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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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8話 連邦国家を見て回ろう.2



 ノーザン連邦国────連邦国家の盾となる国であり、その防衛力は、幾度もジアストールの進行を跳ね除けて来た事で、分かるだろう。


 しかし今、そんな事よりも重要な事が有る。

 影さんの報告には無かった、とあるモノ。

 国境を通過して、都市へと向かっている道中に、それが姿を現した。


 大量の鉱石を載せて、頑丈そうな木材と、鉄で組まれた線路の上を、ガタゴトと走る物体。


「ドゥシャさん……アレって……」


「古代の技術ですね。まさか稼働していたとは、驚きに御座います。影の報告には無かったので、帰ったら御仕置きですね……」


「古代の技術?」


 確かに先頭の車両は、空力抵抗ガン無視の、装甲車みたいな造りになってるし、地球の列車とは違うみたいだけど……マジかぁ。


「あの皿と、同時期ぐらいのモノ?」


「それは分かりませんが、連邦国の鉱山で、ああいった古代のモノが、稀に見つかるとの事に御座います」


「……それを再現したのか」


 あの列車の動力は何だ?

 黒い煙も出てないし、石炭や電気で動いている様には、見えないんだけど。


「技術大国じゃん。今までどうして、ジアストールは負けなかったんだ」


「……思いますに、アレが稼働したのは、最近の話では無いかと存じます。でなければ、影が見落とすなど有り得ません」


 最近か……それなら納得だな。

 列車は確かに驚いたけど、良く観察してみると線路はガタガタだし、速度も出ていない。


「ミルンなら、余裕で追い越せるな」


「しかし、アレが発展しますと、我が国にとっての脅威になります」


「マッスルホース何百台分の兵站が、一度に輸送出来ちゃうからね」


 この異世界の鉱物を使って、あの列車に魔改造を施せば、時速三百キロ以上出るんじゃね?

 エンジンが問題だな。

 化石燃料が有るかどうかも分からんし、使えるとしたら魔石ぐらいなものだけど、そんなエネルギーを出せる魔石なんて、存在すんのか?


「……ファンガーデンでも、研究するか」


「それが宜しいかと存じます」


「どうせやるなら、飛行機作りたいな」


「飛行機? それはどの様な物でしょうか」


「空を使って、人や物を運ぶ乗り物だ」


「空をっ……」


 実際にやろうと思うと、俺の知識じゃ無理ゲーだし、先ずは気球から作ってみるか。火とか風の精霊が居たら、交渉して、お手伝いをして貰うんだがなぁ。


 そんな事を考えつつも、マッスルホースは元気に走っています。

 自動車並みに早いんだから、列車の先頭に、エンペラーマッスルホースを数頭付ければ、大量輸送出来るんじゃね?

 むぅ……それは何か、浪漫が無いな。


「ぱっからぱっから……イヨワリまで、あとどれくらいで着くんだ?」


「調べた情報によりますと、三つの町を越えた先に、イヨワリへの検問所が有るそうです」


「一つ目の町が、あそこか」


 ノーザンに入国して、初めての町だな。

 国境近くにあるのなら、結構賑わってそうだし、一泊していくか。


「そんじゃ、今日はあの町を観光しよう」


「そう致しましょう。名所が御座いましたら、見てみとう御座います」


「んじゃ、着いたら聞いてみるか」


 ドゥシャさんが、妙にそわそわしてる。

 失礼だとは思うけど、何か遠足前の、小学生みたいな感じだな。

 

「……何で御座いましょう?」


「こう言うのも、悪く無いなと思ってね」


「左様で御座いますね」


 異世界に来て、そこそこ経つけど、こんなに穏やかな旅をするのって、初めてだよね。

 何事も無く、観光出来れば良いんだけどな。




 ノーザン連邦国、国境近くの町、アバルト。

 国境近くに位置する為、兵士の数も多く、その為か治安が良いらしい。

 家屋の壁は、煉瓦造り。

 異世界で煉瓦なんて、初めて見た。

 石畳の道には、鮮やかな紋様が彫られ、中々小洒落た、良い町だと思う。


「……地面にアレが、落ちて無かったらなぁ」


「王都では、見慣れた光景に御座います」


「王都はまだ、改善してないのか?」


「上下水道の工事には、数年を要しますので」


 そう……こんなに良い町並みなのに、地面の隅を見たら、落ちてるんだ。

 何がって?

 ミユンの大好きなモノがだよ。

 列車走らせる技術が有るなら、先ずは上下水道完備させて、衛生環境整えろよな。


「綺麗な風景の中に、必ず入って来る汚物」


「ぷふっ……失礼致しました」


「笑いたくもなるよなぁ……路地を覗くと、普通に尻出して気張ってるし」


「ファンガーデンでは、有り得ないですね」


 ファンガーデンでそんな事したら、普通に捕まって、反省室送りですからね。


「……先ずは換金しに行くか」


「冒険者ギルドが御座いますので、そこならば色々と、売れるかと存じます」


「流石ギルド。東には無かったけど、南にはしっかりあるんだな」


「近々、和土国にも、出来る様で御座います」


「下手な行商より、動き早いんじゃね?」


 またいつか、和土国に行きたいもんだ。

 御座敷遊びしてないし。


「だん…流様。あちらがギルドの様です」


「煉瓦造りのギルドか。風情があるな」


 煉瓦造りの二階建て。

 大き過ぎず、小さ過ぎずの大きさで、出入口には、立派な魔物の牙が飾られている。異世界情緒溢れる、素晴らしい建造物だ。



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