2話 婚約御披露目パーティー.4
婚約御披露目パーティーの当日に、お宅の兵を借り受けたいと、ラブコール。
その場での返答は避け、アズヴォルド卿が自領へ帰る迄に、返答すると約束した。
この祝日の三日間、ここに滞在するそうだ。
「東の国から、敵さんわんさかとか……」
和土国とは、友好関係を築けているが、それ以外の国々が、不穏な動きを見せている。
だからこそ、ジアストールで今現在、馬鹿みたいな戦力を誇る、このファンガーデンに、助けを求めたと言う訳だ。
「ここ、国の最西端よ? 他にも貴族が居るだろうに、何やってんだよ」
アズヴォルド領の兵を集めたら、ファンガーデンの凡そ、二倍の人員らしいけど、それで足りないとかヤバいだろ。
「数は居てもって、ヤツだろうなぁ」
そもそも、ケモ部隊を持ってるのが、このファンガーデンだけだし、人間は魔法が使えると言っても、地力が違う。
それこそ、広範囲を一撃で火の海に変えないと、接近されたら瞬殺レベルだ。
「……憂鬱だなぁ」
そうして時刻は、十七時半過ぎ。
バックヤードから、貴族達が続々とパーティー会場の中へ入って行くのを、ボーっと眺めながら、身嗜みの最終チェックを受けています。
「流さん、顔色悪いですよぉ」
「何言ってるのラナス。流さんはいつも、こんなお顔してるじゃない」
「そうかなぁ」
ラナスとコルルは、雑談しながらも、台に乗って手際良く、俺の髪を整えている。
「うぅ、目が虹色なの、いつ見ても怖いなぁ」
「それは私も思うけど、口に出したら駄目っ」
虹色の瞳は、仕方無いだろ。
深緑の魔眼って言う、神殺しの発動キーらしいけど、元に戻らないからな。
「ドゥシャさんは?」
「アトゥナメイド長と、お着替え中ですぅ」
「そりゃ楽しみだ。ミルンとミユンは、準備バッチリなんだよな?」
「勿論ですっ。今は別室で、暇そうにしてるよ」
今日は朝から、二人の姿を見ていない。
と言うか、意図的に会わない様にされていたっぽくて、何かを企んでいる気がする。
俺へのサプライズだろうか。
そうだったら、物凄く嬉しいけどね。
「にしてもルシィの奴……まだ始まっても無いのに、あんなに呑んで、大丈夫なのか……」
会場の最奥には、王専用の椅子を三つ、設置しており、その中央で脚を組みながら、ワインをがぶ飲みしているのが、ルシィだ。
立食パーティーなのだが、流石に他国の王様を、座らせる訳にはいかないからな。
「シャルネはまだ、戻って無いのか?」
「時間には間に合うとの事でしたが、まだ戻って来て無いです」
「まだなのか……」
親父さんを迎えに行って、何か起きたか?
今回の婚約御披露目パーティーは、シャルネも居ないと駄目なんだけど、あと二十分ぐらいしか時間無いぞ。
「最悪、空を旋回してる黒姫に、音速ぶっぱで迎えに行かすしか無いな」
『(我もお酒を呑みたいのじゃっ!!)』
「……念話!?」
『(シャルネなら、もう直ぐ着くぞぇ。じゃから我もっ、パーティーに混ぜるのじゃ!)』
「(黒姫お前……こんな力まで有るのか。それなら裏山に降りて、ドレス着てから来いよ)」
『(ひゃっはーっ! お酒なのじゃーっ!)』
お前はどこぞのヒャッハー族か?
黒姫の事は置いといて、そろそろ音楽流して、ムードを作らなきゃな。
「コルル。楽団に演奏させるよう、指示を頼む」
「分かりました、行って来ます」
コルルは羽根を広げて、そのまま上へとパタパタ飛んで行き、何とも便利な羽根様だ。
二階には、遊戯コーナーとは別に、ちょっとした楽器を用意して、演奏スペースを確保。
そこから下の会場に、音楽が流れる。
「頼むぞドール、ドーツ」
「良いなぁ、コルル。楽器触れるんだもん……」
「そう言うなラナス。工房が増えたら、お前にも良い楽器を作ってやるから」
「楽しみに待ってますぅ」
ファンガーデン音楽団。
王都では、夜会の際に必ず、専属の楽団員を使い、ダンスをするらしい。
しかしだ、そもそも楽器の様な物、ファンガーデンには無かったんだ。
そこで、工房の親方に相談をして、色々と試行錯誤の末、バイオリンっぽい物と、フルートっぽい物、シンバルっぽい物が作れた。
何故、"ぽい物"と言うのかって?
実物を見た事無くて、口頭で制作して貰ったから、正解か分からないんだよ!
「そこんとこ、ドゥシャさんに聞けば良かったと、少し後悔だわなぁ」
んで、楽器を用意したまでは良かったけども、そもそも演奏出来る人材が、皆無だった訳で、これが一番頭を悩ませた。
半ばやけくそ気味に、壁の置物と成って居たドーツに持たせて、強権発動。
無茶振りして、弄り倒そうと思っていた。
「普通に演奏出来るとか……今だに信じられないわ。ドールの奴も、プロ並みだろアレ……」
一体古代人は、ドール達に何をさせたかったのかと、疑問が浮かぶスペックです。
コルルは何なのか?
今頃、上手に指揮者やってるぞ。
コルル、ドール、ドーツ、ラカス、新人メイド二人の六名で、ひたすら楽器の演奏タイム。
ラカス?
シンバル担当です。
「────っと、始まったな」
演奏の楽曲は、全く知らない。
知らないんだけど、ドールが譜面を作り、他のメンバーへ周知していた事は、知っている。
何処かで、聞いた事の有る曲なんです。
何だったかなぁ、この曲。
「日曜の朝に……良く聞いた様な……」
「中々変わった、音楽に御座いますね」
「ドゥシャさん、準備終わったの────」
後ろから声がしたので、振り返って見たら、純白のドレスに身を包んだ、女神が居た。
桃色お化けなんて、エセ女神だ。
そう思わせる程に、美しい女性。
「流様、如何でしょうか?」
「えっと、うん。うーんっ、月並みな言葉で申し訳無いんだけど、綺麗だとしか言えん!」
「ふふっ。それでは褒め言葉を、練習して貰わなければ、なりませんね」
「努力するよ……」
駄目だっ、美女を前にしてこの醜態。
だってそのドレスっ、胸元開き過ぎじゃん。
顔良し、スタイル良し、性格良しの完璧美女がだ、嫁候補って……リア充かよ!!
「おーい、流のおっ…領主様っ。シャルネ様とそのご家族が、到着しました」
「アトゥナさんや、いつまで経っても慣れない口調を、無理に使う必要は無いぞ?」
「これでも良くなったんだ! それよりも、他国の王族来てるんだから、早く行かないと!」
「流様。どうせならばシャルネと共に、会場入りを致しましょう」
それって、シャルネの母親も居るよね?
殺戮人形の母親。
初顔合わせだな。




