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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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2話 婚約御披露目パーティー.3



 唐突だが、婚約御披露目パーティーの時間割は、ざっくり言うと、こんな感じだ。


 十五時まで、貴族の馬車パレード。

 十七時まで、自由時間。

 十八時から、婚約の御披露目。

 十九時から、女王の祝いの言葉の後に、ミルンとミユンの御披露目。

 二十一時から、自由時間。


 交通規制上、十五時以降に来た、貴族の馬車は、貴族門にて馬車から降り、そのまま徒歩にて、館まで来て貰う。

 招待状にも書いてあるし、それでゴネる様な貴族が居たら、そのまま出禁になります。

 食堂は、十二時から深夜まで開ける予定。

 ニンニ君の休む時間は、無いだろう。

 各区の祭りは、交通規制の解除と共に始まり、今日から三日間開催される。

 農業従事者は休暇となり、商業区の商人や、職人達からしたら、ある意味稼ぎ時だな。


 そんなこんなで、一組目。

 ジアストール王国女王、ルルシアヌ・ジィル・ジアストールが、ご到着。

 護衛達を置き去りにして、大股で向かって来るなんて、ルシィらしいわ。

 

「……ルシィ来るの、早くね? 普通女王って、時間ギリギリに来るモノだろ」


「ふんっ、別に構わぬじゃろ。夜までのんびりと、この地を満喫するのじゃ」


「そう言う事か……遊ぶなら、別館の二階に行けよ。カードやサイコロとかの、ちょっとした遊び場作ったから、楽しめるかもだぞ」


「何じゃそれは?」


「ボソッ(本気でこの異世界、娯楽少ないだろっ)」


 まさかの、カードやサイコロを知らんだと?

 思い返してみれば、和土国や連邦国で、カジノとか見た事無いな。

 魔物が跋扈すると、娯楽が育たない訳か。


「陛下。わざわざの御来訪、心より御礼申し上げます。お時間まで、どうぞごゆるりと、お寛ぎ下さいませ」


「そう畏まらんで良いわ。ずっと思っておったが、ドゥシャよ。影の時の方が、口調が砕けておったであろうに」


「陛下、何の事に御座いましょう?」


 何それ初耳ですが。

 ドゥシャさんが影の時って、今と違って、もっと砕けた喋り方だったの?


「おぉ怖い怖い、そう睨むで無いわ。儂は時間まで、この都市を見て回る故、お主らはお主らの仕事をせい」


「陛下! 我々を置いて行かないで下さい!」


「煩いのぅナブリル。兵達を宿舎に置いて、さっさと町へ行くのじゃ」


 知らない従者だな。

 そういや、貞操帯さんは、帝国に行ったまま、帰って来てないんだったか。


「陛下。先に御部屋へ御案内致しますので、その後でも、時間は御座いますよ」


「ふむ、そうじゃのぅ。では、部屋に案内せい」


「畏まりました。流様は、後に来るお客様の応対を、お任せ致します」


 はい、そのまま置き去り流です。

 あのルシィの事だから、時間いっぱいまで、ドゥシャさんを連れ回すだろう。

 と言う事は、俺一人で出迎えですか?

 何ちゃって貴族の、流さんが?

 

「……なる様になるか?」


 館の玄関で、こうして一人で佇んでいると、何だか悲しくなってくるよね。

 そんな事を思っていたら、新人メイドが顔を見せ、どうやら二番手が来た様だ。


「領主様。ドェロ・ベロキッチ男爵様が、お見えで御座います」


「二番手…って、誰それ?」


 ドゥシャさんが指示した、色んな貴族に招待状を送ったから、名前まで気にしていなかったけど、マジで誰それ?




 流さんの、貴族お迎えタイム終了。

 この二、三時間の間に、三十名以上の貴族が来たけど、案外マトモな人達ばかりだった。

 名前は……色々と突っ込みたいけどな。


「茶を飲んで、一服しよ……」


 もう直ぐ十二時だし、次の貴族からは、そのまま御部屋へ御案内して貰う。

 じゃないと、作り笑いが崩壊して、威圧振り撒き魔神モード全開!!

 パーティー解散!!

 ドゥシャさん鬼ギレモード突入!!

