておこう」
そうして、村長と軽い握手をしたけど、筋トレ後だったのを、忘れていた。
滑っとしてました。
もう本当に、滑っとしてました。




