1話 婚約御披露目パーティーの準備.3
婚約御披露目パーティーの準備だが、これが中々大変なんです。
数ヶ月前から、各地に手紙を届けないといけないし、パーティーを催す為の、予算も決めないといけない。
会場は館だけど、パーティーを開ける程の、大広間を作って無かったから、急ピッチで別館を建設中なんです。
「……外観だけ見ても、デカいなぁ」
館の半分程の大きさで、厨房やトイレを除いてだが、巨大なダンスホールになる予定。
因みに俺は、また一人です。
ピュアはそのまま、ドゥシャさんに連れて行かれ、何処へやらと姿を消した。
『先ずは身嗜みを整えましょう』
『えっ、ちょっと待って! 精霊神様────』
ピュアの最後の悲鳴に、若干何かが反応したが、死にはしないから大丈夫だろう。
「手紙書くのは、夕方で良いだろ……」
正直、今の俺に書く気力が残ってません。
だからこその、気分転換だ。
こうして一人で、あっちをぶらぶら、こっちをぶらぶらしていると、今のファンガーデンの状況が見えて来る。
「人口増えたのは良いけど、やっぱりか」
繁華街の裏手に行くと、小さいながらも出来つつある、俺が最も嫌う場所。
「スラム化ねぇ……役所に行かず、こっそり住もうってか? 駄目なんだよなぁ」
ファンガーデンではそれこそ、腐る程働き口が有るのにも関わらず、これが存在する。
その理由は単純で、働けないから。
この異世界の人達は皆、働き者ばかりで、そうしなければ、死ぬ事を理解している。
ならば何故、働けないのか。
「……そりゃ、どこにでも有るわな」
仮設のテントっぽいのは、五つか。
取り敢えず、話を聞かないと駄目だな。
そう思い、汚れたテントの中を覗くと、第一村人発見しました。
「何じゃ…誰かそこに居るんかぃ」
「誰だあんたっ、出て行けよ!」
ボロを着た爺さんと、同じくボロを着た若者だけど、初っ端から威嚇すんなよな。
「っと、急に覗いて悪いな。こんな所にテントが有ったんで、気になって見に来たんだ」
「ならもう見ただろ! あっち行け!」
「やめんかベズっ。誰かは知らんが、すまんのぅ。口が悪いが、根は良いやっ、ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!」
「ったく、ほらっ、ゆっくり飲んで」
「ゴホッ……っ、あぁ、すまんのぅ」
この爺さん、盲目だな。しかも、以前助けたあのケモ耳と違って、生まれ付きか?
それに、病を患ってる様子だし、それをこの若者が看病していると。
「おいっ! もう良いだろ! 出て行けよ!」
「ああ……済まんな」
このテントは問題無しと。
別の問題が発生したけど、それは後だ。
テントを閉じて、隣へ向かう。
「ここには、誰も居ない? 留守か……」
それじゃあ次のテントは、誰か寝てるな。
そっと入って顔を確認。
どうやらここは、人間のスラムっぽい。
寝ているのは、ボロを着た女性で、この見た目からだと、元奴隷だろうか。
松間杖の様な木の棒があるから、この女性も、何某らの障害を負っているのかね。
起こさない様に、そっと退出。
「婚約御披露目パーティーをするにしても、こう言った場所を何とかしておかないと、全力で楽しめないからなぁ……」
他のテントも、似た様な状況だ。
働きたくても働け無い者達が、こうして集まり、悪意を持つ者がそこに付け込んで、ゆっくりと拡大して行く。
「幸いと言うか、ドゥシャさんが目を光らせてるから、本気でヤバい奴等は居ないか」
しかし、それが何時迄も続くとは限らない。
ドゥシャさんだって人間だからな。
「リティナやアトゥナにも治せないなら、取れる手段は限られるか……」
これは、予算に計上しておかないとだな。
ぶらぶら再開ですよっと。
繁華街を通り抜け、湖の近くに設置したベンチに座り、露店で売っていたお茶で一服。
「……良い天気だなぁ」
チラチラと、街行く人がこっちを見ながら、何かヒソヒソと小声で通り過ぎるんだけど、悪口言ったら追いかけてやる。
勿論全力でだ。
今の俺の耐久力と速力ならば、ダンプに跳ねられる程の威力は、出せると思うぞ。
「流ダンプカーっ!!」
あっ、前を通り過ぎ様とした人が、『いやああああああ────』全力で逃げて行ったなぁ。
安心して下さい、ここの領主ですから。
「何しとんねん……流にーちゃん」
「そのエセ関西弁はっ、リティナ聖女様であらせられまするで……よっ!」
「最後まで言わんかい!? 何や"よっ"て!?」
流石リティナ、アドリブ突っ込み有難う。
「リティナ一人なんて、珍しいな。麗しの猫耳メイド様はどうしたんだ?」
「キモいからやめぇっ! ニアなら王都に買出しや。こっちじゃ手に入らん薬草やからな」
「へぇーっ。んでリティナはサボりと」
「んな訳あるかい! さっきまで葉っぱ集めてたんや! 見て分かるやろ!」
いつも通り、濡れ姿のリティナですね。
ピチピチに張り付いた服が、しっかりと無い乳を露わにして、何とも悲しげだ。
「何で泣きそうやねん」
「頑張れよリティナ……アトゥナと姉妹だから、お前にも未来は有るさ……」
「っ!? どつき回したろか!!」
「防ステ高いから、平気だぞ?」
「ぐぐぐぅぅぅっ、厄介な体になりおってからにっ。アトゥナに拳骨頼んだろか!!」
「それは勘弁っ。このお茶やるからっ、許して下さい聖女様!」
飲みかけで悪いが、温かいお茶ですよ。
何で嫌な顔をするのかな?
「次聖女様言うたら、本気でアトゥナに頼むからな。貰うで……ぷはぁっ」
「俺と間接キッス乙」
「孤児院のガキら世話してたから、そんな事気にせえへんわ」
「面白く無いなぁ」
「ウチで遊ぶなや! で、流にーちゃんはここで何しとるんや。あんた領主やろ」
ぶらぶらしているだけです。なんて、正直に言ったら、馬鹿にされそうで嫌だな。
何か理由は……アレか。
「婚約御披露目パーティーに来る貴族居るだろ? その馬車が通る道をな、少し考えてたんだ」




