1話 婚約御披露目パーティーの準備.9
「手紙はこれで、終わりっと。全部で五十二通あるけど、貴族ってこんなに居たっけ?」
大貴族とかは、自領内に複数貴族を抱えてるって話を、何処かで聞いた様な気もするが、そこいらへんの事は、良く知らんのよ。
グループ会社全体の会長を、女王と例えるなら、社長はその下の公爵だろ。
んでその下の、各会社の社長が侯爵で、その下に伯爵が位置すると。
「辺境伯は……普通の伯爵の上位だっけ。公爵とかのお偉いさんは、見た事無いな」
そう言えば、公爵の地位は王族が持つって話を、昔聞いた様な気がするけど、ルシィ以外の王族って、居ないよなぁ。
「侯爵の位を持つ奴も、見た事無いし……貴族階級とか、複雑過ぎんのよ」
地球と同じなのか、それとも何か違うのか、今だにハッキリしないし。
「そこら辺は、連邦国の方が分かりやすいわ。国の代表では有るが、王じゃ無いからな」
まぁ、あの代表達を見る限りだと、普通に独裁政治をしてそうだけど。
「んじゃそろそろ、ドールに話を聞かないとだな。付与のやり方とか、知ってると良いんだけど」
執務室を出て、ドールを探す。
俺やドゥシャさんの指示が無い間、ドールとドーツは自由行動をさせている。
勿論、変な行動はするなと、命令してだ。
「ドーツは、外部兵装とかの修理を、延々としてるけど、ドールは何してんだろ?」
スライムの考えなんて、分からんわな。
スライムかどうかも、怪しいけど。
生き物であれば、空間収納に収納出来無い筈なのに、アイツら収納出来るからな。
「……良く分からん」
「何が良く分からないの?」
「……ミルンさんや、気配消すの上手くなったなぁ。だが甘い! 尻尾が見えてたからね!」
「御座るに鍛えて貰ったの!」
御座るさん何やってんの。
俺とドゥシャさんが、旅行行ってる間、何かと世話してくれてたみたいだけど、ミルンを忍者にでもする気なのか?
「んしょっ、んしょっ、合体!」
「ミルンセットッ! 流ロボっ、発……ミルンやっぱり、背が伸びたよね?」
出会って何年? 四年ぐらいか?
子供の成長は早いと言うけども、ミニマムミルンだったのが、リトルミルンになってるぞ。
「もっと成長したいの!」
「急ぐ必要なんて無いだろ? あと五、六年もすれば、もっと大きくなってるさ」
「お父さんよりっ、大きくなります!」
そうなったら、もう肩車は出来無いな。
少しだけ、寂しい気持ちになって来たけど、こればかりは仕方が無い。
時間は前にしか、進まないのだから。
「ミルンさんや、ドール見てないか?」
「ドール? それならお庭で、ボーッとしてるの。つついても、動かないの」
「……燃費悪過ぎだろっ」
「ねんぴって、なあに?」
「何だろうねぇ。このまま庭に行くか」
ミルンを肩車したまま、館の庭に向かうと、確かにドールが停止していた。
直立不動のまま、庭の中心で固まるなよ。
近付くと、小さな声で『燃料を充填して下さい』を繰り返し、ちょっとしたホラーだ。
「動かないの」
「大丈夫大丈夫。アイアンクローすれば、直ぐに動き出すからな」
「あいあんくろー?」
「こうやって、手の平で顔面を掴んで、メキメキさせるのが、アイアンクローだ」
ステータスが低くても、一定のダメージを与える、素晴らしい技だな。
「充填中…ドール、省エネモードにて、再起動します。充填中…充填中…」
「動き出したの!」
ミルンが肩上から手を伸ばして、ドールの顔面を触ろうとしたので、直ぐにそれを止めた。
「ミルンっ、触ったら肉無し晩御飯だ!」
「肉無しは嫌! 何で触ったら駄目?」
「魔力がドールの燃料だからな。下手に触って吸われでもしたら、危ないだろ」
「魔力! ミルンのステータスに、魔力が書いてあるの! それドールのご飯?」
「そうだ、魔力がこいつの……今なんて?」
「魔力がドールのご飯?」
「その前その前。ステータスに魔力がって……」
「魔力が書いてあるの?」
何でやねん!?
俺のステータスには、魔力の項目なんて無いし、どうなってんの!?
「因みに、魔力の数字は?」
「数字? えっと……二百ちょいなの」
「マジか……」
人によって、ステータス表記が違うのか?
そういや俺って、他の人のステータス聞いた事無いし、これは検証しなくちゃだ。
「充填中…省エネモード解除、おはよう御座います」
「もう夜だけどな。何で朝満タンにしたのに、もう燃料切れてんだよ」
「ドーツの外部兵装修復にて、多めに使用致しました。以上」
ドーツの外部兵装って、あの鉄屑だろ?
自己修復機能も、魔力でどうのこうのって、本当に意味不明なロボだな。
「まあ良いや。ドール、お前に聞きたい事が山程出来たから、執務室まで来てくれ」
「了。同行致します」
「どこからお声出てるの?」
「仮の管理者の権限外にて、回答不可」
そこは回答不可なのかよ。
水晶の下辺りに、小さな穴が有るから、そこから声を発してるのバレてるぞ。
そうして、ミルンを肩車したまま、執務室へと戻り、思い付く限りの質問をしてみた。
付与のやり方を知っているか。
ドールの解析で、ステータスが見れるのか。
魔力とは何なのか。
その返答が、これだ。
「仮の管理者の権限外にて、回答不可」
そして、ミルンの反応が、これだ。
「なんで?」
「仮の管理者の権限外にて、回答不可」
「なーんーで?」
「仮の管理者の権限外にて、回答不可」
「管理者って、なあに?」
「当機を作り上げた、偉大なる方と、メモリーに残っております」
「メモリーって、なあに?」
「当機ドールの、記録を保存する、脳と定義」
「なんでさっきの教えてくれない?」
「仮の管理者の権限外にて、回答不可」
アレだよ、小さい子供の、なんで口撃。
一度これにハマると、延々と、逃げ場の無い絨毯爆撃に曝される。
「ドールは、付与知ってる?」
「記録されております」
「そのやり方は知ってる?」
「記録されております」
「やり方教えて下さいな!」
「仮の管理者の権限外にて……回答不可」
「なんで?」
何でかな、顔面水晶のドールなのに、若干疲れが見えた様な気がしたぞ。
ミルンもミルンで、何とか聞き出そうと、抜け道を探しながら話をしている。
「特例は無いの?」
「仮の管理者の権限外にて、回答不可」
「ドールは付与出来る?」
「可のっ…管理者の許諾が必要です」
「やって見せて!」
「管理者の許諾が必要です」
今のは惜しかったな。
どうやらこのドール、統括機体だけあって、色々と機能を備えてる様だ。
付与のやり方を、知ってるだけでは無く、ドール自身が出来るとか、最高じゃん。
あとはどうやって、それをさせるかだが。
「やって見せて!」
「管理者の許諾が必要です」
交渉で、どうにかなるモノなのかね。




