3話 基本魔法とはなんぞや.1
5分後、俺は深呼吸し黒歴史の新たる1ページを右手に封印した。
「ふぅっ、危うく闇に堕ちるところだったぜ」
流石に犬耳幼女の目の前でキメポーズの姿勢から一度両手を天に掲げ、そのままゆっくりと頭を抱えながら身体をもぞもぞくねくねさせるのは見た目が悪かろう。大人としてそんな醜態を見せる訳にはいかない。
「グゥウウウッ!?」
ミルンが凄く怯えながら後ずさっているが気にしない。気にしたら負けた気がするので気にしない。
「ミルン!」
「グゥウ…はい…」
「何か俺、魔法使えそうな気がする!」
【3話 基本魔法とはなんぞや】
ミルン曰く、この世界にある魔法は大まかに二つに分けられるらしい。
属性魔法。
火、水、土、風の四属性に光と闇、それに無を加えた魔法が属性魔法と言われている。適性が無ければ使えず、また、一人につき一つ又は二つの属性しか使えないと言うまあテンプレ魔法だな。
固有魔法。
そのまんまその人にしか使えない唯一無二のオリジナル魔法で、響きはカッコいいがある意味もの凄く使えない魔法とも言われているらしい。何でもこのナントカって言う国で使い手は唯の二人だけ。
内一人の魔法の効果が────
「この荒れた大地に一粒の恵みを!」
────と使い手が魔法を唱えると、使い手の声が届く範囲内の頭皮の汗が良く光っている方々の大地に、一本、恵みが与えられるそうな。
その希少性と一日に使える回数が限られている為、貴族間での奪い合いが絶えず、何処ぞで保護もとい監禁されているとの噂。一日に自然と散っていく恵みの量を考えれば本気で使えない魔法という訳である。
固有魔法はガチャだなと思いながらふと、疑問に思った事を聞いてみる。
「なぁミルン。国の名前も、村の名前も知らないのに何でそんなに獣族が使えないと言われている魔法に詳しいんだ?」
「何ですか流さん?」
まだまだ説明したり無いとでもいうように尻尾をピンッと伸ばている可愛いモフりたい。
「私がここに住むまえに居た場所で凄く変わった方に教えて頂いたんです。その方は私が、獣族だから、魔法が使えないから意味が無いと言うと『使えようが使えなかろうが知らなければ意味が無いかどうか判らん。人種だろう獣族だろうと知る事、知ろうとする事を辞めてしまっては、最早魔物と何が違う?』笑いながら魔法の事を教えてくれたんです。何か少しだけ流さんに似てますね」
ふふっと笑顔で笑いながらの魔法初級講座有難うミルンさんや。
「で、ミルン?」
「質問ですか流さん?」
尻尾がピンッとなっている。
「大事な事をまだ聞けていない」
尻尾をまじまじと見つめている。
「魔法の使い方は?」
尻尾をまじまじと見つめている。
「使える人には使えるみたいです!」
尻尾がピンッとなっている。
ピンポンパンポーン(上がり調)
レベルが1上がりました(真理!?)
ピンポンパンポーン(下がり調)
「使い方ぁあああああああああああああああ!?」
俺は再度、両手を天に掲げた。
スキルがあっても使えなければ意味は無い。