8話 連邦国家を見て回ろう.2
ノーザン連邦国────連邦国家の盾となる国であり、その防衛力は、幾度もジアストールの進行を跳ね除けて来た事で、分かるだろう。
しかし今、そんな事よりも重要な事が有る。
影さんの報告には無かった、とあるモノ。
国境を通過して、都市へと向かっている道中に、それが姿を現した。
大量の鉱石を載せて、頑丈そうな木材と、鉄で組まれた線路の上を、ガタゴトと走る物体。
「ドゥシャさん……アレって……」
「古代の技術ですね。まさか稼働していたとは、驚きに御座います。影の報告には無かったので、帰ったら御仕置きですね……」
「古代の技術?」
確かに先頭の車両は、空力抵抗ガン無視の、装甲車みたいな造りになってるし、地球の列車とは違うみたいだけど……マジかぁ。
「あの皿と、同時期ぐらいのモノ?」
「それは分かりませんが、連邦国の鉱山で、ああいった古代のモノが、稀に見つかるとの事に御座います」
「……それを再現したのか」
あの列車の動力は何だ?
黒い煙も出てないし、石炭や電気で動いている様には、見えないんだけど。
「技術大国じゃん。今までどうして、ジアストールは負けなかったんだ」
「……思いますに、アレが稼働したのは、最近の話では無いかと存じます。でなければ、影が見落とすなど有り得ません」
最近か……それなら納得だな。
列車は確かに驚いたけど、良く観察してみると線路はガタガタだし、速度も出ていない。
「ミルンなら、余裕で追い越せるな」
「しかし、アレが発展しますと、我が国にとっての脅威になります」
「マッスルホース何百台分の兵站が、一度に輸送出来ちゃうからね」
この異世界の鉱物を使って、あの列車に魔改造を施せば、時速三百キロ以上出るんじゃね?
エンジンが問題だな。
化石燃料が有るかどうかも分からんし、使えるとしたら魔石ぐらいなものだけど、そんなエネルギーを出せる魔石なんて、存在すんのか?
「……ファンガーデンでも、研究するか」
「それが宜しいかと存じます」
「どうせやるなら、飛行機作りたいな」
「飛行機? それはどの様な物でしょうか」
「空を使って、人や物を運ぶ乗り物だ」
「空をっ……」
実際にやろうと思うと、俺の知識じゃ無理ゲーだし、先ずは気球から作ってみるか。火とか風の精霊が居たら、交渉して、お手伝いをして貰うんだがなぁ。
そんな事を考えつつも、マッスルホースは元気に走っています。
自動車並みに早いんだから、列車の先頭に、エンペラーマッスルホースを数頭付ければ、大量輸送出来るんじゃね?
むぅ……それは何か、浪漫が無いな。
「ぱっからぱっから……イヨワリまで、あとどれくらいで着くんだ?」
「調べた情報によりますと、三つの町を越えた先に、イヨワリへの検問所が有るそうです」
「一つ目の町が、あそこか」
ノーザンに入国して、初めての町だな。
国境近くにあるのなら、結構賑わってそうだし、一泊していくか。
「そんじゃ、今日はあの町を観光しよう」
「そう致しましょう。名所が御座いましたら、見てみとう御座います」
「んじゃ、着いたら聞いてみるか」
ドゥシャさんが、妙にそわそわしてる。
失礼だとは思うけど、何か遠足前の、小学生みたいな感じだな。
「……何で御座いましょう?」
「こう言うのも、悪く無いなと思ってね」
「左様で御座いますね」
異世界に来て、そこそこ経つけど、こんなに穏やかな旅をするのって、初めてだよね。
何事も無く、観光出来れば良いんだけどな。
ノーザン連邦国、国境近くの町、アバルト。
国境近くに位置する為、兵士の数も多く、その為か治安が良いらしい。
家屋の壁は、煉瓦造り。
異世界で煉瓦なんて、初めて見た。
石畳の道には、鮮やかな紋様が彫られ、中々小洒落た、良い町だと思う。
「……地面にアレが、落ちて無かったらなぁ」
「王都では、見慣れた光景に御座います」
「王都はまだ、改善してないのか?」
「上下水道の工事には、数年を要しますので」
そう……こんなに良い町並みなのに、地面の隅を見たら、落ちてるんだ。
何がって?
ミユンの大好きなモノがだよ。
列車走らせる技術が有るなら、先ずは上下水道完備させて、衛生環境整えろよな。
「綺麗な風景の中に、必ず入って来る汚物」
「ぷふっ……失礼致しました」
「笑いたくもなるよなぁ……路地を覗くと、普通に尻出して気張ってるし」
「ファンガーデンでは、有り得ないですね」
ファンガーデンでそんな事したら、普通に捕まって、反省室送りですからね。
「……先ずは換金しに行くか」
「冒険者ギルドが御座いますので、そこならば色々と、売れるかと存じます」
「流石ギルド。東には無かったけど、南にはしっかりあるんだな」
「近々、和土国にも、出来る様で御座います」
「下手な行商より、動き早いんじゃね?」
またいつか、和土国に行きたいもんだ。
御座敷遊びしてないし。
「だん…流様。あちらがギルドの様です」
「煉瓦造りのギルドか。風情があるな」
煉瓦造りの二階建て。
大き過ぎず、小さ過ぎずの大きさで、出入口には、立派な魔物の牙が飾られている。異世界情緒溢れる、素晴らしい建造物だ。




