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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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8話 連邦国家をぐるっとな.1



 やあ皆んな、小々波流だよ。

 俺は今、国境を抜けて、連邦国家側のとある場所で、のんびりと寛いでいるんだ。

 どんな場所かって?

 薄暗くて、空気が湿った、ナメクジが居たら大喜びな場所さ。

 三方を石壁に囲まれていて、部屋の隅には小さな穴が空いており、そこから汚物臭が漂って来る、何とも不思議な場所だよね。

 寝床は何と、木製のベッド。

 毛布が無いから、仕方無く空間収納から出して、軽いツマミを食べながら、こうして数日の間、自堕落な生活さ。


「牢から始まる異世界生活。慣れたモンですよ」


『あっ、また食ってやがるっ! 毎度毎度、何処から出しやがるんだ!!』


「へいへい、渡せば良いんだろ」


 牢屋の見張りに見つかっても、大丈夫。

 ツマミを幾ら取り上げようとも、空間収納内に、山程備蓄がありますからね。

 なんならお酒も有るし。

 茶葉もあるから、お茶も飲み放題だ。


「なぁ牢番のおっさん。問題になる前に、早く俺を、此処から出した方が良いぞぉ、むぐむぐ」


『凶悪犯が何を言ってっ、だから食うな!?』


「おっさんもそれ、食べて見ろよ。名物のオークの燻製肉だから、感想くれ」


『……旨っ、肉の味が凝縮されてっ……酒が呑みたくなるだろうが!?』


 酒はやらんぞ?

 水と違って、それほど持って来て無いから。

 

 何故俺がこんな場所に居るのか、簡単に説明しようと言うか、皆んなは分かるよね?


 ドゥシャさんと、ジアストール側の国境を抜けるのは、正直簡単だった。

 国境の兵に俺の紋章を見せれば、怯えて逃げ出し、隊長格が現れて直ぐ、何故か腰を抜かして、そのまま通行許可を貰ったからだ。


「ドゥシャさんが呆れ顔だったなぁ」


 しかし問題は、連邦国家側の国境だった。

 おいでませ、"真心の水晶"さん。

 俺がその石に、『ほいタッチ』と触った瞬間、赤黒く輝いて、粉々に割れました。

 見事に粉々だよ。

 そして直ぐに、連邦国の兵達が集まって来て、俺はこうして捕まりました。

 懐かしいな、この感じと思ったね。


「ドゥシャさんは、頭を押さえて、俺が連れて行かれるのを眺めているだけ」


「ボソッ(すっかり忘れておりました)」


 そんな言葉が聞こえて来たけど、大丈夫だよドゥシャさん。俺もすっかり、忘れていたからね。ノーカンノーカン。


「そんなこんなで、一人寂しく牢生活三日目だ」


『何一人でぶつくさ……頭が可笑しくなったか』


「お気になさらず!!」


『頼むから、大人しくしてろよ』


 大人しくしてますよ?

 結局ここでも、あのイケメンに渡された国章のバッチは、役に立たなかった。

 偽造を疑われてるのかね?

 あのイケメンに、一つ貸しだな。


「んぐっ、んぐっ、ぷはぁ──っ、旨い!」


『だからそれ何処から出したの!? 絶対それ酒だろ! 俺にも呑ませろよ!』


「牢の鍵を開けたら、怒られるぞ?」


『ぐぅっ、早く交代来てくれええええ──っ!』


 交代来たら、そいつにも見せびらかすぞ。

 ちゃんと、商業ギルド所属の石材屋だって言うカードも見せたし、連邦国家の国章も見せたのに、こんなステキ環境に放置しやがって。


「ドゥシャさんが同行してなかったら、空間収納使って脱獄してるぞ」


『聞こえてるし止めろよ。脱獄なんてしようものなら……俺のクビが飛ぶだろ』


「そんなん知るか! 立派なニートに成って、家族を困らせるが良い!」


『離婚されっちまうわ!?』


 そんな感じで、ギャーギャーと牢番と言い合ってたら、偉そうな奴が歩いて来た。

 服が偉そうって意味だぞ。


『たっ、隊長殿!』


 牢番が敬礼したな。

 この国境の一番偉い奴か?


『小々波流、ノーザンへの入国を許可する。釈放だ……この牢を開けろ』


『へっ?』

「んっ? 案外早かったな」


 こんなに早く釈放って、どうやって偉い奴に連絡したんだ? 伝書鳩か?


『隊長殿っ、コイツは凶悪犯ですよ!?』


『構わん。中央に問い合わせたら、この者と、連れの者を通す様にと、指示があったのだ』


『中央からっ……お前、一体何者なんだ?』


「ただのしがない石材屋だが?」


 今回は、脱獄せずに済んだ様だ。

 早く出て、ドゥシャさんの御機嫌を取らないと、待ち惚け三日間は不味いからな。




 凝った体をほぐしながら、連邦側の国境を抜けると、馬車の隣にドゥシャさんが居て、俺を目が合った瞬間……脚を開いて中腰になり、頭を下げると言う、任侠の人の御辞儀だよねそれ?


「御勤め、御苦労様です。だん…流様」


「勘弁してくれ……俺は任侠の人じゃ無いぞ」


「任侠とは?」


「知らずにやってたのかよ……」


「ミルン御嬢様が、時折りされておりました、不思議な御辞儀に御座います」


「誰だよミルンに教えた奴っ……」


 館の人達は知らないだろうし……ヤナギか!

 あの見るからにヤバそうなおっさんなら、部下達にさせてそうだな。

 ファンガーデンで焼肉屋やってるし、ミルンの事を孫の様に可愛がってるから、色々教えてるんだろうけど、悪影響じゃん。


「……帰ったら、あの禿げに釘を刺しとくか」


「禿げ……どなたでしょう」


「ヤナギのおっさんだ」


「あの方ですか……禿げっ」


 ドゥシャさんが笑ってる?

 禿げが笑いのツボなのか?

 あのおっさん意外だと、禿げてる奴って結構少ないんだよな。


「ボソッ(禿げに猫耳)」


「ぶふっ……だんっ、流様っ、御勘弁をっ……」


「ボソッ(禿げに兎耳)」


「っっっ、ぷふっっっ」


 ドゥシャさんの弱点見つけたり!

 いつもおすまし顔だから、笑いを堪えるドゥシャさんなんて、貴重過ぎて面白い!


「ボソッ(禿げに犬耳)」


「だん…流様。冗談にしては酷過ぎます」


「……急に素にならないで?」


「犬人族の命である耳を、禿げのおっさんに付けるなど、ミルン御嬢様に対する、侮辱に御座いますので」


 どうやら、犬耳は怒りのツボらしい。

 目が本気だ。

 冗談はここまでにして、向かうとするか。


「だん…流様、先に何処に向かわれますか?」


「そうだなぁ……ノーザンを迂回して、別の国を見て回ろうぜ。イケメンは最後にしたいし」


「畏まりました。それでしたら、イヨワリ国に向かいましょう」


「それで良いよ……胃弱り?」


 何その、ダイレクトに内臓を表している国。

 そんな国名……少し気になるじゃん。


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