2話 婚約御披露目パーティー.7
爆発でルシィが吹っ飛んで、ピクリとも動かないが、さて、どうしたものだろうか。
その余波が、レイズ国王やザマァス王妃を襲った筈なのに、無傷で酒を呑んでるし。
ザマァス王妃が防いだのか?
流石、西の魔王。
「リティナイエローっ! ポーズが違うの!」
「んなもん覚えられへんわ! ミルンかてっ、何で飛び出すんや! その所為でタイミングがズレたんやで!」
「お話し長いの! ミルンレッド!」
「この仮面、息が苦しいですよぉ」
この状況に、暗部関係の貴族は平然としているが、それ以外の貴族達が、慌てて動き出し、何やら不味い雰囲気です。
「うむっ、この服は動き易い。良い具合に筋肉を、締め付けておるぞ」
「作った甲斐があるの。特殊な糸だから、伸縮性抜群で、耐久力もあります」
黒色のムキムキと、緑のちびっ子は、村長とミユンだろうな。
村長……どうやって来たんだ?
と言うか、全身黒タイツのマッチョなんて、ただの変態にしか見えないぞ。
「……ドゥシャさん、シャルネ。ミルンのあの催しって、知ってた?」
「知っておりましたら、お止めしたかと」
「凄い爆発でしたのに、あまり壊れておりませんわ。不思議な光景ですの」
シャルネの言う通り、さっきの爆発で、火の粉が飛び散ったのに、それが直ぐに消えた。
いや、消火されたのか。
湿気が凄いし、ピュアが消火係っぽいな。
「で……誰もルシィを助け無いと」
会場に居る誰しもが、女王を無視です。
「ルシィ、人望無さ過ぎだろ……」
「あの程度の爆発ならば、問題無いかと」
「さいですか。それじゃあ、ちょっと行って、収拾付けてくるわ」
「行ってらっしゃいませ」
「私達は、酒でも飲んでおりますわ」
シャルネさんや、それは狡い。
俺だって、あの光景を肴にして、楽しくお酒を飲みたいのに。
「さてと……」
何やら揉めている五人の前に立ち、それに気付いたミルンが、ビシッとポーズを決める。
ミルンが何をしたいのか、大体理解した。
普通の御披露目じゃあ楽しく無いから、はっちゃけるんジャーなんて意味深ネームで、面白おかしく、遊びたいのだろう。
ここはアレだ。
親として、付き合ってやるべきだろう。
魔神モード、威圧無しでな。
「くくくっ、良く来たな、はっちゃけるんジャー。この魔神が……相手をしてやろう!!」
角をニョキっと鎧を纏い、変身完了。
これで、準備は良いだろう。
「悪の変態魔神! 今日こそ引導を渡してやる! 皆んなっ、脛を狙うのおおお──っ!」
「パパ覚悟っ!」
「悪夢見せたるわ!」
「脛ですねぇ」
「流君……すまぬ!」
ミルンレッドさんや……唯一弱点である脛を狙うって、本気で潰しに来て無いかい?
遊びだよな?
俺、威圧無しなんだよ?
「パパの脛をごっつんこ!」
一番手は、ミユングリーン。
持っていた棍棒を、ブオンッと俺の脛目掛けての、横振り一閃。
それをジャンプして避けるが、そのタイミングで、ニアブルーに接近され、その手に持つ獲物を見て、戦慄を覚えた。
「ちょっ、ガチナイフかよ!?」
「当てますよぉっ」
ニアブルーは、ジャンプした俺の、折り曲げた脚を狙い、振り上げの一撃。
「危ねぇっ!?」
空中で脚をバタバタさせて、脛を回避。
「惜しいですぅ」
脛にも装具は付いているが、ニアノールさんならば、鎧通しを使えそうだから、避けるしか選択肢が無いんです。
すかさず着地して、一番厄介そうなミルンレッドを見るが、人数が足りない。
ヘラクレスブラックは、何処だ。
『油断かね流君』
「後ろっ!?」
飛び出す様に前へ出て、押さえ込まれるのをなんとか回避だ。
ヘラクレスブラックに、一度でも掴まると、俺の力だと、逃げる事が出来無い。
「むぅ……矢張り速いのである」
「ベアハッグとか、勘弁だっての。村長、どうやってここまで来たんだ」
北から来たのなら、こんな準備をする時間なんて、無いだろうに。
「ミユングリーンに、連れて来て貰ったのだ。ちょっとした、サプライズであるな」
「嬉しいサプライズだな……」
やっぱりミユンも、根っこ移動出来たのか。
見た事は無いけど、世界樹との相性抜群だから、出来ても何の、違和感も無いな。
「流にーちゃん、覚悟せぇよ!」
「なあリティナイエロー」
「なんや? 今更命乞いか?」
「そのぴっちりスーツ、苦しく────御免、胸が無いから、苦しく無いよな」
「本気でぶっとばしたるわあああ──っ!!」
リティナイエローの拳骨なんて、幾ら殴られようとも、全く痛くありません。
「ほんまっ! 硬過ぎやねんあほんだらぁっ!」
「拳で視界を奪っての、脛蹴りか?」
「っ、どりゃああああああ────っ!」
思っていた通り、脛蹴りをかまして来たが、ほいっと楽々回避成功。
直ぐに知覚を使い、俺にこっそりと、接近しようとしていたニアブルーに手を向けて、動きを牽制する。
「連携が取れていないな。くくくっ、甘いっ、甘いぞミルンレッドっ!!」
「ぬぅぅぅっ、流石変態魔神なのっ」
「……その名前、誰が決めたんだ?」
「こうなればっ、皆んなの力を合わせてっ、アレを呼ぶしか無い!」
「あっ、はい。無視は悲しぞーい」
皆んなの力を合わせてって、必殺技か?
ミルンレッドの周りに、他のメンバーが集まって、各々変なポーズしてるけど、何それ?
「さぁ皆んな! 心を一つにして叫ぶの!」
「ほんまやるんか?」
「ミルンさんの指示ですしぃ」
「ミルンお姉ちゃん! 力を貸すの!」
「大丈夫であろうな……」
「「「来いっ! 正義のミルンロボっ!!」」」
ミルン達が叫んだその瞬間────貴賓席の奥の壁が剥がれ、そこから、巨大な砲を取り付けた、二足歩行型のロボが、姿を現した。
「えっ……何このロボ……」
「皆んなっ、乗り込むの!」
「狭っ、一人しか無理やろ!」
「リティナっ、もっと寄って!」
「苦しいですぅ」
「私は無理であるぞっ、くっ、苦しい!?」