 そんな事になったら、お洒落をしたミルンとミユンに、脛バットされちゃうよ。

 

「ミルンの友達の貴族、まだ来て無いな。名前なんだっけ……クズール君だっけ?」


 いつ知り合ったのか知らんけど、招待状は送ったんだし、待てば来るだろう。

 と言う事で、自室にてゴロゴロ。

 この領主館の中で、一番小さい六畳一間の空間が、俺の自室となっている。

 普通の領主なら、だだっ広い部屋に、調度品とかを飾るらしいけど、俺にそんな趣味は無いし、この広さで十分なんだ。

 勿論、寝室は別にあるけど、一息吐くなら断然、この部屋が良い。


「欲しい物は、この異世界だと無いからなぁ」


 炭酸飲料と、芋チップス。

 パソゲーと大型モニター。

 あとはジャージ。

 炭酸飲料と芋チップスは、何とかなるだろうけど、パソコンとかは無理だ。

 古代人が居た時代には、あったのだろうか。

 列車、義手義足、ドールの様なロボ、魔法小銃や、効果付きの武器防具。

 これだけ発展してて、滅んだ訳だからなぁ。


「アルテラに聞けば……いや、どうせ作れないんだし、無駄な事か」


 数世紀、時代が進めば、或いは……か。


 コンコンッ────『流さーん。アズヴォルド・ラダン・ジルディス辺境伯様が、お見えになってますよぅ』

 

「……ゴロゴロタイムに来るなよなぁ。ラナス、ここに案内してくれ」


『えっ……駄目ですよぉ! こんな狭い部屋だと、お客様に失礼ですぅ!』


「一応俺の自室なんだけど……」


『貴族様用の、応接室に御案内しますのでぇ、早く来て下さぁい』

 

 言うだけ言って、行きやがった。

 アトゥナがメイド長になってから、ラナスとコルルの俺に対する扱いが、淡白なんです。

 あっさりしてると言うか、諦められてると言うか、少し寂しくなっちゃうぞ。


「よっこらせっと……行くか」


 体を起こして柔軟体操。

 アズヴォルドが来てるって事は、ノイズのお嬢ちゃんも来てるのか?

 ミルンの良い遊び相手だな。

 貴族の応接室へと足を運び、扉をノック。


「流だ。入るぞー」


 声をかけ、扉を開けようと、ドアノブに手をかけた瞬間、自動ドアの如く扉が開き、ポスっとお腹に何かが埋まった。


「……事案になるから、勘弁してくれ。久々だなノイズ嬢、元気してたか?」


「はい…元気にしてました。すーっはーっ」


「おいアズヴォルド卿。お宅の娘が、俺の匂いを嗅ぎまくってるんだけど」


 部屋の中には、優雅に茶を飲む、子煩悩なおっさんが居るのだが、苦笑いを浮かべるだけで、一向に助けてくれない。


「久しいな、小々波卿。それと、娘のノイズの事は、許してやって欲しい。貴殿が婚約パーティーをすると聞いて、泣いておったのだ」


「泣く程喜んでくれたのか」


「っ!? んーっ!」


 何故かポスポスと、ノイズ嬢が俺の腹を殴って来るんだけど、ミルンと違って、可愛い殴り方だなと思う。

 ミルンパンチは、抉り込む様に来るからな。

 

「小々波卿……貴殿は、鈍感と言われた事は、無いだろうか。いや、これ以上はよそう」


「何のこっちゃ? ノイズ嬢、失礼しますよっと。よっこいせ」


 ソファに腰掛け、アズヴォルドを見る。

 ノイズ嬢の傷が治ったからか、以前と比べて顔色が良く、ダンディさが増しているな。

 んでノイズ嬢は、何で俺の隣に座るの?

 普通は、父親の隣だろうに。


「ふむ……娘の気持ちを考えれば、何とも心苦しいが、先ずは婚約おめでとうと、述べさせてもらおうか」


「あんがとさん。まだ婚約段階だけどな」


「側室候補は、かの殺戮人形と聞いたのだが、まだ空きは有るのかね?」


「久しぶりに聞いたな、その通り名。あと空きって何だよ空きって……」


 シャルネの奴はアレだぞ。

 押し掛けて来て居座って、いつの間にかミユンに推薦貰って、婚約しちゃったパターン。

 

「思い出したら、頭痛くなって来た……」


「その感じであれば、空きは有るな。娘よ、この小々波卿は、押しに弱そうだ」


「はい…っ、頑張ります」


「何の話をしてんだよ……で? わざわざ雑談する為に、俺を呼んだのか?」


 アズヴォルドは知り合いとは言え、ジアストールの大貴族。しかも、なんちゃって貴族の俺と違って、ちゃんとした辺境伯様だ。

 だからこそ、腹の探り合いとか、胃が痛くなるから、ぶっちゃけ止めて欲しいんです。


「相変わらず、腹芸は好かぬか。それならば、率直に言おう。ファンガーデンの精鋭達を、借り受けたいのだ」


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