2話 婚約御披露目パーティー.10
一等の景品として、冷刀を出した。
それが不味かったのだろう。
ミルンが『壁を打ち抜くの!』と、気合を込めてボールを投げると、途中で何かに弾かれた様に曲がり、番号に穴を開ける。
「曲がったの! なんで?」
ミユンが『えいっ!』と投げると、ボールが急激に跳ね上がり、番号に穴を開ける。
「ボールが飛んだの!?」
ルールには、投げた後のボールの事なんて、決めていないけど、ヤル気出しすぎじゃね?
「今のって、暗部マダム達か?」
「かと存じます。現役を退いても尚、衰えておりませんね。流石に御座います」
「冷刀……そんなに欲しいんだ……」
「アレは、国宝級のお宝ですわ。お父様とお母様の目の色も、変わってましてよ」
貴賓席に座っているレイズ国王と、ザマァス王妃を見てみると、確かに。
目が血走ってて、怖い。
ルシィに至っては、『景品で国宝級ぅぅぅっ』と頭を抱えて、唸る始末だ。
「まだお宝、有るんだけど……」
それこそ、ルシィが持っている"御使の剣"なんて、フードとセットで五組有るし、性能的には、冷刀の方が劣るのになぁ。
試しに、もっと煽ってみるか。
「えーっ、皆様。言い忘れていましたが、一等には副賞として……このお皿をプレゼント!」
脂の皿。
効果、カロリーオフ。
どんなギトギト脂肉も、このお皿に乗せて食べれば、あら不思議。余分な脂がカットされて、ヘルシーに食べる事が出来ます。
「「「そのお皿っ、私が貰う!!」」」
「うひっ、煽りすぎた!?」
「流様……女性にソレは、国宝よりも高価かと」
ミルンとミユンが、妨害に負けじと、頑張ってボールを投げるが、本気を出した暗部マダムの力には、及ば無い様だ。
しかし残念。
最初の数投を当てていない者には、一等の可能性が無いからな。
「ビンゴですぅ!」
「おっと、ここでビンゴ宣言!」
「枕を下さぁい」
流石猫耳ニアノールさん。
冷刀には目もくれず、しっかり枕をゲットして、すかさず顔をボフッとしたぞ。
「もう四十投なのに、誰もビンゴしないな……」
「皆様、一等か二等を狙っているのではと、存じます。その二点は、貴重に御座いますので」
「世界樹の葉も、あるのに?」
「リティナ様の薬が御座いますので、貴重では御座いますが、その二点には劣るかと」
「ふーん。もしこれで、他のビンゴ出なかったら、最後はくじ引きでもやるか」
喧騒の中、ボーっと見守っていると、いつの間にか、最後の一投となった。
来賓者達を見ると、皆んながどんよりと、暗い顔をしてるし、一人もビンゴが居ないの?
いや、一人だけ居た。
ザマァス王妃が、鼻息を荒くしながら、『ほれ娘! 七番! 七番を当てよ!』と、大声で叫んでいる。
最後の一投はミユン。
七番は上の方で、ミユンの肩では、上手く当てる事は、出来ないだろう。
そして何より、ミユンは上から目線の言葉を嫌い、気分屋さんの精霊なのだ。
「むむむっ、えいっ!」
はい、九十七番当たりました。
会場がシーンと静まり返る。
そんな中、ぴちぴちスーツの村長が、手を挙げた。
「むっ? 今気付いたのであるが、全て当たっておるな。ビンゴである?」
番号確認に手間取っていたとか、そこだけは、年相応の能力なんだな。
俺は、景品受け渡し係のアトゥナと共に、村長の持つ紙を確認して、頷いた。
見事なビンゴ。
まごう事無き、一等賞。
「村長っ、頑張ってくれよ」
冷刀とお皿を、村長に渡す。
「うむ? 米作りであるな。分かっておるわ」
村長は全く、気付いていない。
「違う違う。周り見てみ?」
「周り? むっ!?」
暗部マダム達に囲まれて、この場から逃がさないと、言わんばかりの圧が凄い。
いつの間にか、ニコニコ笑顔のザマァス王妃も居るし、村長の地獄の、始まり始まり。
「なっ、流君っ! これを頂くのをっ、放棄とかは可能かね!!」
「放棄は却下だぞ。要らないのなら、誰かに高値で、売ったらどうだ?」
「儂は金二千を出すのじゃ! 他国の者にっ、国宝をくれてやる気は無い!」
ルシィが飛び出し金二千。
二億ストールか……国宝級にしては安いな。
「ふはははっ、ジアストールの小娘が。それなら妾は、金一万でも二万でも、言い値で買い取ろうぞ。額を申してみよ」
流石大国、アルカディアスの王妃。
言い値で買うとか、凄い事言ってる。
んじゃ俺は、ネックレスを渡す準備をしなきゃだから、村長頑張れーっ。
「流君……何処へ行ったのだ流君!?」
もう結構離れたぞ、グッバイ村長。
村長が、御婦人方に囲まれているのを、遠目に眺めながら、茶を飲み一服。
「ふぃーっ、疲れた疲れた」
「お疲れ様です流様」
「見ていて面白いですわ」
あの感じだと、最終的にザマァス王妃が勝ちそうだし、そろそろお開きだな。
始まって直ぐは、婚約おめでとう会場だったのに、途中から馬鹿騒ぎの会だった。
「もう直ぐ終わりだけど、どうだった?」
「ふふっ、こう言うのも、悪くは御座いません」
「堅苦しく無くて、楽しかったですわ」
「そりゃ何よりだ……ミルンとミユンが居ない? どこか行ったのか?」
ミルンとミユンにも、感想を聞こうと思っていたのに、姿が消えている。
遠くから声が聞こえているから、二階か?
ノイズ嬢の姿も見えないし、若しかしたら集まって、遊んでいるのかね。
「時間は、二十一時過ぎか……」
アトゥナの指示で、メイド達がせっせと、ビンゴ大会の撤収をしている。
これからメイド達は、各貴族を部屋に案内して、会場の後始末を終えたら、業務終了。
「メイド達にも、ボーナス出さなきゃな」
「そうで御座いますね。新人が多い中、良く働いたかと存じます」
「だよね。んじゃ、そろそろ村長助けて、ネックレスを贈ったら、終わりにするか」
今回の婚約御披露目パーティーは、これで終了だけれども、これで収支がプラスとか、全く意味が分からんわ。
各貴族からの贈り物。
ルシィからの贈り物。
レイズ国王からの贈り物。
反対に、俺が贈った物と言えば、遺跡で手に入れた物ばかり。
ネックレスは純銀製で、安物では無いが、値段は知れているし、付与はドールが行った。
「この建物と、設営費、食事代……それを差し引いても、大金が残るか……貴族怖えぇ」
ミルンとミユンの誕生日は、また別の機会に。




