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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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2話 婚約御披露目パーティー.10



 一等の景品として、冷刀を出した。

 それが不味かったのだろう。

 ミルンが『壁を打ち抜くの!』と、気合を込めてボールを投げると、途中で何かに弾かれた様に曲がり、番号に穴を開ける。


「曲がったの! なんで?」


 ミユンが『えいっ!』と投げると、ボールが急激に跳ね上がり、番号に穴を開ける。


「ボールが飛んだの!?」


 ルールには、投げた後のボールの事なんて、決めていないけど、ヤル気出しすぎじゃね?


「今のって、暗部マダム達か?」


「かと存じます。現役を退いても尚、衰えておりませんね。流石に御座います」


「冷刀……そんなに欲しいんだ……」


「アレは、国宝級のお宝ですわ。お父様とお母様の目の色も、変わってましてよ」


 貴賓席に座っているレイズ国王と、ザマァス王妃を見てみると、確かに。

 目が血走ってて、怖い。

 ルシィに至っては、『景品で国宝級ぅぅぅっ』と頭を抱えて、唸る始末だ。


「まだお宝、有るんだけど……」


 それこそ、ルシィが持っている"御使の剣"なんて、フードとセットで五組有るし、性能的には、冷刀の方が劣るのになぁ。

 試しに、もっと煽ってみるか。


「えーっ、皆様。言い忘れていましたが、一等には副賞として……このお皿をプレゼント!」


 脂の皿。

 効果、カロリーオフ。

 どんなギトギト脂肉も、このお皿に乗せて食べれば、あら不思議。余分な脂がカットされて、ヘルシーに食べる事が出来ます。


「「「そのお皿っ、私が貰う!!」」」


「うひっ、煽りすぎた!?」


「流様……女性にソレは、国宝よりも高価かと」


 ミルンとミユンが、妨害に負けじと、頑張ってボールを投げるが、本気を出した暗部マダムの力には、及ば無い様だ。

 しかし残念。

 最初の数投を当てていない者には、一等の可能性が無いからな。


「ビンゴですぅ!」


「おっと、ここでビンゴ宣言!」


「枕を下さぁい」


 流石猫耳ニアノールさん。

 冷刀には目もくれず、しっかり枕をゲットして、すかさず顔をボフッとしたぞ。

 

「もう四十投なのに、誰もビンゴしないな……」


「皆様、一等か二等を狙っているのではと、存じます。その二点は、貴重に御座いますので」


「世界樹の葉も、あるのに?」


「リティナ様の薬が御座いますので、貴重では御座いますが、その二点には劣るかと」

 

「ふーん。もしこれで、他のビンゴ出なかったら、最後はくじ引きでもやるか」

 

 喧騒の中、ボーっと見守っていると、いつの間にか、最後の一投となった。

 来賓者達を見ると、皆んながどんよりと、暗い顔をしてるし、一人もビンゴが居ないの?

 いや、一人だけ居た。

 ザマァス王妃が、鼻息を荒くしながら、『ほれ娘! 七番! 七番を当てよ!』と、大声で叫んでいる。

 最後の一投はミユン。

 七番は上の方で、ミユンの肩では、上手く当てる事は、出来ないだろう。

 そして何より、ミユンは上から目線の言葉を嫌い、気分屋さんの精霊なのだ。


「むむむっ、えいっ!」


 はい、九十七番当たりました。

 会場がシーンと静まり返る。

 そんな中、ぴちぴちスーツの村長が、手を挙げた。



「むっ? 今気付いたのであるが、全て当たっておるな。ビンゴである?」



 番号確認に手間取っていたとか、そこだけは、年相応の能力なんだな。

 俺は、景品受け渡し係のアトゥナと共に、村長の持つ紙を確認して、頷いた。

 見事なビンゴ。

 まごう事無き、一等賞。


「村長っ、頑張ってくれよ」


 冷刀とお皿を、村長に渡す。


「うむ? 米作りであるな。分かっておるわ」


 村長は全く、気付いていない。


「違う違う。周り見てみ?」


「周り? むっ!?」


 暗部マダム達に囲まれて、この場から逃がさないと、言わんばかりの圧が凄い。

 いつの間にか、ニコニコ笑顔のザマァス王妃も居るし、村長の地獄の、始まり始まり。


「なっ、流君っ! これを頂くのをっ、放棄とかは可能かね!!」

 

「放棄は却下だぞ。要らないのなら、誰かに高値で、売ったらどうだ?」


「儂は金二千を出すのじゃ! 他国の者にっ、国宝をくれてやる気は無い!」


 ルシィが飛び出し金二千。

 二億ストールか……国宝級にしては安いな。


「ふはははっ、ジアストールの小娘が。それなら妾は、金一万でも二万でも、言い値で買い取ろうぞ。額を申してみよ」


 流石大国、アルカディアスの王妃。

 言い値で買うとか、凄い事言ってる。

 んじゃ俺は、ネックレスを渡す準備をしなきゃだから、村長頑張れーっ。


「流君……何処へ行ったのだ流君!?」


 もう結構離れたぞ、グッバイ村長。




 村長が、御婦人方に囲まれているのを、遠目に眺めながら、茶を飲み一服。


「ふぃーっ、疲れた疲れた」


「お疲れ様です流様」


「見ていて面白いですわ」


 あの感じだと、最終的にザマァス王妃が勝ちそうだし、そろそろお開きだな。

 始まって直ぐは、婚約おめでとう会場だったのに、途中から馬鹿騒ぎの会だった。


「もう直ぐ終わりだけど、どうだった?」


「ふふっ、こう言うのも、悪くは御座いません」


「堅苦しく無くて、楽しかったですわ」


「そりゃ何よりだ……ミルンとミユンが居ない? どこか行ったのか?」


 ミルンとミユンにも、感想を聞こうと思っていたのに、姿が消えている。

 遠くから声が聞こえているから、二階か?

 ノイズ嬢の姿も見えないし、若しかしたら集まって、遊んでいるのかね。


「時間は、二十一時過ぎか……」


 アトゥナの指示で、メイド達がせっせと、ビンゴ大会の撤収をしている。

 これからメイド達は、各貴族を部屋に案内して、会場の後始末を終えたら、業務終了。

 

「メイド達にも、ボーナス出さなきゃな」


「そうで御座いますね。新人が多い中、良く働いたかと存じます」


「だよね。んじゃ、そろそろ村長助けて、ネックレスを贈ったら、終わりにするか」


 今回の婚約御披露目パーティーは、これで終了だけれども、これで収支がプラスとか、全く意味が分からんわ。

 各貴族からの贈り物。

 ルシィからの贈り物。

 レイズ国王からの贈り物。

 反対に、俺が贈った物と言えば、遺跡で手に入れた物ばかり。

 ネックレスは純銀製で、安物では無いが、値段は知れているし、付与はドールが行った。

 

「この建物と、設営費、食事代……それを差し引いても、大金が残るか……貴族怖えぇ」




 ミルンとミユンの誕生日は、また別の機会に。

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