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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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1話 婚約御披露目パーティーの準備.7



 全裸の小花さんに、替えの服を用意しつつ、時間を確認すると、もう二時半。

 遅過ぎる昼飯タイムだけど、お詫びも兼ねて、小花さんに米を振る舞おう。

 そう思い、メイドのラナスに配膳をお願いして、ウキウキわくわく待ってます。


「流様。挙動が怪しいので、少し落ち着いて下さいませ。お客様の前ですよ」


「そんな事言われても……自領製米なんだから、楽しみで仕方ないだろ?」


「……私は気にしてません。と言うより、奥方様の背後に居る方は……どなた様でしょうか」


 顔面水晶メイドの、ドールとドーツです。

 なーんて答えても、疑問の解消にはならんだろうけど、詳しく教える訳にはいかない。


「ただのメイドだ、気にしなくても良いぞ」


「了。メイドのドールと申します」


「了。メイドのドーツと申します」


「小花様。当家の護衛の様な"モノ"と、御認識頂ければ宜しいかと」


「護衛ですか。生きている者が発する"気"を、全く感じないとは……っ、失礼しました。詮索すべきでは無いですね」


 この人今、"気"って言ったのか?

 魔力云々も良く分からんのに、気なんて言う素敵チートまであんの?

 確かに、小花さんの顔を見ると、東の国の血が、混ざってるっぽい感じだけど、ツキヨ国って、気を使える者達の国なの?


「と言う事は、皿くれお化けも"気"を使えると」


「っ、今のお言葉……"気"をご存知なのですね」


「そんな構えなくても良いって。知らんとは言わんけど、見た事なんて無いぞ?」


「見た事の無いモノを、ご存知だと……」


 異世界では、間違い無く見た事は無いな。

 日本だと、それらの情報や本が山の様に有るから、眉唾物の知識だけなら持ってます。

 あとは二次元のアレだ。

 手から気を放ったり、◯◯拳何倍とか、光り輝く野菜の人の知識だな。


「……気で空を飛べたりする?」


「それだと我が国は、連邦国の一つでは無く、一強の国家として君臨出来ますね」


「無理って事か。変な事聞いてすまん」


 空を飛ぶと言ったら、あのぷにっと黒姫の奴は、どうやって飛んでるんだろう。

 必死に翼を、バタバタしてる訳も無く、スムーズに飛んでるよなぁ。


「あれっ? そういや、黒姫の姿が見えないけど、あいつ何してんの?」


「黒姫様は、シャルネと共に、港の建設に御座います。あの大きさですので、便利に使われているものかと」


「あぁ……重機扱いされてんのね」


「重機とは、何で御座いましょうか?」


「連邦国で見た、列車みたいなモノだよ」


 列車と聞いて、ピクッと小花さんが反応したけど、そこは敢えてスルーだな。

 下手に突っ込んで、墓穴を掘りたく無い。


 コンコンッ────『ちわーっす。昼ご飯をお届けに来たっすよーっ』


「ドゥシャさん……コレは、どう返答すべきなのか、迷うんですけど」


「頭が痛いとは、この事に御座いますね」


「御二方共、どうなされたのですか?」


 この声の持主を、小花さんが知る訳が無い。

 ラナスに持って来る様頼んだのに、何でウザ子が来てるんですか?


 コンコンッ────『あれっ? 魔神様ーっ。居ないっすかーっ。部屋間違えたかなぁ? 確かにここの筈っすけどぉ……』


 荷物の配達員みたいな事を、言い出したぞ。

 このままだと、不在届けを書き出して、そのまま帰りそうな雰囲気だ。


『ちょっとーっ! 何勝手に持って行ってるんですかーっ! 私のお仕事ですよぅ!』


『えーっ、良いじゃ無いっすか。ちびっ子が働く必要無いっすよ』


『私のお仕事なんですぅ!』


 ラナスの仕事を、ウザ子が横から強奪かよ。

 あいつ何しに来たの?

 と言うか、お客様来てんのに、扉の向こうで言い合いって、ドゥシャさん震えてるぞ。


『配膳車返してぇ!』


『ふはははっ! ちびっ子如きに、この惨影がやられるとでも、思ってるんっすかぁ!』


『んんんっ! ドゥシャさまあああ──っ!』


『ちょっと待つっす!? それは反則っすよ!』


 隣をチラッと見ると、ドゥシャさんはいつもの澄まし顔だけど、こめかみに血管が浮かんでいるのは、見間違いでは無い。


「……ラナスっ! 許可します!」


『!? 分かりましたぁ!!』


「ドゥシャさん? 何許可したの?」


「聞いていれば、分かるかと存じます」


「聞いていれば分かる……」


 扉の向こうで、一体何が起きているのか。


『ドゥシャ様の許可が出たのでぇ、もう容赦しませんからぁ!』


『えっ……何っすかソレ!? ぐっ! ちょっと待つっす! 反則! それ反則っす!?』


『逃がしませーんっ!』


 どったんばったんと、音が聞こえているが、何やら、ウザ子が劣勢な感じだ。

 ウザ子は暗部の一人なのに、ラナスってそんなに、強かったっけ?

 少ししたら、スンッと静けさが戻り、諍いの決着がついた様だな。


「……どっちが勝ったんだ」


「流様。ラナスは幼ないながらも、私が鍛えた病魔族の一人なのです」


「今の言葉で、大体分かった」


 ガチャっと扉が開き、配膳車を押して入って来たのは、勿論ラナスだ。

 病魔族って、影を圧倒出来るんだなぁ。

 一瞬だけ、扉の向こうが見えたけど、ウザ子が泡を吹いて、昏倒してたよ。


「お騒がせしてぇ、申し訳御座いませんっ。御食事をお持ちしましたぁ」


「ラナス。次にあの者を、館内で見かけたら、即座に昏倒させなさい」


「ふぇっ…分かりましたぁ」


「目標は五秒です。精進なさい」


「うぅ、頑張りますぅっ」


 この二人は、何のやりとりをしてるの?

 小花さんが、冷汗を浮かべながらドン引きしてるの、見えてるよね?


「失礼致しますぅ」


 小さいラナスがカチャカチャと、クローシュで覆われた皿を並べて、何故かそのまま、部屋から退出。


「……蓋取らないのかよ!?」


「流様の意図を、汲み取ったものかと」


「自分で開ける楽しみってか……どれが米だ?」


 一人あたりの皿は三枚。

 このどれかが米の筈だけど、今のラナスの行動からは、嫌な予感しかしない。


「これは……頂いても?」


「あっああ、すまん。本来なら、配膳した者が開けるんだが。ドール、ドーツ、お願いしても良いか?」


「いえっ、自分で開けますのでっ」


「良いって、こちらのミスだしっ」


「了。失礼致します」


「了。失礼致します」


 小花さんの蓋を、三つとも取りました。

 一品目、香辛料を使った、巨大な焼魚。

 二品目、柔らかオーク肉、葉野菜を添えて。

 三品目、香り豊かな、温かスープ。

 念の為、俺とドゥシャさんの皿も確認。

 全く同じお料理ですね。


「ふぅ、やっぱりな。そんな事だろうと思ってましたよ。だって厨房に、腹ペコキッズ達が居たからね……」


「流様、余り怒りませぬ様」


「えっと、とても美味しそうな、御食事ですね」


 何かを察したのか、小花さんに気を使われて、流さんは泣きそうなんです。

 泣かないけどね。

 取り敢えず、叫んでおこうか。



「ミル────────ンっ!! お部屋に来なさああああああ────いっ!!」



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