1話 婚約御披露目パーティーの準備.4
気分転換がてら、ぶらぶらしていた言い訳として、パッと閃いた内容がコレだ。
婚約御披露目パーティーに来るであろう、貴族の数は、何気に多い。
それならば、ちょいと道順を調整して、そのお貴族様には、見世物になって貰おう。
「そんな感じで、道順の確認中だな」
「何や変な事考えおるな。貴族を見世物なんて、不敬どころの話ちゃうで」
「ちゃんと手紙に書いておくさ。見世物になるのが嫌なら、来なくて良いからってな」
「えげつないなぁ。ファンガーデンに来えへんかったら、あん女王の不況を買うやろ。嫌でも来なあかんやん」
ルシィの不況を買う?
別に何とも無いんじゃね?
「理解してへん顔やな……」
「だってあのルシィだぞ? 不況なんて買っても、問題なんて無いだろ?」
「今のファンガーデンならそやろけど、他の領地や貴族共からしたら、死活問題やねんで?」
死活問題って、王政ってやっぱり凄いのな。
普通の貴族からしたら、ルシィに睨まれただけで、貴族生命終了とか、ワロスワロス。
「貴族で無くなるとか、どうでも良いわ」
「流にーちゃんからしたら、そうやろな。権力とかに、興味無さそうやもん」
「全く無いぞ。貴族の権限取り上げられたら、喜んでセーフアースに移住するからな」
そうなったら勿論、丸ごとファンガーデンを持って行く予定です。
半径十メートルの大きさの家と、浄化槽や養鶏場、ミユンの土を根刮ぎ持って行けば、移し替えは可能だろう。
その後に、ケモ耳達を湖にダイブさせて、最後に世界樹を何とかすれば、完了。
「……イケる!!」
「なーんか、怖い事考えとる顔しとるな。頼むから、変な被害出さんといてや」
「被害が出るとしたら、ジアストールだけだから、問題無しだろ?」
「何の話しとんねんて! えらい話こんでもーたわ。治療院戻るけど、ホンマ頼むで」
何を頼むんだと聞く前に、リティナが行ってしまった。本当に、何を頼むんだ?
「今の時間は……昼過ぎか。戻って米の実食するついでに、焼魚を食べるか」
屋敷に戻った俺は、いそいそと食料庫に向かい、少し濁った米を見て、涙が止まりません。
たわわに実った稲を刈り取り、乾燥させて、脱穀したあと、更に籾摺り、精米して、やっとの事で米になる。
魔法が存在する異世界であっても、この米作りは、手間がかかるんだ。
ミユンのお陰で、時間はかからないし、虫害や病気の心配が無いのは、正にチートです。
「農家さんっ、有難う御座いまずっ…(ズズッ)」
「お父さん見つけた! 何で泣いてる?」
実食する前に、食いしん坊の犬耳ミルンに、見つかってしまった。
匂いを辿って来たのかな?
涙や鼻水全開の姿を見られて、少しだけ恥ずかしいんだけど、これは仕方が無いんだよ。
「ミブンぼばべぶば?」
「お顔が汚いの!? ばっちい!!」
「(ズッ)…それだと、俺の存在が悪玉菌に思われちゃうから、勘弁してくれ」
「あくだまきん?」
腸内に潜む悪い菌は、流石に知らないか。
知ってたら、リアクションに困るところだけど、知らないなら良しとしよう。
「ミルンもお米食べるか?」
「何も匂いがしない……不思議なの」
「頑張って水田管理したからだな。あとは食べてみて、和土国米との違いを探すんだ」
「間違い探し? それなら食べる!」
良々。尻尾振り振り全開で、自動埃取り機になっちゃってるけど、埃一つ無い食糧庫だから良かったぜ。
「それじゃあ、厨房にお邪魔するか」
「料理長に教える?」
「そうだな。料理長に教えておいて、色々アレンジ出来る様に、しておこうか」
初めての米だろうし、屋敷で働く皆んなにも実食させて、感想とかも聞いてみよう。
そう思い、米二キロ分を袋に移して、厨房へと向かい、料理長の前に無言で置いた。
「……えっ?」
状況が理解出来ていないのか、米を前に固まったままのコイツが、いつも美味しい料理を作ってくれている、料理長のニンニ君だ。
西洋コック服を身に纏い、頭から狸耳が見え隠れしている、ふっくらした狸人だ。
名前の最後に"ク"を付けたら、俺の好きな調味料になるので採用した。
「あの、領主様? ミルン御嬢様?」
「傾注なのっ!」
「今から米を炊きます!」
「えっ? えっと、えっ?」
察しが悪いな。
料理長なんだから、この米を前にしたら、喜び勇んで発狂しないと駄目だろう。
「米とは…何ですか?」
「傾注なのっ!」
「米を知らんとは……米とはっ!」
「ふっくら美味しい大地の恵み!」
背後から突然、ミユンが登場して、俺とミルンの言葉に合わせて来た。
「ふっ、増えた!?」
料理長のニンニ君が、何故か一歩後ろに下がり、あわあわと落ち着きが無い。
そんなに怯えんで良いのにな。
「「傾注なのっ!」」
「米を炊くから! 作り方を覚えるんだ!」
「ピィ! 食べさせて!」
「まっ、また増えた!?」
今度はハーピィのエトワルが現れ、羽根を広げて食べさせろアピール全開だ。
でもなエトワル、それじゃあ減点だ。
ミルンとミユンが羽根に包まれて、気持ち良さそうに寝そうだからな。
「……お遊びはここ迄にして、昼御飯作るか」
「ニンニ! 手伝うの!」
「ふっくら美味しい大地の恵み!」
「ピィィィッ! (ご飯っっっ!)」
「今の遊びだったんですか!?」
狸人なのに、悪戯が苦手なニンニ君だな。




