1話 婚約御披露目パーティーの準備.8
いくら叫んでも、ミルンが来ない。
焼魚を食べると、良い感じに塩が効いており、白米に合う事間違い無しなんだ。
それなのに、白米が無い。
「良い味付けですね。高級品の塩を、こんなにも使うなんて。羨ましいです」
小花さんは、遠慮無くもりもり食べているけど、この料理は未完成なんです。
だって、米に合う様に、若干濃い目にしてるから、これだけだと甘味が足りない。
「ご馳走様! ちょい行って来るから、ドゥシャさん後は任せた!」
「畏まりました。小花様、お部屋をご用意致しますので、本日はお泊まり下さい」
「ふぁっ、ふぁふぃふぁ…んっ。有難う御座います、お世話になります」
部屋を飛び出し、早歩きで厨房へと向かう。
呼んでも来ないと言う事は、腹を膨らませたミルン達が、動けずに居るだろう。
幸せいっぱいの顔をしながら。
そう思い、厨房の前まで来て、そっと中を覗いて見ると……人数増えてね?
「……全員かよっ!?」
ミルン、ミユン、コルル、アトゥナ、ピュア、エトワルだけで無く、館で働く人達全員が、腹を膨らませて床に倒れている。
その中には、ニンニ君の姿も見えるんだけど、お前絶対狸寝入りしてるだろ。
「おっ、美味し過ぎるのぉ……体が重いっ」
「パパっ、お米とお魚の相性はっ、最高……」
「また炊けば良いとは言え、食べ過ぎだ。何キロ炊いたと思ってんの……」
「プピィィィ(苦しぃぃぃ)」
「お米とはっ、美味しいモノですわぁ。ゲプっ」
なんか、こんな幸せいっぱいの顔見たら、怒る気も失せてくるわ。
「と言うか、ミユンとピュアは、いつの間に顔合わせしたんだ? 会うの初めてだよな?」
「ピュア? それだあれ?」
「まだ顔を合わせてませんわぁ」
顔合わせしとらんのに、仲良く腹を膨らませてるとか、どう言う事なの? 食に夢中過ぎて、気付いて無かったのか。
「ピュア。体起こして、自己紹介しなさいな」
「面倒臭いですわぁ」
「……本気で下水処理させるぞ」
「冗談ですわよぉ。よいしょっ、うぷっ」
水の精霊が、やけにおっさん臭い声を出し、体を起こしたら腹を押さえるって、精霊のイメージ壊れるから、止めてくれ。
「水の精霊の、ピュアですわ。どうぞ皆様、仲良くして下さーい」
「土の精霊の、ミユンなのーっ。かしこまっ」
「ミルンなのーっ。りょっ」
「ピィーッ…エトワル!」
ピュア以外の全員が、寝転がりながら自己紹介って、とてもシュールな絵面だなぁ。
米の品質は、問題無さそうだし、夕飯にもう一度炊いて、俺も確認してみるか。
「……俺は執務室に行くけど、ニンニ君。狸寝入りは止めて、後で執務室に来いよ」
「っ……」
「あと他の者も、腹休めしたら、仕事に戻る様にな。アトゥナとコルルも、お客様が居るから、ベッドメイキング頼むぞ」
「うぷっ…コルル、頼んだ。俺は少ししたら、地下に行かなきゃだから……」
「畏まりましたぁ」
そういやアトゥナは、地下に居る奴等の、管理もしてるんだったな。
そんな事を思いながらも、執務室へと行き、ピュアが駄目にした手紙を、一からだ。
執務室にて、ニンニ君を軽く指導した後、婚約御披露目パーティーの準備です。
手紙以外にも、やる事満載なんですよ。
立食パーティーみたいなモノだから、出す食事や飾り付け、土産物等の予算も決めないと、お金なんて、あっという間に飛んで行きます。
「普通の貴族は、見栄張って無茶するけど、なんちゃって貴族の俺からしたら、無駄な出費は避けたいんだよなぁ」
かと言って、周囲の貴族達に舐められると、また色々と、手を出して来るだろう。
それは、何としても避けたい。
だって……相手すんの、面倒臭いから!
「食事は、洋食と和食、両方用意するか。昆布っぽいモノも有るし、魚醤は手に入るからな」
問題は、土産物だ。
工房が増えて、ミルンが色々としている様だけど、特産品とまでは言えないんだ。
作ろうと思えば、他領でも作れるからな。
出来れば、このファンガーデンでしか手に入らない物を、土産物としたい。
「何か有るだろうか……」
ファンガーデンと言えば、世界樹。
世界樹と言えば、葉っぱ。
葉っぱと言えば、高級回復薬。
高級回復薬と言えば、リティナ。
「リティナと言えば、漫才?」
違う違う、考えをリセットだ。
ファンガーデンと言えば、ミルン。
ミルンと言えば、ケモ耳っ子。
ケモ耳っ子と言えば、モフモフ。
「モフモフと言えば、癒し?」
癒しを御土産にどうぞーって、持って帰ろうとしたらブン殴る自信がある。
コレだと、傷害事件になっちゃうぞ。
「特産品って、難しいなぁ」
ぶっちゃけファンガーデンは、アルカディアスとジアストールを繋ぐ、交易路の中心だから、特産品が無くても潤ってるんです。
しかしだ、これに胡座をかいていると、いつか何かが起きた時に、困るかも知れない。
「んんーっ、何かないモノだろうか」
いっその事、ビンゴゲームとかにして、一等を世界樹の葉にしようかなぁ。
二等は、工房で作られた家具一式で、三等は防具とかにして、ハズレはネックレスとか。
勿論、世界樹のマーク付きの物だ。
「効果付きのアクセサリーとか作れたら、特産品とかに出来るだろうけど……」
一体どうやって古代人は、剣とか鎧に、効果を付与していたのか。
後でドールに、聞いてみるか。




