1話 婚約御披露目パーティーの準備.10
ミルンの口撃!
ドールは逃げられない!
なーんて事が、ありました。
うん。交渉したら、何とかなったわ。
付与だけだけど。
解析の事とか、魔力云々は、脅しても教えてくれなかったけど、付与だけなら、ドールが作業してくれる事になった。
色々と、条件付きだけどな。
「……面倒な条件だなぁ」
「ミルンの手柄!」
「はいはい、ありがとうよ」
「"はい"は一回なの!」
ドールが付与を行う条件は、五つだ。
付与後は速やかに、充填する事。
他の者に、情報を漏らさない事。
武器への付与は、求めない事。
この三つは、俺にとってもデメリット無いし、何の問題も無い。
問題は、残り二つの条件だ。
他の機体を探す事。
定期的に、迅号を動かす事。
「迅号を動かすのは良いとしても、他の機体を探せって、どう探せと?」
「遠隔充填中は三機。大陸外から反応有り」
「……別大陸かよ!?」
「また旅行?」
「うむぅ、これは保留で良いか? 迅号は、定期的に使うと、約束しよう」
「了。付与は行いますので、御検討を」
そんな事もあり、露店で売っていた世界樹のネックレスを買占め、それに何某らの付与をして貰い、婚約パーティーの土産物として、出す事が決定した。
因みに付与の方法は、見ても分からん。
試しに、空間収納で死蔵されていた、金の裸婦像に付与して貰ったが、何なのそれ?
金の裸婦像をドールが持って、以上、終わりって、どうやったの?
空間収納内に戻して、確認したら、金の裸婦像の癖に、"斬撃効果"が付いていた。
「意味の無い効果付けんなよ!?」
「ランダムにて、ご了承下さい」
「……デバフ効果は勘弁してくれよ」
「でばふって、なあに?」
「毒とか麻痺とか、ステータスを下げたりとかする、嫌な効果の事だぞ」
「嫌な効果! 背中が痒くなる!」
それは、地味に嫌な効果だな。
そんな異常にかかったら、ミルンに優しく、背中を掻いて貰おう。
「うしっ、これで抜かりは無いな。あとはこの手紙を、配達して貰えば完了だ」
後は、婚約御披露目パーティーまでに、ダンスホールを完成させて、ミルンやミユン達のドレスを仕立てれば、完璧だな。
「明日にでも、ギルドに手紙を送って貰うか」
「ミルンっ、ミルンが持って行く!」
「……あまり無茶な依頼はするなよ?」
「日帰りで狩るの!」
「それなら、ドゥシャさんにも伝えて、しっかり許可を貰いなさいな」
「りょっ」
さて、そろそろ夕飯の時間か。
「食堂行って、皆んなで食べるか」
「お夕飯のお時間? お米?」
「夕飯は、お米を食べ過ぎないようにな」
注意をしておかないと、ミルン達に、米の蓄え全てが食い尽くされかねない。
そんな不安を胸に抱きながら食堂に入ると、ミユンとピュアがキリッとした顔で、箸を片手に握り締め、夕飯待ちをしていた。
「お顔が濃いの……」
「濃いと言うか、なんか怖いぞ」
ドゥシャさんと小花さんも居るけど、そちらは雑談をしている様で、何とも和やかなのに、ミユンとピュアは何故に濃い顔。
俺とミユンは、専用の椅子に座って、その不可思議な光景を眺めるが、二人は微動だにせず、無言のままで濃いお顔。
「ピィピィ、お米楽しみっ」
「っ、びっくりしたぁ……エトワル居たのか。何で椅子に座らず、しゃがんで居るんだ?」
「ピィィィッ、食べにくい」
そりゃそうか。
羽根を丸めてしゃがむ姿は、どこからどう見ても鳥類のソレで、何とも可愛らしい。
可愛らしいんだけど、何この空間?
濃い顔のミユンとピュアに、可愛い姿のエトワル。それを無視するドゥシャさんと小花さんで、それらを眺める俺とミルン。
「混沌か?」
「お父さん。ミユンとピュアが、動かないの」
「何だろうなぁ」
コンコンッ────「お待たせしましたぁ」
ラナスの後にコルルが続き、配膳車をコロコロと、運んで来た料理。
ソレを見た瞬間、理解した。
地の精霊ミユンと、水の精霊ピュアが、何故濃い顔のまま、箸を握り締めて居たのかを。
「すっ、すき焼きだと!?」
「なあにそれ? スンスンっ、良い匂い!」
「ミルンっ、気を付けろ」
「なんで?」
「ミユンとピュアのっ、目がマジだ!」
土鍋にぐつぐつと、煮えた肉が見えるが、あんな霜降りっぽい肉なんて、無かった筈。
「我がツキヨにて育てている、猛怒"牛"の良いところを、手土産にお持ちしたのです」
「小花さん……牛飼ってるの?」
「少しですが、育てております」
「まさかツキヨに、牛が居たなんて……っ、二足歩行のミノじゃ無いっ、ガチ牛肉!」
それにいち早く気付いた、ミユンとピュアは、こうして精神統一をしていたと。
流石に卵は、危険だから無いけど、味付けされた肉と野菜の香りが、最早凶器だ。
勿論っ、白米も完備してます。
「パパっ、まあだっ!」
「涎が止まらないわ!!」
「お肉の良い匂いなのぉ……じゅるっ」
すき焼きを前に、精霊二人とミルンがそわそわして、早くしろと目で訴えて来る。
しかし、ドゥシャさんの目があるから、無様な姿は見せられないんだ。
「ラナス、コルル。深皿に小分けして、アトゥナとお前達の分も、確保しなさいな」
「やったぁ!」
「私達も食べれるぅ!」
ギリギリと、歯を食いしばる音が、ピュアから聞こえて来るけども、そうしておかないと、地下でお仕事中のアトゥナの分なんて、残らないだろう。
「そろそろ良いか。それじゃあ手を合わせて、頂きます」
「「「頂きます!」」」
「我が国と、似た様な事をなさるのですね。では私も、頂きます」
「ツキヨでもなさるのですか。頂きます」
ミルンとミユンとピュアの、肉を賭けた本気の戦いが、今っ、始まってしまった。
うん、肉が消えて行くの。
面白いぐらいにね。
「むぐむぐ……米旨めぇ」
この勢いだと、俺は肉を諦めるしか無い。
ドゥシャさんは、いつの間にか肉を確保しており、流石暗部の長だわ。
全く見えなかったぞ。
「それっ、ミルンのお肉!」
「ふふん、甘いわよ」
「もちゅもちゅ…旨しっ!」
いつかツキヨに出向いて、猛怒牛とやらを、見せて貰うとするか。
出来るなら、育ててみたいものだ。




