2話 婚約御披露目パーティー.9
ドゥシャさんとシャルネが戻って来て直ぐ、来賓者達に、とあるモノを配った。
縦横十のマスに、一から百までの数字が、ランダムに書かれ、その裏には、今回の景品目録が記されている紙だ。
ビンゴゲーム大会、景品一覧。
全員配布・効果ランダムネックレス。
五等・ハーピィの枕。
四等・ミルン工房家具一式。
三等・世界樹の葉五枚。
二等・浄化の皿と浄化の杯のセット。
一等・ゲーム中に発表!!
「アナタっ、二等! 二等が欲しいわ!」
「ザマァス、落ち着きなさい」
「ハーピィの枕っ、欲しいのじゃ……」
レイズ国王とザマァス王妃は、二等狙い。
ルシィは枕が欲しいのか。
ハーピィ達の羽毛は貴重で、ファンガーデン製の物は痛んでおらず、質が良いからな。
「エトワル達の、抜け毛だけど……」
抜け毛だから、エコと言えなくも無い。
会場の貴族達も、各々欲しい物に、目星を付けてるっぽいけど、こればかりは、ゲームに勝つしか無いな。
「ヘラクレスは何狙ってんの? ウチは断然、一等狙いやねんけど」
「そうであるな……家具一式であろうか」
「何や、欲の無いやっちゃなぁ。ニアは?」
「私は枕ですぅ。入荷待ちの物なのでぇ、欲しくても買え無いんですよぉ」
そろそろ頃合か。
そう思い、用意していた物を、『空間収納』から出して、メイド達に広げて貰う。
正確には、上から吊るす形だな。
縦五メートル、横五メートルの巨大な紙には、一から百までの数字が書かれており、今回の催しに、無くてはならない物。
「さて皆様! ルールを説明しよう!」
ミルンとミユンに、それぞれボールを二十五個与えて、あの大きな数字に投げて貰う。
勿論、二人交互に、好きな数字を狙ってだ。
一ビンゴで五等。
最大五ビンゴで一等。
しかし、例えば一ビンゴで声を上げ、五等の権利を得た後に、二ビンゴしたとしても、四等の権利を得る事は無い。
声を上げる権利は、一人一回まで。
そして、このビンゴゲームの最大の肝は、ボールを投げるミルンとミユンに、当てて欲しい数字を、伝えても良いと言う事だ。
「ミルンの耳はっ、地獄耳なの!」
「ミユンは普通っ」
大きな声で伝えても良いが、ミルンとミユンの機嫌を損ねると、違う数字をワザと狙うかもだから、注意が必要だろう。
「ミルン、ミユン、準備は良いか?」
「壁を打ち抜きます!」
「投げるのは苦手っ」
「ミルンさんや、壁は打ち抜かんで良いからね。それじゃあっ、始めっ!!」
ミルンがボールを手にすると、会場内の貴族達、主に暗部関係者達からの、物凄い声が上がり、そんなに欲しい物あんのかよ!?
『先ずは二じゃ! 二を開けるのじゃ!』
一番声を上げているのが、ルシィ……お前女王の威厳は、何処行ったの。
「むーんっ、えいさっ!」
ミルンの一投目は、三番に穴を開け、そのまま壁に"メゴォッ"と、めり込みました。
壁を打ち抜く気満々じゃん。
『ミルンっ、違うのじゃあああ────っ!?』
「次はミユンなのっ、えいっ!」
ミユンは本当に、投げるのが苦手の様だ。
ボールが、緩やかなカーブを描いて、下の百番にポスンと当たり、小さな穴を開けた。
『やりましたわ! 後は周りをっ!』
『ミルン様! 五十二番を!』
『五番っ! 六十二番でも良い!』
『ミルンちゃん、七番。高級お肉……』
まだビンゴは始まったばかりなのに、どうやら誰かが、このゲームを理解した様だな。
「おにぐぅっ!」
ミルンのボールが、見事七番を打ち抜いた。
今の声は、ノイズ嬢っぽいな。
『ミユン様っ! 九番っ、九番を!』
『七十八っ、いや、八十二番でお願いします!』
『ミユンちゃん、九十番。肥料を……』
「肥料っ!? えいっ!」
肥料と言う言葉に乗せられて、ミユンのボールはそのまま、九十番にポスンっと当たった。
ミユンさんや、ノイズ嬢の口車に乗せられてるけど、誰も"あげる"とは、言ってないんだ。
「流石貴族の御令嬢……怖えぇ……」
「流様、貴族では普通に御座います」
「そうですわね」
様子を見守っている、ドゥシャさんとシャルネだけど、少し笑っている?
あぁ、ノイズ嬢は、まだ甘いって事か。
『ミルンちゃん、六十五番。高級お肉……』
ミルンの番になって、ノイズ嬢がまた、お肉で釣ろうとしてるっぽいんだけど、ミルンの尻尾が少し変だな。
はてなマークっぽい形をしてるぞ。
「お肉をどうするのっ!」
ミユンが声を上げて、六十四番に穴が開く。
どうやらノイズ嬢の目論見は、潰えた様だ。
お肉には弱いミルンだけど、頭の良いケモ耳娘だから、早々騙されない。
「すかさず投げるの!」
ミユンに至っては、年齢不詳の元妖精だから、さっきのはサービスだったのだろう。
九十九番に、ポスンと当てた。
こうして交互にボールを投げて、十投目のミユンの番で、一位の景品の発表だ。
「さあさあ皆様! あと一投でっ、もしかしたら一ビンゴの方も居るでしょう! はいっ、ここで一等の景品の発表です!」
空間収納から、そっと出した物。
刃から冷気を漂わせるソレは、見る者全てを虜にする程の美しさ。
これで斬られた者は、痛みを感じる間も無く、そのまま氷漬けになるだろう。
「効果付きの刀、冷刀。これが一等の品だ!」
その瞬間、暗部関係者全員の空気が、変わった。




