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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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1話 婚約御披露目パーティーの準備.3



 婚約御披露目パーティーの準備だが、これが中々大変なんです。

 数ヶ月前から、各地に手紙を届けないといけないし、パーティーを催す為の、予算も決めないといけない。

 会場は館だけど、パーティーを開ける程の、大広間を作って無かったから、急ピッチで別館を建設中なんです。


「……外観だけ見ても、デカいなぁ」


 館の半分程の大きさで、厨房やトイレを除いてだが、巨大なダンスホールになる予定。

 因みに俺は、また一人です。

 ピュアはそのまま、ドゥシャさんに連れて行かれ、何処へやらと姿を消した。


『先ずは身嗜みを整えましょう』


『えっ、ちょっと待って! 精霊神様────』


 ピュアの最後の悲鳴に、若干何かが反応したが、死にはしないから大丈夫だろう。


「手紙書くのは、夕方で良いだろ……」


 正直、今の俺に書く気力が残ってません。

 だからこその、気分転換だ。

 こうして一人で、あっちをぶらぶら、こっちをぶらぶらしていると、今のファンガーデンの状況が見えて来る。


「人口増えたのは良いけど、やっぱりか」


 繁華街の裏手に行くと、小さいながらも出来つつある、俺が最も嫌う場所。

 

「スラム化ねぇ……役所に行かず、こっそり住もうってか? 駄目なんだよなぁ」


 ファンガーデンではそれこそ、腐る程働き口が有るのにも関わらず、これが存在する。

 その理由は単純で、働けないから。

 この異世界の人達は皆、働き者ばかりで、そうしなければ、死ぬ事を理解している。

 ならば何故、働けないのか。


「……そりゃ、どこにでも有るわな」


 仮設のテントっぽいのは、五つか。

 取り敢えず、話を聞かないと駄目だな。

 そう思い、汚れたテントの中を覗くと、第一村人発見しました。

 

「何じゃ…誰かそこに居るんかぃ」


「誰だあんたっ、出て行けよ!」


 ボロを着た爺さんと、同じくボロを着た若者だけど、初っ端から威嚇すんなよな。


「っと、急に覗いて悪いな。こんな所にテントが有ったんで、気になって見に来たんだ」


「ならもう見ただろ! あっち行け!」


「やめんかベズっ。誰かは知らんが、すまんのぅ。口が悪いが、根は良いやっ、ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!」


「ったく、ほらっ、ゆっくり飲んで」


「ゴホッ……っ、あぁ、すまんのぅ」


 この爺さん、盲目だな。しかも、以前助けたあのケモ耳と違って、生まれ付きか?

 それに、病を患ってる様子だし、それをこの若者が看病していると。


「おいっ! もう良いだろ! 出て行けよ!」


「ああ……済まんな」


 このテントは問題無しと。

 別の問題が発生したけど、それは後だ。

 テントを閉じて、隣へ向かう。


「ここには、誰も居ない? 留守か……」


 それじゃあ次のテントは、誰か寝てるな。

 そっと入って顔を確認。

 どうやらここは、人間のスラムっぽい。

 寝ているのは、ボロを着た女性で、この見た目からだと、元奴隷だろうか。

 松間杖の様な木の棒があるから、この女性も、何某らの障害を負っているのかね。

 起こさない様に、そっと退出。


「婚約御披露目パーティーをするにしても、こう言った場所を何とかしておかないと、全力で楽しめないからなぁ……」


 他のテントも、似た様な状況だ。

 働きたくても働け無い者達が、こうして集まり、悪意を持つ者がそこに付け込んで、ゆっくりと拡大して行く。


「幸いと言うか、ドゥシャさんが目を光らせてるから、本気でヤバい奴等は居ないか」


 しかし、それが何時迄も続くとは限らない。

 ドゥシャさんだって人間だからな。

 

「リティナやアトゥナにも治せないなら、取れる手段は限られるか……」


 これは、予算に計上しておかないとだな。

 ぶらぶら再開ですよっと。

 繁華街を通り抜け、湖の近くに設置したベンチに座り、露店で売っていたお茶で一服。


「……良い天気だなぁ」


 チラチラと、街行く人がこっちを見ながら、何かヒソヒソと小声で通り過ぎるんだけど、悪口言ったら追いかけてやる。

 勿論全力でだ。

 今の俺の耐久力と速力ならば、ダンプに跳ねられる程の威力は、出せると思うぞ。


「流ダンプカーっ!!」


 あっ、前を通り過ぎ様とした人が、『いやああああああ────』全力で逃げて行ったなぁ。

 安心して下さい、ここの領主ですから。


「何しとんねん……流にーちゃん」


「そのエセ関西弁はっ、リティナ聖女様であらせられまするで……よっ!」


「最後まで言わんかい!? 何や"よっ"て!?」


 流石リティナ、アドリブ突っ込み有難う。


「リティナ一人なんて、珍しいな。麗しの猫耳メイド様はどうしたんだ?」


「キモいからやめぇっ! ニアなら王都に買出しや。こっちじゃ手に入らん薬草やからな」


「へぇーっ。んでリティナはサボりと」


「んな訳あるかい! さっきまで葉っぱ集めてたんや! 見て分かるやろ!」


 いつも通り、濡れ姿のリティナですね。

 ピチピチに張り付いた服が、しっかりと無い乳を露わにして、何とも悲しげだ。


「何で泣きそうやねん」


「頑張れよリティナ……アトゥナと姉妹だから、お前にも未来は有るさ……」


「っ!? どつき回したろか!!」


「防ステ高いから、平気だぞ?」


「ぐぐぐぅぅぅっ、厄介な体になりおってからにっ。アトゥナに拳骨頼んだろか!!」


「それは勘弁っ。このお茶やるからっ、許して下さい聖女様!」


 飲みかけで悪いが、温かいお茶ですよ。

 何で嫌な顔をするのかな?


「次聖女様言うたら、本気でアトゥナに頼むからな。貰うで……ぷはぁっ」


「俺と間接キッス乙」


「孤児院のガキら世話してたから、そんな事気にせえへんわ」


「面白く無いなぁ」


「ウチで遊ぶなや! で、流にーちゃんはここで何しとるんや。あんた領主やろ」


 ぶらぶらしているだけです。なんて、正直に言ったら、馬鹿にされそうで嫌だな。

 何か理由は……アレか。


「婚約御披露目パーティーに来る貴族居るだろ? その馬車が通る道をな、少し考えてたんだ」



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